小説『男女戦争』
作者:UMA.m()

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第3章 男女決別





男しかいない東京。
そこに、今回の主役になる男がいた。



「友田 新」。

3年前までは妻も子供もいたが、今家に居るのは
「友田 涼」。高校3年の息子だけだ。

多子化法で無理矢理人工授精させられた子供をお腹に宿し、
妻、「友田 安江」は3年前、女性だと言う事で女性国に送還された。
もう一人、中1の娘、「友田 ハルカ」も送還された。

笑顔の絶えない、幸せな家庭が、今回の騒動で一気に崩れた。

新は、仕事に追われる毎日を送っており、
夜の11時に家に帰っても、料理や風呂は用意されておらず、
真っ暗な家に帰り、「ただいま」と、誰も居ない家に挨拶するむなしい生活を送っていた。

「友田 涼」はというと、
新のやる気の無さに愛想を尽かし、先月、家を飛び出し友人の家に出て行ったのだ。

いつもコンビニ弁当で、
顔も疲れきっていて、今にも死にそうな顔だった。

だが、新にはただ一つ、嫌な事を吹っ飛ばす趣味を持っていた。



疲れきった新は、ソファにかばんを投げ捨て、そのままパソコンの前の椅子に腰かけた。

そのまま起動ボタンを押すと、インターネットを開き、
某検索サイトで、「夫の日苦労」と検索した。
すると、ある掲示板が出てきて、
新はそこをクリックした。



このサイトは、新のように、妻、娘と生き別れになった男達の溜まり場で、
いつも色んな男達が出入りしていた。
新もこのサイトの住民だった。
新は、ここに一人になった苦労など、妻や娘の事を書き込んだ。
すると、みんなが励ましの言葉や面白い事を言ってくれた。
新はそれがたまらなく嬉しかった。

これが唯一の趣味だった。

新は、「Q」というユーザーネームでサイトを利用していた。
今日も新は、今日の苦労を書き込んだ。

すると、すぐに返信が来て、
それは「WWW」という男からだった。
WWWは、このサイトで知り合った新の一番仲の良い男で、
いつも新の苦労を聞いてくれて、励ましてくれた。



Q
今日は社長に怒られてしまいました。

WWW
ほんと、日本が男だけになった途端、色んな人が調子に乗り出しましたよね。

Q
そうそう。 そっちはどうですか?最近悪い事ありました?

WWW
いや、別に。
それより、息子さんの方は?

Q
あぁ・・・。
まだ帰ってきていません。

WWW
大変ですね。そっちも。



たわいのない話だったが、
新にとってはこれが最高に楽しかった。

-7-
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