小説『親父と一緒にいきなりトリップ【H×H】』
作者:プータ()

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 第三話 恋人×決意


 「なあ親父」
 「ん?」
 「あー、なんていうかさ」
 「うん」
 「おめでとう?」
 「ありがとう」

 本当にいい笑顔で言ってくれるな。いきなり親父とグリアさんが付き合い始めたと聞いてこっちはなんともいえない気持ちなのに。
 あれからノグリさんは帰った。仕事があるので仕方がないが、逃げた気がしなくもない。逃げて行った後には食材やら洋服やらと一緒に何故だがアタッシュケースがあった。あれはなんだろう?
 
 「ジュン、その中身が気になるの?」
 「え、うん。何でこんなのに入ってるかなと思って」
 「うーん、そうね、それが私の仕事相手だからね。見ようとしちゃだめよ。念がかかってるし。念が使えない人は抗えないと思うから」
 「そんなに危険なものなの?」
 「どうかしら、今回のはそんなにでもないと思うけど……」
 
 念が関係してるという事は気をつけたほうがいいだろう。念には念を使えるものしか相手をする事はできない。多分俺が見たら何かしらの影響を受けてしまうのだろうか?

 「とりあえず私が見てからなら見てもいいわ、とにかく家に入りましょう?」
 「ういー」

 とりあえず荷物を持って家に行こう。でも念が相手の仕事といったらほぼ除念とかのことだよな?それならこんな隠れ住む生活の理由もわかるし、除念師なのだろうか?だが俺が除念師を知っていたらおかしいし、黙っていよう。
 
 「このアタッシュケースは二回の角部屋に持っていって。ちょっと驚くかもしれないけど」
 「おー、そりゃ面白そうだ行ってこいよ」
 「?、わかった」

 何故か笑いながら俺を送り出すグリアさん。親父までにやけてる……ムカつくから後で親父のエロ話でもグリアさんにしてやろう。
 そういえばこの家にいて不思議に思った事がある。水道が続いてる事やテレビの電波など、いったい何処から引いているのかなど色々な不思議がある。この角部屋もグリアさんにいつもはそこは入らないでねといわれている場所だ。
 部屋の前までついたので扉を開ける、木が軋む音がして扉が開く。特に何もない部屋だ箪笥やテーブルはあるがそれ以外には全く持って何もない。塵すらないのだ。
 
 「とりあえずテーブルの上にでもおいておくか」
 
 部屋に入ろうとして足が止まる。ゆっくりと空間が揺れているのだ。それはだんだんと色が濃くなっていき人の形を形成していく。細い老人だ。それが俺の方へとゆっくりと歩いてくる。ぞわりと鳥肌が立つ。幽霊と遭遇してしまったのだろうか?
 足が勝手に後ろに下がり二回の廊下にでる。すると老人がまた薄くなり消えていった。
 
 「なんだよこれ……ここ幽霊屋敷だったのか?」

 だとしたら何てことだろう。俺は幽霊とか大嫌いだ、言い換えると超苦手だ。今にもちびってしまいそうだし足が震える。
 
 「ぶはははっは、じゅ、純、びびりすぎ……」
 「ご、ごめんなさいねジュン」
 
 横を振り向けば親父が爆笑し、グリアさんが涙目になりながら必死で笑いをこらえていた。

 「あ、あれなんだよ、幽霊出るなんて聞いてないぞ!それと笑うなよ!あーぐぞ、なびだ(なみだ)でてきた……」

 体が小さくなっているせいか心のほうまで幼くなっているのだろうか?心なしか精神的ダメージに弱いようだ。涙が出るほど驚くとは自分でも思わなかった。 

 「くくく、悪い悪い」
 「ごめんなさい、あれは私の念なの」
 「念?」
 「ええ」
 「ヒッデー、マジひでえ。見ろよ俺、涙まで出てきたんだぞ!」
 「ぶほ、泣きながら切れてる、面白いなおまえ」
 「うっせーよ!親父こそグリアさんと付き合えたからって調子乗ってんじゃねーこら!」
 「ユウキ、からかったら可愛そうよ」
 「グリアさんも同罪だから!」
 「あ、そうよねごめんなさいジュン……」
 「いや違うよグリア、僕が純をからかうと楽しいよって行ったのが悪いんであってグリアは悪くないよ」
 「ユウキ……」
 「グリア……」
 「く!何だこのアウェーな感じは!?……そういやグリアさんの念ってどういうこと?」
 
 このいちゃつきから逃げたいためにさっさと話を元に戻す事にしよう。
 
 「ああ、グリアは除念師なんだよ、さっきのは具現化された念さ」
 「除念師かあ、あれだけなの?能力?」
 「ふふ、気づかないわよね。実はこの家自体が私の念なの」
 「本当に?」
 「ええ、使えない人にはわからないでしょうね」
 「やっぱ驚くよな、僕も念が使えるようになってからかなりびっくりしたし」 

 それはすごいな。これだけ大きいものを具現化するってことはかなりの念の総量だろうし。でも具現化するだけなら簡単かもしれない。幼い頃から慣れしたんだものなら具現化しやすいだろうし。でも幼い頃から転々としてたらそれはおかしいか?今は聞けないな、そんなに詳しく知ってたらおかしいし。
 ただ除念か……、将来的に除念師のことが幻影旅団に知られたらやばいよな。まあ九年先の事今考えてもしょうがないかも知れないけれど。

 「じゃあ二つ能力持ってるの?家とおじいさんの念獣?」
 「いいえ、二つとも同じ能力よ、詳しくはいえないけど私の能力は゛愛しい我が家゛(ホーリーランド)って能力なんだけどね」
 「へえ、念ってマジで不思議能力だなー、ん?てことはこの家って水道代や電気代なんかは?」
 「無料よ」
 「うらやましいなそれ!」
 「だよな、僕もそれ聴いたときずるいと思っちゃったもの」

 完全に自給自足とか!ある意味すごい能力だな。その分制約と制約もあるんだろうけど。
 
 「さてじゃあ仕事しちゃいましょうか、ジュンは見ちゃだめよ」
 「了解、念の被害になんかあいたくないしね」
 



 そして夜になった。
 今日は色々合ったな、ノグリさんが来たり、グリアさんの職業なんかもわかったし。というか疲れたな修行のせいかすごく眠い。というかあのくそ親父は気づいてないと思ってるのか、夜中にグリアさんとお酒飲んだりしてしゃべってるのを俺は知ってるんだぞ?多分修行をさせて俺を寝かせてるのかもしれない。……でも正直それはいい。親父は俺を引き取ってから女の人と付き合ったそぶりを俺に見せなかった。もしかしたらそういうことがなかったのかもしれないが、贔屓目に見ても顔もいいし性格だって悪くないと思う(お茶目は別として)。会社をよく変えてたのはいけなかったかもしれないが、それは偶然も多い(上司の不正や会社がつぶれたりなどが多かった)。色々合ったとしても、俺のせいで女の人と付き合ったりをしなかったかもしれないと思うと本当に申し訳ない気持ちになる。だから俺は別にグリアさんとの中を応援しないなんて事はありえない。それを考えるとこの世界にきてよかったのかなと思う。親父には幸せになってほしいから。


 sideユウキ


 さっさとジュンを寝かせてリビングでグリアとお酒を飲んでいる。ここ最近の日課のようなものだ。なんだかんだとお互いの愚痴や悩み、冗談を言い合ったり一緒にテレビを見たりしている。最初はどうしても寝れなかったから、失礼を承知でお酒をもらって勢いで寝てしまおうと思った。正直不安が多かった。こんな異世界にくるとか思っても見ない。だがここで慌てたら純を不安にさせるだろう。そう言うこと考えてしまうのは俺がアイツの親だからなんだろうか。そういう色々悩んでいたのがグリアにばれてしまったのだ。相談に乗るわと、いってくれた彼女の行為に甘えさせてもらった。もちろん嘘をつく事はとてもためらわれたが異世界人だということなんかは伏せさせてもらった。そんな彼女の言葉は私の重荷を軽くしてくれた。
 そう言うことがあってから彼女には容姿でも惹かれ、性格にも惹かれ、言葉に惚れてしまった。

 「ねえ、どうしてボーとしてるの?」
 「いや、念ってのはすごいと思ってね。改めてこの家のことなんかも考えるとさ……」
 
 君の事考えてたとは言わない。そんな気障な事を態々言う性格でもないはずだし。ただ彼女の前だとどうしても心が動かされてしまう。純と同じで見た目と一緒に精神まで若くなってしまったようだ。
 
 「僕もこういうことができるのかい?」
 「系統によるわね、ただ私は系統別の訓練なんかはできないのよ。私自身おじいちゃんから教えてもらってたし。発自体も私無意識で作っちゃったのよね」
 「(系統別か……純ならわかるだろうか?)無意識って……そんな事もあるのかい?」
 「ええ、特に特質系はそういった自分の性格や趣味趣向によって作ってしまう事があるようなのよね。私の場合はそれが家だったの」
 「どんな風に作ってしまったんだい?」
 「えっと、私が小さい頃から転々としてたって言うのは言ったじゃない?」
 「ああ」
 「それをおじいちゃんはかわいそうだと思ったんだろうけど、家を物体移動能力者を雇って態々引越し先まで持ってきてくれてたのよ」
 「そ、それはずいぶんとスケールがでかいね」
 「ふふ、そうね。それで私が16の時かな、その物体移動能力者が亡くなってしまったの、そのせいで家は結局運ぶ事ができなくなってしまったんだけど、私それがすごくショックでね。ずいぶんと泣いてしまったの、で気がついたら目の前に念で家を作っていたのよ」
 「すごいな」
 「あんまりほめられる事じゃないんだけどね、おじいちゃんはすごく慌ててたし」
 「それは当然だろう、いきなり家が出てきたら……」
 「いいえ、そういうことじゃないのよ。念能力って言うのは一度作ったら変える事も消せもしないものなの、一生付き合っていく能力よ。だからもう大慌てでね」
 「なるほどね、おじいさんも大変だっただろうね」
 「ええ、ただおじいちゃんは私が除念師になるのは反対だった見たいでね、除念能力があると知った時は悲しそうにしてたわ」
 「それは……なるほどおじいさんは孫にまで苦労させる気はなかったてことかな?」
 「そうでしょうね、それに私は一族から放逐されてるから除念師になる必要はなかったから……」
 
 放逐とはまた、どうしてだ?踏み込んでいいのだろうか?いや、話してくれったてことは信用されてるんだろう、ここは一歩踏み込むべきだ。
 
 「……放逐って言うのはどうしてだい?」
 「それは……」
 「聞きたいんだ、君の事だから」

 沈黙が降りる。拒絶はされてないようだけれど、なやんでいるのだろうか。
 
 「……うちの一族はある理由から出生率が低いの」
 「理由?」
 「ええ、これは系統にもかかわってくる事なんだけど、特質系というのは血筋か何らかの理由で操作系や具現化系から変化したものが多いんです、もちろん例外なんかもあるみたいですけど。うちの一族の場合は血筋なんですが、それを維持するために一族で近親婚を繰り返してるんです。そのせいかうちの一族は出生率が極端に低いんですよ」
 
 なるほど近親婚をしていると遺伝子異常をもった子供が生まれやすいという話を聞いたことはある。そして昔の日本なんかでも血筋を維持するために近親婚の風習なんかもあったらしいしありえない事じゃないな。

 「私が七歳の頃です。ある日病院に連れてかれて身体検査をしたんです。その日から私はいらないものになったんでしょうね……私は生れ付き子供が埋めない体らしいです。遺伝子的な異常なんで医学的にもどうしようもないらしいですし、治療系の念能力者でも遺伝子異常まで治せる人はいないらしいんです」
 
 こういうときはどう声をかけたら言いのだろうか。
 
 「それから、私は家を追い出されました。それをおじいちゃんに拾ってもらって育ててもらったんですよ……」
 
 また沈黙。女性にとって子供が埋めないというのはどういう気持ちなのだろう?それに加えてそれが理由で家族からも見放されるというのは他人からしたら推し量れない思いがたくさんあるのだと思う。ただ先に言っておく事がある。

 「グレア」

 名前を読んで手を握る。彼女も僕の顔を見る。

 「僕は君を愛している、それはこれからも変わらない」
 「……でも、私ユウキの赤ちゃん産めないよ?」
 「関係ないよ、僕が好きなのは変わらない」
 「ありがとう、少しは気が楽になったわ」
 
 にこりと笑った彼女がとても愛しい。グレアが眼を瞑る。僕も眼を瞑り、自分の唇と彼女の唇を合わせる。彼女はこういった経験かがないのか少ないのかわからないが少しおどおどしながら唇を押し付けてくる。それだけでも理性が崩壊しそうになるが、それではただのガキだ。そうならないよう理性を総動員しあくまでやわらかいキスを心がける。ゆっくりとした口付けの後、かなりの決心で唇を離す。
 
 「ふふ」
 「どうしたの?僕何か変なことしたかい?」
 「いえ、すごく幸せで笑っちゃったの」
 
 そのまま僕の胸に倒れこんでくるグレア。座っているソファーがギシリと軋む。
 くそ!可愛すぎるだろ!このままいっそと思うがそれはどうか?自分がこんな奥手だと思わなかったな。いまさら始めての小僧みたいな事ばかり考える。

 「いいよ」
 「え?」
 「ユウキならいい、私初めてだからうまくできるかわからないけど」
 「……ああ」

 彼女のその一言によって決心のついた僕は彼女の唇にもう一度食いついた。
 そして僕の決意は決まった。純にはすまないが俺はこの世界で生きていく。明日はそれを謝ろう。



 side純


 「もげろ」

 ただの寝言を言っただけだ。いわなきゃいけない気がしたし。






 あとがき
 物語を作るって難しいですね。
 僕が考えるに特質の血統を自分で自覚している一族なら近親交配ぐらいやってのけると思うんですよ。グレアさんはその被害者です。
 クルタ族の場合はどうだったのか気になりますね。緋の眼になれば皆が特質系なのか、それともクラピカのように復讐者として生きたからああなったのか。僕としては前者かなと思うんですが。
 あと能力を書いておきます。一応矛盾など無いように自分ではがんばってみます。


 グリア(特質系) 

 能力名゛愛しい我が家゛(ホーリーランド)
 家を具現化する能力
 キッチンや冷蔵庫、テレビから何まで自分のオーラでまかなう念の家。
 念で作られたものであれば重さを変えたり種類を変えたりすることができる(旧式のテレビを新型に変えたり等)がその場合その物の性能をある程度知る必要がある、壊れたりしても治す事が可能。
 家の中のことは感知しようと思えば手に取るようにわかる。わなを仕掛けたり壁から針を出したりなどの操作もでき家の中の模様替えも可能。
 またカレンダーもあり誓約と誓約の期限の日付のところにマークがでてる。
 二階にある除念部屋に除念するものを持っていくと具現化された老人(見た目はグリアのお爺ちゃん)が出てきて除念をしてくれる。

 家の中に念で作られたもの以外の物を置いて家を消しても、もう一度家を出せば同じ場所に変わらずに置いてある。

 制約

 一度発動したら一月以上は消す事ができない。

 誓約

 同じところに二年以上すんではいけない。(同じ町や同じ地方など)



 解説
 小さな頃から友達を作ってもすぐ引っ越してしまったり、あまり物を持ち歩けない生活をしていたのを不憫に思ったおじいちゃんがせめて家をと物体移動系能力者を探し当てて家を丸ごと引っ越し先に移動させてくれていたのだが、その能力者が死んでしまい家が移動できなくなってしまった。それにショックを受けたグリアがとっさに作ってしまった能力。
 感覚で発を作ってしまうって言うのはすごいですよね。しかもしっかり除念機能つき(この除念部屋はおじいちゃんの部屋だった場所)。このわけのわからなさは特質系にあってると思うんですよ。


 ノグリ(放出系)

 能力名゛君に届け゛(プレゼンター)

 対象人物に届け物をするように依頼されることでその対象の人物のところまで瞬間移動する事ができる能力。この時触っている物(生物も可能)も一緒に移動できる。
 出現場所はその人物にとって失礼にあたらない場所になる。

 制約
 この能力は自分で自由に使えず人に頼まれたときにしか使えない。

 解説
 すごく受身専門の能力です。自分の意思では使えないっていう制約はかなり効果が高い反面この仕事以外じゃほぼ死にスキルになりますよね。


 能力名゛帰血゛(ベースポイント)
 自分の血液が置いてあるところに一瞬で移動できる能力。この時触っている物(生物も可能)も一緒に移動できる。

 制約
 自分の所有している土地にしか移動できない。

 解説
 基地と帰血をかけた名前です。能力的には自分に縁のある物(血液)で能力を補強してあります。配達可能な国に最低一つは土地を買ってあるので結構な数の場所にいける能力です。
 逃走用としてもかなり使えるのではないかと。

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