小説『親父と一緒にいきなりトリップ【H×H】』
作者:プータ()

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 前書き
 今回ちょっと腐臭がします。苦手な方はお気をつけて。
 それとちょっと短いですすみません。

 第十五話 重力×暴走

 『奈落の穴』を降り始めてから五時間ほどがたった。もう上のほうの入り口はかなり小さくなっている。穴の中は暗いが、光苔の一種が生えているせいか慣れてくれば見えないほどでもない。日光と比べればかなり暗いのはしょうがないが。
 
 「ジュン君ごめんね……(ああ、僕今ジュン君と一つになってる……)」
 「別にきにすんな、予想はしてたしな」
 
 現在俺はアルクをおぶりながら岸壁を降りている。下のほうまで来ると多少の傾斜があるのでさほど苦労もない。どうやら地底に直接太陽光が当たらない程度には斜めに穴は延びているようだ。
 アルクは途中まではかなりがんばっていたがやはり今までの特訓の差がある、体力はまだまだだ。たった一ヶ月たらずの体力トレーニングで五時間近くロッククライミングができる体力が作れたアルクは十分すごいが。
 それにこの中は重力が地上よりも大きいせいか、体力を奪われる。およそ一年近くトレーニングを続けているおかげで俺も体力が持っている。
 そろそろそこが見えてきた。奈落のそこにはうっそうと茂る木々が生え、所々にここの中特有の生物や植物が生えている。水場もあるようだ。東京ドームの10倍以上の敷地はあるだろう。
 先ほど見たパンフレットによればこの中は1000年近く前から独立した生態系の進化を始めており、そのためこの中のものは貴重であるそうだ。ただこの中のものは総じて重量の重いものばかり。いかにに丈夫なものが作れる鉱物であろうと一般人には全く無用の長物となるものが多い。それにここの生物はこの空間から出るとすぐに弱って死んでしまうため連れて行こうとしても無駄となる。毛皮等もここを出ると価値を失うほどにぼろぼろになるそうだ。
 物理法則やら植物の光合成なんやらはもう気にしないことにする。地底人がいても俺は驚かない。
 何とか底についた俺達は休憩した後そのままあたりを散策する。
 試しに木をナイフで傷つけてみたがものすごく硬い。周をして枝を切って持ってみたが、この場の重力と合わさって重量は100キロ近いのではないだろうか?

 「ジュン君!あれ!」
 「熊?」

 体毛の黒い熊がいる。この限定された空間でどうし生きていけるのかはわからないがやはり生物はいるようだ。だがこいつは……

 「僕にはオーラをまとっているように見えるんだけど?」
 「……まじか」

 どうやら念を使える熊のようだ。どうして野生の熊がと思うがよく見てみれば熊の眼は片方が刃物傷で潰れている。恐らくだがどっかの馬鹿能力者がこいつに念で攻撃し、そのせいで精孔が開いたのではないだろうか?まあ想像に過ぎないが。

 「どうしよう!」
 「怯えるな、狙われるから!」
 「ひ〜!僕とジュン君のハネムーンが!」
 「ハネムーン?!」
 「な、なんでもない」
 「良くない!けど今は……」

 俺が言葉を続けようとした瞬間くまが巨体には似合わない高速でもってこちらに突っ込んでくる。それを横のアルクを抱えて跳ねてよける。そしてすぐさま熊のほうに向き直る。
 背後の木々はなぎ倒されていた。あの強度の高い木々がだ。やはりオーラをまとっている分強力なのだろう。
 抱えているアルクをおろす。強力なタックルを見たアルクは慌てている。

 「ジュン君!こうなったら死ぬ前にキスを!」
 「何トチ狂ってんだ?!」
 「グァー!!」

 何やってるんだとばかりに熊は腕を振りかぶって襲ってくる。このままよけたらアルクが危ないので俺は堅を使って相手の爪を受ける。

 「ぐっ!」
 「!!ジュン君!この!」

 俺の腕を熊の爪が浅く切り裂き鮮血が舞う。正直傷はほとんど表面の皮膚をえぐっただけだ。だがそれを見たアルクは練をして相手のくまに突っ込んでいく。
 
 「まて!」
 「このーー!」

 アルクのオーラをまとった一撃は熊の胸部にぶち当たる。そのこぶしの威力によって熊はそのまま吹っ飛び、後ろの木々をなぎ倒して飛んでいった。

 「な!」
 「あれ?僕勝った?」
 
 吹っ飛ばされた熊が動く様子はない。不審に思い恐る恐ると近づいていくと胸部がベコリとへこみ絶命している熊が横たわっていた。

 「マジか」
 
 俺は暫く動く事ができなかった。アルクのオーラをまとった一撃は俺の一撃よりも多大な攻撃力を持っていた。それと同時にアルクの水見式をしていなかったことも思い出した。
 俺達は近場の水場に行き水質検査キットを使いその水が飲んでも大丈夫なものかを調べる。結果は飲み水としては最高の部類の水だった。こういうのを地底湖というのを思い出した。
 俺は水で傷口を洗い落とし、治療をした。

 「さっきはサンキューな」
 「ジュン君がデレた?!どういたしまして!」
 「……まあいいや。それよりこれ」

 キャラがおかしいのはおいておいて、適当な入れ物に地底湖の水をいれそこに葉っぱを一枚浮かべる。そしてそれをアルクに渡す。水見式だ。
 水見式の事を説明してやると、練をしたアルクが手を近づける。すると水がどんどんと入れ物からあふれてくる。

 「やっぱり強化系か」
 
 どうりでと思う。先ほどの攻撃力は明らかに強化系だった。そうでなければあの威力は説明できないだろう。
 確かにあの熊は一般の念能力者と比べれば念の操作はお粗末なものだったが、この穴の中の生物はそのどれもが重力のせいかなんなのか強化されている。キメラアントほどではないが念能力者の一撃を受けてもあまり攻撃が効かない可能性もあったのだ。それを一撃で乗せるほどの攻撃ができるというのは心強い。
 発の使えない特質系なんて悲しい生き物と変わらないのだし。俺のことなんですけどね。
 俺は組み手の特訓でオーラを使わなくて良かったとつくづく思った。やってたら俺はミンチだったんじゃないだろうか?……はは、笑えない。
 俺達はこの中特有の植物である鋼ツタを探す。この鋼ツタというのはこの地底の中での植物の一つでものすごく丈夫なツタだ。それを使って縄や網を作り、この中からの鉱物を運び出す事ができる。普通のロープやリュックなんかじゃ恐らくすぐに切れたり底が破れたりしてしまうだろう。
 鋼ツタはかなり簡単に見つかり、目的の鉱物も見つかった。適当な鉱物をナイフに周をしてきりつけるが、普通の鉱物ならバターのようにいけるがここの鉱物は鋸の様に刃を進める事しかできない。市販のナイフだからというのもあるかもしれないがとんでもない硬度だ。
 この鉱物で俺のナイフでも作ろうと思う。
 そうして俺達は約三百キロほどの鉱物を持ってこの地底から帰ったのだった。
 翌日は筋肉痛で動けなかったが。

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