金曜の放課後……
俺は寮の自室で出かける用意をしていた。アタッシュケースに少しの着替えを入れていつも使っている銃のベレッタM92Fカスタムを動作確認してホルスターに仕舞い扉を開けて外に出る。そこでちょうど生徒会業務が終った(サボった)楯無がこちらに気付いた。
「あら?何処かに旅行でも行くの?」
「いや、今日は上司に呼ばれててな。アメリカに月曜まで行かないとならない。」
「私も行っていいかしら?」
「お前には生徒会があるだろうが、しかも今日もサボっただろう?あんまり迷惑かけるなよ?それに専用機が完成したから受け取るのと墓参り行くだけだぞ?来たって楽しくもなんともないだろう?」
「そんなこと無いわよ、まあでも今回は業務があるから諦めるわ。じゃあ行ってらっしゃい♪おみやげお願いね〜♪」
「ああ、行ってくる。」
楯無と別れて寮を出て空港にタクシーで向かう。空の旅はぐっすりと眠り無事にアメリカに到着。大佐に会い専用機を受け取る。
「これが君の専用機だ。アメリカの技術を全て詰め込んでいる。この専用機には多くの機能が搭載されていて一番分かりやすいのはステルス迷彩なんて物がある。」
「光学迷彩、か。ISに実用化したのはこれが最初じゃないのか?」
「ああ、元々ステルス迷彩は余り戦闘には向いてない。ハイパーセンサーでは不通のステルス迷彩では必ず感知されていた。だが我が国の技術者が開発した最新鋭のこのステルス迷彩は一味違う!」
「一味違う?オクトカムみたいな物か?」
「いや、確かにオクトカムも搭載しているがあれは動くと効果が無い。だがこのステルス迷彩はオクトカムのハイパーセンサーをも掻い潜る利点を同じく不可視の状態で使用できるのだ!!」
「おぉ、随分高性能だな?だがデメリットもあるんじゃないのか?」
「鋭いな、ああ確かにデメリットが一つある。このステルス迷彩を起動出来るのは15分だけだ。ISの動力を半永久的動力に変えれば無限に使えるのだが生憎規制が掛かってるからな。さすがにSEを使うのは不味いからな、別領域の燃料を拡張領域に入れていてそこから供給している。」
「なるほど、使い時を考えろ、か。なら武装はどうなってるんだ?」
「君にはアメリカの男の代表として活躍してもらわなくてはならない。なので武装は怪物の様な物を用意した。」
「………そう言った男が上でとかは興味ないんだが……まあタダで貰えるんだ、あと怪物とはどういう意味だ?」
「今まで使用者の体を考えない様な危険性が理由で凍結された対IS用の武装だ、だが君なら扱える筈だ。これがリストだ、目を通してくれ。あと開発部からの伝言だ。」
「伝言?なんだって?」
「我々の作品を使ってくれて感謝する。こんなにも企画が全て通るとは感激した。君には感謝する。ISや武装の整備や修理が必要ならいつでも言ってくれ。例え戦場だろうと必ず向かう。だそうだ。」
「わかった、覚えておく。ああ、あと聞いてなかったがこの機体のワンオフアビリティーはなんなんだ?」
「それはなってからのお楽しみだ。」
「………」
「まあそう言うことだ。このあと何処かに行くのだろう?私は仕事があるから失礼する、また会おう。」
大佐を見送り俺も外に出てタクシーに乗りある時計塔に向かう。
アラスカには死者の名前を刻む時計塔がある。
記憶から彼らの顔が薄れて行っても彼らの行いに敬意を払い続ける為だ。
実際、クズどもに全てを奪われれば残るのは記憶だけだ。
俺の仲間もそこに居る。俺は毎年この時期になると時計塔に訪れる。こうして死んでいった仲間を、仲間がなんのために戦ったのかを忘れないために。
「皆………久しぶりだな………」
刻まれた名前の前に酒やタバコを置いて共に過ごした日々を思いだし自分の目標を再び確認する。
そして姿勢を正し敬礼をする。
「…………また来る。じゃあな、戦友逹……」
そう言い残して俺は時計塔を後にした。