小説『織斑一夏の無限の可能性』
作者:赤鬼()

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人には生きていく上で人生の分岐点に立たされる事がある。

そう、俺こと織斑一夏にもあったのだ。

2月の中旬、まだ寒さの厳しい季節に行われた高校入試の試験会場で。

俺は自宅から近い・学力真ん中・そして私立なのに学費が安い私立藍越学園の試験会場に向かっていた筈だった。

幼い頃に両親はいなくなり、千冬姉と姉妹二人で暮らしていかなくてはならなかった。

姉は当時まだ学生で幼い弟の俺を必死に守り育ててくれた。

周りの人達にも凄くお世話になった。

小学一年から四年まで家が隣でよく晩御飯をご馳走してくれた篠ノ之家。

剣道の道場でもある篠ノ之神社でよく篠ノ之家次女の箒と一緒に剣道の鍛錬に励んだ。

そして箒がとある事情で引っ越してから、入れ替わるように知り合いになった凰鈴音(ファンリンイン)、そして中学で仲良くなった五反田弾。この二人は実家が食堂でよく食べに行っていた。

ただ、中学二年になって間もなく鈴は転校してしまったが。

唯一の肉親である千冬姉も仕事が忙しいらしく滅多に家には帰ってこない。

ただ稼ぎはいみたいで生活には困っていないが、いつまでも姉の負担にはなりたくなかった。

だから中学卒業後は直ぐにでも就職するつもりだったのだが、それを知った千冬姉に説教(主に腕力による......)に逆らう事も出来ず、受験生となったのだ。

それで早く独り立ちしたかった俺は卒業後の就職率も高い藍越学園の入学試験を受ける事を決めたのだ。

藍越学園の入学試験会場は昨年カンニングが発覚したという事もあり、市の多目的ホールを使う事になっている。

この一年、猛勉強したおかげもあって、模試での判定はA判定であり、苦も無く合格できるくらいの学力はある。だから、試験を受けて、さっさと合格を決めてしまいたかったのだが、会場となった多目的ホールはある建築デザイナーが設計したらしく、流行かどうか分からないが常識を超えた作りになっているのだ。

受付窓口で試験会場は階段を上がった所にあるらしいのだが、その階段が見当たらない......

散々迷って、漸く見つけた階段を上がり、直ぐ見付けた扉を開く。


「あー、君、受験生だよね。はい、向こうで着替えて。時間押してるから急いでね」

相当、忙しかったのだろう、女性試験管は俺の顔も見ずに、指示だけして出て行った。

着替える?カンニング対策だろうか?

まぁ、いいや、と指示のあった通りに着替えて、奥に進むと―――奇妙な物体が鎮座していた。

これはテレビで見た事がある。

―――ISだ。

ここは藍越学園の入学試験会場じゃないのか?

女性しか動かせないIS。この世の常識である。何で男の俺がここに?会場を間違えたか?

でも、ISには興味があった。男なんだから、こういうロボ系には興味を惹かれる。ガ○ダム然り。

目の前にISがある。だから、つい興味本位で触れてしまった。

―――っ?!

キンッと金属音が頭の中に響いたと思ったら、意識に直接流れ込んでくるおびただしい情報の数々。

ISに関しての情報全てが俺の意識に流れ込んでくるISの情報、操縦、理論全てが理解できてしまった。

そして、最後に記憶が甦る。

もう一つの世界で俺は過ごしていた。

容姿の違う一人の青年が自分である、いや、青年であった事を理解し、その少年の人生が意識の底から引き出されてきたのだ。

剣術に通じていた祖父には剣術を幼少期から叩き込まれ、学生時代に入部した剣道部では負け無し。

しかし、不慮の事故で死んでしまった俺自身の記憶。

何だ、この記憶は?!やけに現実感がある。

俺は織斑一夏。織斑千冬の弟。なのに今の記憶は織斑一夏のものででない...でも、俺の記憶である事が理解できる...俺が青年だった頃の遠い昔の記憶......そう前世の記憶が......。


「え?!どういう事?」


「男がISを起動させた...?」


後ろから入室してきたIS学園関連の女性試験官が数人入ってくる。でも、そんなのはどうでもよかった。突然の記憶にISの情報、余りに膨大な情報量が頭の中に流れ込んできたのだろう、頭の中でも整理が着かない...急に意識が遠くなる。俺はそのまま倒れ込んでしまった。


「へ?......き、君っ!大丈夫?!」


そんな声を遠くに聞きながらも......俺は意識を手放した......。

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