「ゲホッ、ゴホゴホゴホゴホッ!ゼィ……ぐるじいよ……ジュルッ、オエエ……」
2日前からカリンはこの調子だ。一向に良くなる傾向はなく、むしろひどくなっている。
さすがにゾロも不安になってきたらしく、ソワソワし始めた。
しかしながら、ずっと同じ部屋にいてゾロに移らないのはどういうことだろう。
「……バカ?」
「アアア!?もういっぺん言ってみろ!」
ゾロがカリンに歩み寄った。
そうかもしれない。本物のバカだから風邪をひかないのかもしれない。
「……ゲホッ、ゲホッ、ゴホッ……ヒー……」
「クソッ」
ゾロは頭をかきむしった。緑色の短髪はグチャグチャになる。
ここのところゾロは寝られていないようだ。目の下に大きなクマがある。
それに、ゾロが大好きな修行も中止にしている。
「医者、呼ぶか。もうオレの手には負えねェ……」
ゾロが出て行こうとした時だった。カリンはガバッと布団を脱ぎ捨てた。
―ギュッ
「うわァ!お、おい、何してやがる……!」
ゾロが後ろにつんのめりそうになる。しかし、今抱きつかれていると知ると、顔を真っ赤にしてしどろもどろに言った。
「……おいて行かないで……一人に、しないで……」
カリンが後ろからゾロに抱きついたのだった。
ゾロの背中には今熱を持った熱いカリンの体が吸い寄せられている。耳元にカリンの息がかかる。
ゾロはしばらく突っ立っていた。どうしたらよいのかわからなかったから。
しかし、そのあと力を使い果たしてしまったのか、ゾロの背中からダラリと力が抜けてバタリと倒れてしまったのだ。
「〜!こんのバカ娘が!ちょっとビビッちまったじゃねェか。」
いまだ真っ赤な顔をしながら、チッと舌打ちすると、カリンを背中に乗せた。いわゆるおんぶだ。
カリンの顔はもういつもの活気はなかった。ただ真っ赤な顔をして荒く息をしているだけだ。
(やっぱり医者に連れて行こう。)