優は渡された地図を頼りに寮に辿り着いた。
この寮は女子用であるためか結構きれいに掃除をされていた。
この寮・・・『柵川学校女子第二寮』はとても部屋が広い。
トイレ、キッチン、バス付きなのはもちろんの事3LDKと広いのだ。
「うぁぉ」
優の部屋についてからの第一声はそれだった。
(まずは・・・)
目の前にある、自宅(上条家)から先に送っておいた荷物を片付けることにした。
外の景色が暗くなり、寮の各部屋からいい匂いが漂いだした頃、優は部屋の掃除を終えた。
能力を使えば一発で終るものなのだが・・・。
(今日はご飯作る時間もないし・・・食べに行こう)
優は外出を決めると近くのファミレスに向かった。
(・・・なんで込んでるの?)
ファミレスは込んでいた。
学園都市は完全寮制である。
そのためご飯を作ることの出来ない学生はファミレスなどに外食するのである。
もちろん寮に食堂があるところは外食なんてしないのだが、
食堂がある寮なんてものはいいところの学校にしかないのである。
優は運よく空いている4人席に座ることが出来た。
この席が空いている席の最後の席だといっておく。
「お客様すみませんが、相席よろしいでしょうか?」
優が座り何を頼むかを考えていると店員が話しかけてきた。
別に断る理由もないので優は了承した。
「お客様こちらです」
優の前に相席のお客が座った。
優は何のメニューにするかいまだに迷っておりメニューにかじりついている。
「すまねェが、俺にもメニューをくれ」
相席の相手が優が独占しているメニューを求めた。
「あ、はい」
優はここで始めて相席の相手を見た。
そこには髪は白く肌までも白いアルビノの少年か少女か分からない人物がいた。
(え。もしかして一方通行(アクセラレータ)?)
そう紛れも無い一方通行がいた。
「あァ?俺の顔になァんかついてェんのか?」
ついつい優は一方通行の顔を凝視してしまっていたようだ。
「え。い、いやなんでもないです」
一方通行は気にすることもなく店員を呼ぶベルをならした。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「ハンバーグ」
一方通行は店員に言った。
「お客様はお決まりでしょうか?」
店員は優に聞いてきた。
「あっじゃぁ私もハンバーグで」
優は一人称を僕ではなく、私にしていた。
自分で変えた訳ではなく、詩菜に変えるように言われたのだった。
優はハンバーグが来るまで、一方通行と話してみることにした。
「ねぇ。私の名前は上条優って言うんだ。
あなたのお名前は?」
優は知っているが聞かずに言うと怪しまれるので一回聞いておくことにした。
「一方通行(アクセラレータ)」
(あっ・・・アクセラレータの本名ってなんなんだ?)
「それって本名?」
「いやァ。
ほんとォの名前なんてェわすれたなァ」
「そうなの・・・。
私が付けようか?」
「あァ?」
「田中太郎」
アクセラレータが睨んできた。
「ぎゃぁ睨まないでぇ〜」
「別にィ睨んでなんてねェよ。
だがそれはねェんじゃねェか?」
(いや絶対貴方は睨んでました)
「う〜ん・・・。
じゃぁ高町なのは」
優はネタに走った。
確かに性格は一方通行だろう。
「それは女の名前じゃねェか」
(一方通行って『魔法少女リリカルなのは』知っているのか・・・。)
「あはは。
じゃぁ高町恭也」
これまたリリカルなのはネタで・・・。
「おいおい。
俺は御神(みかみ)の剣(けん)なァんて使えねェよ」
(やっぱり知ってるし・・・)
実はこの『とある魔術』の世界でも『魔法少女リリカルなのは』は放映されていた。
「でも悪かァねェな」
だがアクセラレータには意外と好評のようだ。
(名前かァ、アソコ(研究所)じゃだれも俺の名前読んでくれなかァたな)
そこに店員が2人分のハンバーグを持って現れた。
2人してハンバーグにがっつく。
「お〜い。
店員さん。こっちにお冷たのんます」
優達の座った席の横の席の関西風の男が店員にお冷を頼んでいる。
そして店員はその机にお冷を持っていこうとすると・・・。
途中の席のいかにも不良って奴に足を引っ掛けられて・・・転んだ。
しかも持っているお冷は優とアクセラレータに向かって中身をぶちまけながら飛んでくる。
2人はまったくそんなのに気が付かずにハンバーグにがっついている。
アクセラレータにお冷が降り注ぐが・・・常時展開している反射によって一方通行そのものにはかからなかった。
一方、優はそのままお冷をかぶってしまった。
「つ、つめたっ」
「あっお客様す、すいません」
店員は謝ってくる。
「うぅ」
「おォい。大丈夫かァ?」
アクセラレータが聞いてくる。
「うぅ。
『対象``水``情報連結を解除』」
すると優の髪や服から水分子がどんどん分解し光の粒子となっていく。
そのまま優のぬれた髪や服はぬれる前の状態になった。
「おっ。能力者だっだのか」
「まぁね」
「あっお客様。
すみません。すみません」
店員はいまだに謝ってくる。
大人の女性が9歳児に謝っているのはどうもシュールだ。
「あぁまだ半分あったのに・・・」
優に水がかかったのだが食べていたハンバーグにもかかってしまっていた。
ハンバーグにはアクセラレータもかぶってしまっている。
優がハンバーグの情報連結を解除してしまうとハンバーグの水分までなくしてしまう。
「す、すいません。
新たに作り直してきます」
店員はあわてたように厨房に戻っていく。
「ねぇアクセラレータ」
「あァなんだ?」
「この状況を作り出したのって・・・」
優は店員が転んでから大声で笑っている転ばした不良とその取り巻きを見る。
「あいつらだよね?」
「あァ」
「許せる?」
「いやァ後でぼこる」
アクセラレータは想像していた通りの言葉を返してきた。
「じゃぁ私も参加させて。
私もむかついたから」
「あァ。能力者なら問題ねェな」
どうみてもあの不良達はわざと転ばしたみたいだ。
いまさっきの店員が新しいハンバーグを出してきた。
「店員さん。
この後時間ある?」
「え?あっはい。
ありますが・・・」
「ちょっとあの不良達「ぼこる」から見に来ない?」
優が店員と話している間にアクセラレータも会話に入った。
「え?あっはい!!」
どうやらあの不良達にはこの店員もイラついてたようだ。
新たに出てきたハンバーグを食べつつ優とアクセラレータはどういう風に痛めつけようか考えている。
不良達が出て行こうとするタイミングでハンバーグを食べ終わり、
不良の少し後を優とアクセラレータ、仕事を切り上げた店員でおう。
不良が裏路地に入っていった。
「さぁ一方的な暴力って物を見せてあげようじゃない。
アクセラレータいこう」
「あァ。今日は予定もねェし遊ばしていただきましょうか」
「ふふふ。
楽しみですね」
店員はいつの間にか鉄パイプを持っている。
はたから見たら怖い光景だろう・・・。
小学3か4ぐらいの少女と性別が分かりにくい白い人物は不気味に口を吊り上げて笑っているし、
その傍らには20歳代の女性が鉄パイプを持って不良のあとを追いかけるのだ。
シュールすぎる・・・。