一人の少女、佳奈子が部屋の中で空中を仰いでいた。
壁にはONE PIECEのゾロがたくさん貼られている。
「ゾロ……」
ボソッと佳奈子はつぶやいた。
そう、佳奈子はゾロに恋をしていたのだった。
よく小学五年生の時の友達に言われた。だいぶおませな女の子がいるころの年だ。
放課後で帰りの会が終わった時だった。
「キャー、このジャニーズのヤマちゃんめっちゃかっこかわいいよね〜!ねぇ、カナもそう思わない?」
「……悪いけど、そういうのには興味ない。」
カナはいつも通りのお決まり文句を言う。それに対して友達全員でカナに攻撃した。
「カナはすごく整ったきれいな顔してて運動もバッチリできるのに、どうして現実の男の子には目も向けないのよ。」
「あ。あたしね、カナのことが好きな人の人数知ってるよ!なんとね……19人!もう二けたいっちゃってるんだよ!信じらんないよね。あ、知ってる?あの隼人君もカナのこと、好きらしいよ!6年生にもカナのことがすきなひと、いるらしいし。」
「えー!マジ?うらやましいよ〜。その顔がほしい!」
「え〜、あの隼人君を取られた〜。」「私も〜……」
教室中の男子が女子軍のうるささにこちらを向いた。
「そんな、カナがだよ!まさかの二次元の男にマジ恋しちゃってんの!もったいない!」
女子がブーブーとカナを攻め立てた。
そんな佳奈子はたまりにたまりかねて爆発する。机をバンッとたたいた。空気が静まり返る。
「うるっさい!!少しは黙ってよ!」
佳奈子は肩を怒らせて教室を出て行った。
「……カナはギャップがすごいよね。あんなにかわいい顔してて笑顔がかわいくてドジで間抜けで……女の私たちが惚れちゃうぐらいなのに、中身は強気で負けず嫌い。う〜ん。あれがモテる秘訣なのかな。」
女子たちはいつまでもカナのことについてトークしていた。