オオカミも突然の人物に驚いているようだった。
『ヒィン!キャンキャン!』
さっきまでのオオカミはどこへやら。みっともなくしっぽを巻きながらオオカミたちは奥へ逃げて行った。
「……」
剣士は佳奈子を見つめていた。
その切れ長の目をみながら佳奈子は正直ビックリした。
緑髪、腰にさされた白い刀と黒い刀2本合計3本の刀。しかし3連ピアス、手ぬぐいは見当たらない。
ゾロのようでゾロじゃない。もっとも、ゾロなんてこの世界にいないはず。
2つのビックリに精神が襲われているとき、お礼を言っていないことを思い出す。
「あ……。えっとありがとう、ございます……」
「立てるか。」
そういわれて佳奈子は足に力をいれようとした。しかし立ち上がることはできなかった。
「はぁ、ダメ。」
「そうか。」
ゾロはそういうと、佳奈子の肩の後ろと足の後ろに腕をまわす。いわゆるお姫様だっこというやつだ。
そして、ゾロはその辺の柱を持ち上げたかのように肩に回した。
佳奈子は軽々と持ち上げられたことに対してとてもおどろいた。
背中に感じるゴツゴツとした指。体温。正直信じられなかった。
しかし、そんなことを考えている気力も体力もなく、そのまま深い眠りに落ちた。