小説『夜天と勇気と決闘者』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 転生――


 俗な言い方をすれば『生まれ変わり』とも言うが、往々にして転生した場合、姿も名前も、性別すら異なる事がある。

 極稀に前世の記憶を持っている、或いは断片的に思い出す者も居るらしい。


 だが、もし、前世と名前も容姿も性別も同じで、しかも『完全に』前世の記憶を思い出した者が居たら?

 そしてその転生者達は前世では絶対に知り合うことの無い者だとしたら?

 転生した世界は自分の知っている世界と似て非なる世界だったら?



 此れはそんな『もしも』の話。


 『夜天と勇気と決闘者』――始まります…









  遊戯王×リリカルなのは×ネギま  夜天と勇気と決闘者 GX1
 『序章〜終わりと転生』









 ――新暦82年・ミッドチルダ上空『ゆりかご弐式』内部



 Side:はやて


 「はぁ、はぁ…此処が動力炉のある場所やな…」
 アカンなぁ…血ぃ流しすぎて目が霞むわ…せやけど未だ倒れるわけにはいかん…
 此れを落さな、ミッドは消滅やから…

 「あんのマッドサイエンティスト…軌道収容所から消えたおもたらこないなもん作りよってからに…!」
 ホンマ、その執念だけは尊敬するで、『ジェイル・スカリエッティ』…

 6年前に捕縛した狂気の科学者は一部の管理局員と裏取引してた。
 それで機を見て脱走…私等に復讐ってとこやろな…


 地上をスバル達に任せてゆりかご弐式に突入した私達をまっとったのは予想通りのAMFとガジェット。
 一応AMF対策はしとったけど、ガジェットの性能が前の数十倍に跳ね上がってた。


 AMFで力を制御された私達に、強化ガジェットは思った以上の強敵やった…

 シャマルとザフィーラが討たれ、次いでヴィータとリイン…最下層の手前でフェイトちゃんとシグナムとアギト…



 そして最下層、動力炉の一歩手前でなのはちゃんが…


 「ガフッ!…ゲホッ、ゲホッ!!」
 かく言う私も動力炉に辿り着いたとは言え長くはもたんやろな…
 即死は免れたけど、バッチリお腹貫通しとるからなぁ…如何考えても致命傷や…

 「はぁ、はぁ……せやけど皆の命を無駄にはさせへん…行くでレイジングハート!」
 「All right.」


 動力炉の手前で『私にはストライクカノンがあるから連れて行って』と託されたなのはちゃんの相棒に語りかける。
 シュベルトクロイツは壊れてもうてもう無い…夜天の書もボロボロや。


 まっとってやなのはちゃん、フェイトちゃん、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リインにアギト。
 此れを壊したら私も直ぐ逝くから…!


 『ラグナロク』を撃つほどの力はもう無い……せやから技借りるで王様!!
 「集え、星と雷!撃ちぬけ雲の騎士!!そして…夜天に響け我が鼓動!!」

 「Jaguer note.」

 「出でよ巨獣…『ジャガーノート』!!」



 ――ドン!ドン!ドン!ドン!ズガァァァァァァァァァ!!!!



 残る力のすべてを注ぎ込んだ必殺の一撃。
 はは…動力炉は木っ端微塵や……。

 「ゲフッ…はぁ、はぁ…もう此処までやな…」

 動力炉が壊れた事で、ゆりかご弐式は崩壊を始めとる。
 スカリエッティの奴は、スバル達が確保を完了してる。

 後は此れが無くなれば万事解決や。



 それにしても妙に眠いなぁ……身体に力がはいらへん…
 あぁ、そうか……此れが『死ぬ』って事なんかな…


 もしもや…もし生まれ変わる事ができたら又皆と会いたいなぁ…





 Side,Out


 かくして、突如出現した2つ目のゆりかごは消滅し、主犯格のスカリエッティは捕えられ、猶予も無しに処刑が決定された。
 スカリエッティと内通していた局員も捕えられ、リンカーコア破壊の上、軌道収容所送りと言う極めて重い刑に処された。


 そして其れから数日。

 ミッド郊外の広場には多くの人が集まっていた。


 執務官クロノ・ハラオウンとその妻エイミィ・ハラオウン。
 リンディ・ハラオウンに地球からやってきた高町家の面々と、アリサ・バニングスと月村すずか。
 特務六課のメンバー全員、ナカジマ家に、高町ヴィヴィオ、アインハルト・ストラトス、トーマ・アヴェニールとリリィ・シュトロゼック。

 彼等の目の前には9つの墓標。
 自らの命と引き換えに、世界を救った『英雄達』の為の墓標。


 「僕に出来るのは此れくらいだ……せめて安らかに眠ってくれ。」

 クロノはそう言って9つの墓標に手を合わせる。
 そして…

 「八神はやて指令、高町なのは隊長、フェイト・T・ハラオウン隊長、シグナム副隊長、ヴィータ副隊長、
  リインフォース曹長、アギト曹長、シャマル三等陸佐、ザフィーラ一等陸尉に敬礼!!」

 クロノの号令で全員が墓標に敬礼し、余りにも早くその命を散らした者達の冥福を祈った…




 自らの命を賭してミッドチルダを護った魔導師達。
 その話は、未来永劫、この世界で語り継がれる事となるのだった…








 ――――――








 ――西暦2003年・火星人造異界『魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』、廃都オスティア『墓守人の宮殿』内部



 Side:裕奈


 夏美ちんのアーティファクトで近づける距離はあと少しだね。
 ネギ君が戦えなくなっちゃった今、私達で明日菜を助け出すっきゃないでしょ!


 後2m…1m……作戦開始!!


 「な、馬鹿な君達は!?」

 驚いてるねフェイトの奴!
 悪いけど勝たせてもらうから!


 「う…らぁ!!!」
 「く……成程、彼女のアーティファクトか!」

 奇襲成功!
 フェイトの相手は小太郎がしてくれる。
 その間に、朝倉は座標位置の計算、楓は明日菜の解放、まき絵は鍵の奪取。
 私は…
 「アンタの無力化だ!」

 「なっ!?」

 アーティファクトを出してなかったのが仇になったね。
 この距離なら、私の弾丸の方が早いよ!


 ――ガァン!


 よし命中!


 「君達風情に…!」
 「させんわ!!」


 って…
 「何かやばそうなのが飛んできた!?」
 確か石化の針だっけ…?いやいや…『針』じゃなくて『杭』でしょうにあの大きさは!


 ――キュゥゥゥ…


 !?
 うおっ何これ?周りが急にスローモーション…?

 そうかっ、亜子のドーピングが未だ効いてるのね!

 おぉっ、見える見える!
 1人につき2本から3本…ッ

 おわっ?本屋に10本以上来てんじゃん…なんかフェイトに恨まれてんの?


 これ、全部やれるか?……いや、やるっきゃ無いじゃん!!
 ゆーなちゃんの夏休み不思議大冒険…

 此処が見せ場(クライマックス)だよ!!


 ――ガッ!ガガガガガガガガガ!

 ――ガァン!ガン!!ドガガガガガガガガガ!!!


 よしっ、スゴイ私!残り3本!!


 ――ガチンッ!


 「げっ!」
 た、弾切れ!こんな所で……ヤバイ1本はまき絵に!
 今まき絵がやられたら…

 「くっ……まき絵!!」
 「ふぇ!ゆーな!?」


 く…此れ普通に刺さっても痛いじゃん…!
 でも、瞬間的に石になるわけじゃないんだ……後2本は?

 「え、えぇぇい!!」

 さよちゃん?
 …OKグッジョブだよ!ラスト1本……何処?


 ――ドスッ!


 え……?
 「ゴフッ……あ、アレ?此れ如何して?」
 最後の1本…私の胸に刺さって…?な、んで…石化してないところに…刺さる…かなぁ?
 しかも此処って心臓……あはは…即死、って、聞いてたけど…意外と意識って持つんだ…

 「ゆ、ゆーなぁ!!!」

 あ〜あ…まき絵泣いちゃったよ…仕方、無いか…
 最後の最後で貧乏くじかぁ……でも、世界と私1人の命なら……対価としては安い…のかなぁ?


 「ネギ君…」
 さっさと起きちゃいなよ……私の残りの元気全部渡しに行くからさ…必ず勝ってよ!


 はぁ…天国で、会えるかなぁお母さんに…






 Side,Out


 結果を言うならば、戦いはネギ達の勝利で幕を閉じた。
 目覚めた明日菜の力によって、消えてしまった魔法世界の人々や動植物も元に戻った。

 フェイトがネギと手を組んだ事で、石化した人々も元に戻り、魔法世界は未曾有の危機から脱した。


 1人の少女の命と引き換えに…




 数日後、首都メガロメセンブリアで、ネギ・スプリングフィールドは演説台に立っていた。
 今回の事件の事、そしてこれから己が行うこと、全てを魔法世界の住人達に話した。
 そして、

 「今回、僕は…僕達は掛け替えの無い仲間を、1人失いました。彼女の力があったからこそ、僕はもう1度立ち上がる事ができた…」

 闇の魔法に魂魄まで侵され、死に掛けたネギの精神に呼びかけた幾多の人々。
 己の父、師であるエヴァンジェリンとジャック・ラカン、皮肉屋だがお人好しのトサカ…
 そして、明石裕奈。

 最後の最後でネギは裕奈からありったけの『元気』を貰い、復活する事ができたのだ。
 だからこそ彼は言う。

 「今回の事件解決は、彼女の…明石裕奈さんの存在無くしてはありえませんでした。
  皆さん、この世界を救う為に、文字通り其の身を犠牲にした彼女の事を……決して忘れないで下さい…!」

 この一言に民衆は歓声を上げた。



 そしておよそ130年後、この場所にはある石像が『英雄の息子』の石像と共に並ぶ事になる。

 その石像は2つの拳銃を構えた少女の像…その名は『STRENUUS ARCARIUS(活発な弓使い)』と記されていた…














 こうして、異なる世界でその生涯を終えた者達。
 普通ならば、彼女達の物語は此処で終焉となる。


 だが、運命の悪戯か、はたまた神の気まぐれか、彼女達の物語は此処から新たな始まりを告げる。


 そう、夫々の居た世界とは異なる世界で…








 ――――――








 ――童実野町・童実野病院産婦人科



 この年、この童美野町で2人の少年と、2人の少女が新たに命の産声を上げた。


 少年の名は『遊城十代』と『万丈目準』

 そして、少女の名は『明石裕奈』と『八神はやて』…




 今は未だ、お互いに顔も名前も知らない者達。


 しかして物語は止まらない。



 10年後、2人の少女が出会うとき、物語は加速していく…













  To Be Continued…

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