小説『異世界旅行券が当たったのでISの世界行ってきます』
作者:読む短刀()

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第37話 学年別トーナメント5



ラウラSide
負ける…このままでは負ける。
私は戦うためだけに生み出された、[遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)]。
ここで負ければまた戻ってしまう。ISが誕生して直ぐのあの頃に。
私はISが誕生するまで部隊のトップだった。だが、ISが誕生してそれは変わった。私はISとの適合率向上の為[越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)]、疑似ハイパーセンサーとも呼べるナノマシンを移植した。
しかし、これにより私の左目は金色に変化しヴォーダン・オージェを制御出来なくなった。
その結果、私は部隊のトップから転落した。
しかし、そんな私を救ってくれたのが、教官である織斑千冬だった。
彼女の教えを忠実に実行しただけで、私は再び部隊のトップになった。
憧れた、あの人の全てに憧れた。
そして私はある時聞いた。
「どうしてそこまで強いのですか?どうすれば私も、貴女のように強くなれますか?」
その時のあの人の顔は何時もの顔ではなく、わずかに優しい笑みを浮かべた。
「私には弟がいる。」
「弟…ですか。」
「あいつを見ていると、わかるときがある。強さとは何なのか、その先に何があるのかをな。」
「……よくわかりません。」
「今はそれでいいさ。」
違う。私が憧れる貴女はそんな優しい笑みを浮かべない。
だからあの人にそんな顔をさせる織斑一夏が憎い。奴を私の力で倒すと誓ったのだ。
ならば負けられない。こんなところで負けるわけにはいかない。だから。
力が欲しい!
『汝…願うか?自らの変革を望むか…?強き力を欲するか…?』
誰かは知らないが、力をくれるならよこせ!!代償なら何でもくれてやる!!
だから私に…比類無き最強の力をよこせ!




修司Side
「修司!!大丈夫!?」
「ああ、大丈夫だ。」
「何がおきてるの?」
「さあな。」
目の前ではラウラのISシュヴァルツェア・レーゲンがまったく別の物に変わろうとしている。
『非常事態発令!トーナメントの全試合は中止!状況をレベルDと認定、鎮圧のため教師部隊を送り込む!来賓、生徒は直ぐに避難すること!』
アナウンスと同時にアリーナのシールドバリアーの手前に防壁が展開されて行く。
『尾上君!!デュノア君!!聞こえますか!?』
「声が大きくて耳が痛いです。」
『あ、ご免なさい!!って違います!!今アナウンスされたと思いますけど、今すぐアリーナから避難してください!!直ぐに先生達が来ますから!!』
「すいませんが、それはお断りします。」
『尾上君!?何言ってるんですか!?』
「俺が何とかします。」
『そんな危ないことを生徒にさせるわけないじゃないですか!!織斑先生も尾上君に言って下さい!!』
『尾上。』
「何ですか?」
『ボーデヴィッヒを頼む。』
『織斑先生!?』
「わかりました。」
俺は通信を切断した。
「シャルル、離れてろ。」
「え?修司?」
「俺とボーデヴィッヒの決着はまだ着いてない。」
俺はムラマサを抜いた。
「決着って、まだ戦うの!?」
「ああ、あいつをあの中から引き摺りだす。」
見ると変化は終わり、黒い全身装甲のISに似た‘何か’になっていた。
「止めても聞きそうにないね。」
「その通り。良く俺のこと理解してるな。」
「でもひと言言わせて。」
「何だ?」
「気を付けて。」
「当然。」
俺はラウラに近付く。
「ボーデヴィッヒ。」
「……。」
反応は無い、当然か。でも言わせてもらうぜ。
「お前のそれは力じゃない。」
「……。」
「ただの形だけ真似た偽物だ。」
「……。」
「だから…お前の間違った考えで生まれたこいつを壊す。そしてお前を引き摺り出して殴る。セシリアと鈴を痛めつけたことの礼をまだしてないからな。」
俺はムラマサを構える。
「だから…こい。」
瞬間、ラウラが動いた。いや、意識がないからプログラムが反応したんだな。
刀を降り下ろしてくる。その刀は雪片。だが。
「しゃらくせえ!!」

パキイィィン!!ドッ。

俺は雪片を真ん中で切り裂き、切り裂いた先の方が地面に刺さる。
俺はムラマサを上段に構え降り下ろす。

ズバッ。

切り口からラウラが出てくる。



『どうしてお前は強い?』
『は?何だよ急に?』
『答えろ。』
『…戦う理由が有るから。』
『戦う理由?』
『ああ、俺には守りたい家族が、友人が、仲間がいる。そいつらを守る為に俺は強さを求めるし、守る為に戦う。』
『奴にも…織斑一夏にも有るのか?戦う理由が。』
『あいつも俺と同じ理由だ。でもまだその為の力がないから強くなろうとしてる。…理由が有るから人は強くなれる。俺はそう思ってる。』
『そうか。だから理由がない私は勝てないのだな。…これからもずっと。』
『ないなら見つけりゃいい。』
『何?』
『理由がないなら見つけりゃいいんだよ。俺もお前もまだ若いんだし、理由なんていくらでも見つかる。』
『見つかるのだろうか?私に。』
『俺も探してやるよ。お前が戦う理由を見つけて、一人前になるまで面倒見てやるよ。ラウラ・ボーデヴィッヒ。』



俺は切り口から出てきたラウラを受け止める。
「まったく、戦う理由なんて直ぐに見つかるってのに、不安そうな顔して眠りやがって。ま、これからしっかり面倒見てやるよ。」
俺は眠っているラウラに軽くデコピンする。
「ま、取り敢えずはこれでセシリアと鈴のことはチャラにしてやるよ。」
「修司、お疲れ。」
「いや全く疲れてない。」
「言うと思った。」
「なら言うなよ。」
俺とシャルルは軽く笑いあう。
「さて、ピットに戻るか。」
「そうだね。」

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