小説『親父と一緒にいきなりトリップ【H×H】』
作者:プータ()

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 第九話 二次試験×トライアスロン

 「笑わせる事って何だ?」
 「ハンターに関係あるのか?」

 パリストンの試験内容によって会場中の試験参加者達がざわめいている。

 「僕を笑わせる事ができれば合格です、簡単でしょう?」

 そうパリストンは人差し指を一本上げてにこやかに言う。
 
 「ちょっとまてよ!」
 「そうだ!笑わせるのがハンターとどう関係するんだ!」

 会場の一部からは野次が飛んでいる。その気持ちもわからなくないと思う人は多かった。勇気もよくわからなくて混乱気味だ。シャルナークも面倒だなと呟いた。

 「意味ですか……そうですね。たとえば皆さんハンターになったとしてずっと一人でやっていく事は難しい。多少なりとも他の人と協力したりする事もあるでしょう。そう言ったときにユーモアある一言で笑わせる事ができれば多少なりとも仲良くなれる。それに何か情報を集めるとき、情報提供者があまり警戒しないように相手にジョークの一つも言うでしょう。武力だけでは解決しない事もある。そういうときのための試験だと思っていただければいいんですが?」

 パリストンの言ったことも一理ある。相手の警戒心の緩和は物事を潤滑に進めるのには重要な要素の一つだ。だがこれが果たしてパリストンが本当に思っていることなのかはわからない。内心では面白い事でも起こらないかなあなどと思っているだろう。
 マーメンはよくもまあこんな事をぺらぺらとしゃべれるなあとあきれているが、誰も気がつかない。

 「あー、なんか帰りたくなったなあ」
 「じゃあお好きに」

 シャルナークの軽口を勇気が流す。シャルナークの性格上やりたくない試験だろう。勇気自身も乗り気じゃないがやらないとここまで来た意味がない。

 「ちなみに今回は私を笑わすだけと言う試験です。手段は問いません。小道具等も用意してみましたので必要な方は会場の隅にある箱からご自由にどうぞ」
 「質問だ。たとえば誰かと組んでもいいのか?」
 「そうですね、漫才なんていうのもあることですし三人までならいいです」

 何人かのグループで来た人たちは安堵の声を出し、人と協力したいものは近場の人に話しかけている奴らももちらほら見える。
 
 「勇気、一緒にやろうか」
 「別にいいけど、何をするんだい?」
 「うーん、脅す?」
 「……物騒だね」

 シャルナークの思考回路が心配になる勇気。そこらじゅうでも相談している人が多い。小道具等を持って来たりする人もいるようだ。ロープやら鞭を持ってきている人もいるのはもしかしたらシャルナークの言葉を実行しようとする人がいるのだろうか。

 「そろそろよろしいでしょうか?でしたら受験番号一番から順に壇上に上がってください。組んだ人がいた場合は一番小さい数字の人の順番で来てくださいね」

 受験番号一番が壇上に上がった瞬間、パリストンの後部から人が襲いかかっていた。だがパリストンの眼にも留まらぬ速さの肘打ちにより吹っ飛んでいった。吹っ飛ばされた人の鼻は折れて白目をむいている。眼にも留まらぬ早業、勇気もシャルナークも見えていたが会場の一部は青ざめた顔をして作戦の練り直しをしている。ハンター試験に来る猛者だ。明らかに自分達よりも強い人に喧嘩を売るような人物は少ない。それにまだ第一試験、怪我するのは得策ではないと思う人がほとんどだろう。そういった思考もパリストンに誘導されているかもしれないが。

 「ああ、私の事を襲ってもいいですが死んでも自己責任ですよ?あと襲ってきた人は気絶していますので失格。壇上の人はどうぞ何かをしてください」

 壇上の人はかなりうろたえながら何かしらの芸をしたが全く笑えずに失格になった。パーティー会場で笑えない芸をする人はこっけいに見えて仕方がない。
 恐らくパリストンの性格上ただ単に笑いたいだけなのではないのだろうか、もしくは失敗した人を見たいだけなのかもしれない。本人は否定するが、人を小ばかにしたりおもちゃのように扱うのが好きな性格だ。ありえないことではないだろう。
 試験は進む。男同士でキスをするもの、亀甲縛り出現するもの、大体七十人ほど試験したが合格したのはいまだ三人のみ。女性三人のチームで女同士のえぐい漫才だった。以外に面白くてシャルナークや勇気も笑ってしまった。

 「どうしようか、俺が勇気をぶん殴り続けるとか?多分あの試験管ドエスっぽいから笑ってくれるんじゃない?」
 「嫌だよ!だったら僕じゃなくてもシャルナークでもいいじゃないか!」
 「えー勇気って年下の子供を殴るような人だったんだー、幻滅したよ」
 「お前が言い出したんだろうが!」
 「俺はエスだから、別にありだよね」
 「もーヤダこいつ……」

 そうこうしている間にまた一人終わっていた。しかもトンパが合格している。鼻から牛乳を噴出す芸をして合格したらしい。恥だのを捨てているのはすごい。

 「しょうがない、漫才でもするか?」
 「内容は?」
 「まあ合格するかはわからないが僕が昔やったのにする?」
 「うーん、他に方法がないしね、しょうがないか……」
 「じゃあ……」
 
 二人がこそこそとネタ合わせをする。この世界のテレビ番組でもバラエティ番組等があるように、芸人等もいる。だが元の世界のネタを使う人はいない、なので向こうのネタがこの世界では使えるのだ。勇気はこれでも社会人だった、多少なりとも体の張った芸の一つもあるし、同僚と一緒に漫才で飲み会を沸かせた事もある。そう言ったネタを今回は使おうと思うのだ。
 なんだかんだと順番が回ってきた二人は打ち合わせどうりの漫才をする。結果は合格。

 「面白いけれども……なんか親父くさいね」

 にっこり皮肉を言うパリストンに勇気は何もいえない、精神年齢は40近いのだから。
 結果最終的に321人中32名が一次試験合格。試験管を笑わせると言う風変わりな試験によってかなりの人数が削られたのだった。
 
 「合格者は右にある入り口から出てってください。それでは僕はこれで」

 お辞儀をしたパリストンに見送られ合格者は会場の右の扉から外へでる。扉の外へ出ると長い廊下かがありその奥にはかなり大きいエレベータがある、受験者はこのままエレベーターに乗って上へと上がっていった。
 エレベーターをでると町外れに出る。街の外の荒地にぽつんと出現したエレベーターの扉は異様だ。扉から少しはなれたところに女性が立っている、試験管だろう。

 「二次試験の試験管であります、エリーと申します。これから皆さんにはトライアスロンをしていただきます。ルールは簡単であります、今からマラソン、水泳、自転車の順番で目的地を目指していただきます。私も一緒に参加しますのでついてこれなければ不合格になります」

 はきはきとした女性のようだ。短髪で日に焼けた浅黒い肌と筋肉質なのが特徴の女性で、ジムで着るような服を着ているので体の線が目立つ。

 「それでは皆さんついて来るであります」

 受験者に背を向け走り出す試験管。その後ろを追う受験者。周りは荒地と多少の雑草や木があるだけの場所だ。遠くを見ても変わらない。 

 「うえー、面倒だなー」
 「そうだけど、どのぐらい走るんだろうな」
 「んー、一日とか走ったり?」
 「……水泳って事は水場がある場所だよな」
 「え、勇気ってそんな事を確認するぐらい馬鹿だったの?!」
 「いや、違うから!俺が言いたいのはこの進行方向に湖とかあるのかとおもってな」
 「んー、ないねそういえば」 
 「海までとかかな……」
 「はは、そうかもね」

 いい笑顔で笑うシャルナーク。見渡す限り岩場や森が広がるここを少なくとも水場があるところまで走ろうと言うのだ。本当に海まで行ってくるのかと不安になる勇気。この世界の海にはありえないほどでかい生物や人食い生物などもかなり多く存在する。それに不安になるのはしょうがない。

 


 一方純は念の修行をしていた。純の練の持続時間は最初は二分ほど。一千万人に一人と言われた才能を持つゴンやキルアが三分だった事を考えれば上出来の部類だろう。それに純は念をもとから知っていたというアドバンテージがある。念はイメージ力も大事だ。元から知っている分その習得速度は何も知らない人以上。現在はそのおかげもあり二十分ほどはしていられる。
 現在の四大行や応用の習得度は以下のとうりとなる。
 
 纏、綺麗にできているが感情の揺らぎによって多少雑になったりするので要修行。
 絶、森に隠れて気配を消して動物に近寄ってみたりをしているが気がつかない。中々よくできている。
 練、二十分ほど、もともと子供の体のためオーラの総量のスタートが低いため要修行。
 発、現在はそれぞれの系統修行中。数字を作ったりはまだできない。念弾はできるがまっすぐにしかとばない。要修行。
 凝、スムーズとはいかずいまだ三秒ほどかかる。実戦には使えない。
 隠、かなりうまくできている。これだけは勇気にも勝っている。
 円、五メートルほど、ただし五分ももたない。
 周、うまくできているが手から離れたところはオーラが薄くなったり等問題あり。
 硬、他のところからオーラがもれてしまいうまくできていない。ほぼ使用できない状況。
 堅、一番力を入れているがそれなり、継続時間は二十分少々、最低でも三十分はできないと実戦に使えないので要修行。
 流、これはかなり下手。移動自体は早くできるがオーラを移動しすぎてしまう事が多く苦戦中。
 
 「まだまだだなあ」

 一言呟く純。今現在の状態で念能力者と戦えば勝てないだろう。四大行もまともにできない奴や、応用を知らないような奴なら別だが。
 今現在の状況として1991年一月、純が知っている範囲で言えば去年あたりからゴンがくじら島にいるぐらい。それ以外は特に現在はわからない。これ以降であれば、キルアが天空闘技場にいる1995年、クルタ虐殺の1996年くらいだ。キルアは二年間はあそこにいる。クルタはいつかまではわからない。クルタの虐殺はハンター協会に告げ口ぐらいしてもいいかも知れない。キメラアントのことも一緒に言っておくのもありだろう。
 もしも原作にかかわるのであればある程度の強さは必要だ。それにせっかくこの世界で生活するのなら冒険の一つでもしてみたい純は思う。ヨークシンのオークションも見たい、グリーンアイランドもやってみたいと思うのだ。そう言ったところはまだまだ子供っぽい純だった。もちろん勇気とは別行動でだ。さすがにそこまで父親と一緒と言うのは男の子の理論で行くと情けない事になるので、ある程度からだが成長したら一人暮らしをするのもいいと思っている。

 「ジュン」
 「ん?シズクか、どうしたん?」
 「くっきー作ったから一緒に食べよ」
 「あいよ」

 勇気と違って平穏なジュンだった。




 二次試験のトライアスロンは終盤に向かっていた。
 最初のマラソンは大陸の中心部から結局海まで走った。その際に猛獣か襲ってくるようなところもあり、数名が襲われた。勇気たちは勿論撃退した。
 海にきてそのまま泳ぎ始めた試験官を追い皆も泳いだ。ここでは洋服を着たままだったり荷物を持っていたりした人が多かったためかなりの体力を消耗し、脱落者も一番多かった。ここではサメに襲われたりした。
 三種もくめの自転車はほとんど砂利道や山岳地帯を突き抜けていった。しかしさすがはここまで残った人たち。ほとんどが疲れてはいるがまだいけそうな人も多い。
 ここまで約二日間動きっぱなしだ。

 「さすがに二日も寝てないと眠いね勇気」
 「あーたしかになー、まあでもデスマーチよりは余裕かな」
 「デスマーチ?」
 「デスマーチってのはあれだ。仕事が忙しくって忙しくってしょうがないときの事だよ。三日四日寝ないときとかもあったし」
 「ふーん、勇気って何の仕事してるの?」
 「今は……まあ無職だけど、前は色々やってたよ、営業からプログラマー、最後は普通のサラリーマンだったけど」
 「戸籍がないのによくできたね」
 「まあそこら辺は色々ね」

 シャルナークと勇気は他の人たちと比べれば疲労していない。二人とも纏をしているため他の人より体力消費も低いのだ。もともとの身体能力が高いと言うのもあるが。
 そうこうしているうちにどこかの街に着く。街を入っていき、大きな建物の前で試験官がとまる。

 「お疲れ様であります。ここで二次試験終了であります。合格者は12名!このまま建物の中に入って行って行けば次の試験であります」
 
 そう言った試験官はあまり疲れていなさそうだった。

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