小説『黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第十話

 こんにちは。葵です。えっといきなりで申し訳ありません。なぜかいきなり私が今回から天の声も務めるようになりました。なぜかというとこんな置手紙を預かりました。


拝啓 
益々私がいる場所は寒くなり、手がかじかんで動かなくこの頃。皆さまはどうお過ごしでしょうか。
 さて、私は今日から冬眠に入ります! 天の声は葵に任せたので安心してください
by 楽一

 とのこと。安心してください。ウイング・オブ・ジャッジメントとギュリーノス・ブレイカーで塵にしときましたんで 。あとつでにステルス性能つきのフライパンで後ろから・・・・・いい加減な人間は嫌いなものですから、フフフフフッ。

 こほん。さて、今私はどこにいるかというとすずかの家の前にいます。というか豪邸ですね。大きいです。さすがお金持ち。え? 嫌みにしか聞こえない? そんなわけないでしょう。私の貯金通帳はあの迷惑極まりないクソ神のおかげで日本の借金をプラスにしたぐらいありますよ。

「さて、なのは。なのははいるとわかるんですが、恭也さんは何かすずかにご用でもあるんですか?」
 そう。この場にいるのは私となのはと恭也さん。なのははすずかの友達として理解できる。だが恭也さんはなぜ?

「うん。すぐにわか「葵! 貴様なのはを呼び捨てにいるのか!?」るよって、え!?」

 私が恭也さんの方を見ると、すごい殺気を飛ばしていた。

「え、えぇ。なのはがそう呼んでくれといったので。友達なら当然なのでは?」

「うっ・・・そ、そうだな。友達なんだな!」

「そうですが。(他に何があるんだ?)」

(うぅ〜。葵君は鈍感なの〜〜!!)

(あ、あはははっ。はぁ〜)

 なのはリスみたいにほほを膨らませ、ユーノは溜息をついてた。ユーノ。溜息をつくと幸せが逃げるぞ?

「〈君のせいだよ!〉」

 あれ? 口に出てました? もしかして心読まれた? そんなバカなこと無いですよね。

「「〈マスター。もう少し乙女心を理解してほしい(な)・・・・〉」」

 ん? 今度はエクスとルミルが。最近疲れているのか? 前世では万対一の戦場を何回経験しても疲れなかったのに。ちなみに一が当然私です。

 そう思っているとなのはがチャイムを鳴らし中からメイドが出てきた。何とも落ち着きのある人だ。

「恭也様、なのは様、それと・・・神無月葵様。いらっしゃいませ」

「あぁ。お招きに預かったよ」

「こんにちは〜」

「なのは? こちらの方は?」

「あ、そうか。葵君初めて会うんだっけ?」

「失礼いたしました。私の名前はノエル。この月村家でメイド長を務めさせてもらっています。神無月様のことはすずかお嬢様からきいています」

「あぁ〜、なるほど。私のことは葵でいいです。神無月は呼びづらいでしょうから。あとこれ、お土産です」

 そういって私は私が作って来たケーキを手渡す。

「ありがとうございます。おやつの時間にでも出させてもらいます」

「そうしてください」

 そういって微笑みかけた。

「どうぞこちらです」

 そういってノエルに案内された場所にいたのはすずかと、アリサ。それと見知らぬすずかに似た女性が一人いた。

「あ。なのはちゃん、葵君、恭也さんいらっしゃい」

「すずかちゃん」

「いらっしゃい。なのはちゃん、恭也さん。それと、神無月葵様」

「葵で結構ですよ。神無月は呼びづいらいでしょうから」

「では葵様」

「来たのね。葵」

「お招きに預かったのだ。こないと無礼だろう」

「まぁ、当然ね。私たちが誘ったのだから」

「アリサちゃんったら」

 そして葵は億で紅茶を飲む女性とその隣にいる女性を見る。

「(微量だが魔力か? 人とは違う何かを感じるな。)そちらの方々ははじめましてかな? 神無月葵だ」

 すると女性は立ち上がり、私の近くまで来て視線を私のところまで下げて、

「はじめまして。私の名前は月村忍よ。すずかの姉」

「ファリンと申します。すずかお嬢様の専属メイドを務めさせもらっています」

「恭也いらっしゃい。あと、すずか。葵君を借りて行っていいかしら?」

「え? う、うん」

「それでは三人の御茶はそちらにお持ちしましょう。何がよろしいですか?」

「任せるよ」

「なのはお嬢様と葵様は」

「わたしも、お任せで」

「私もそれで」

「かしこまりました」

 そして私は忍と恭也について行き、ある一室に案内された。

 そしてそれぞれが席に座る。忍さんが口にした質問に私は少し驚いた。

「下手な探り合いはしないわ。あなたは何者?」

 それはそうだ。いきなりなに者と聞かれても、ねぇ?

「神無月葵。それ以上でもそれ以下でもない」

 すると恭也さんが、

「君からは人の気と異なるものを感じた。だが「忍さんとも違う。ですか?」ッ!?」

 すると、恭也さんが立ち上がり、私の胸ぐらをつかんだ。それでも私は言葉を続ける。

「おそらくですが、忍さん、いえ。月村家そのものが夜の一族。吸血鬼と呼ばれる存在。違いますか?」

 時が止まった感じがした。だが、忍さんが、

「えぇ、そうよ。私たちは夜の一族。吸血鬼の類に入るわ」

「忍・・・・」

「いいわ。それと恭也、彼女を放したら?」

「あぁそうだな。あぁ、後忍」

そういって恭也さんは胸ぐらから手を離した。

「ん? なにかしら」

「彼、葵は男だ」

「・・・・えぇえええええええええええええええ!!!」

 しばらくたち忍さんが落ち着いたのを確認し、話を再開。いやぁ、久しぶりでしたね、あの感覚。

「大丈夫なのですか? 日光や血などに関しては?」

「日光においては問題ないわ。それに血においても人から吸ったとしても少し貧血になる程度よ。間違ってもホラー映画みたいに血を吸った人が全員吸血鬼になったりはしないわよ」

 なるほど。知識で知っているものとは違う。まぁ所詮知識は知識だ。あてになるものではない。そもそも、こちらとあちらでは世界観そのモノが違う。

「さて、私たちの秘密は話したわ。次はあなたの番よ」

「知らない。では通してもらえないようですね」

「ええ」「そりゃそうだ」

 はぁ、めんどくさいんだよね。平行世界理論って。

「まず。私の存在の前に私はこの世界の住人ではありません」

「どいうこと?」

「私は平行世界の住人なんです」

「平行世界?」

 恭也さんが何言っているんだという顔をしている。

「簡単に言うと【if】の世界です。たとえば恭也さんと忍さんが知りあっていない世界、私があなた方と知り合わなかった世界、恭也さんと忍さんに妹がいなかった世界。こう言った【もし】の世界から来たというわけです」

「はぁ、何ともにわかには信じられないな」

「まぁ、そうでしょうね。ですが私がいた世界とここの世界の最大の違いは魔法が一般化されいているか否かということなんです」

「魔法!?」

「こういうのですね」

 そういって私は手のひらを出し、

「ファイヤーボール」

−ボッ

 そう言うと、私の手の上に炎の球体が現れた。

「移行。アクアボール」

−コポッ

 そう言うと炎は水に、

「こう言ったものです。ご納得いただけましたか?」

「「・・・・・」」

 沈黙する二人。沈黙は肯定として受け取ろう。

「はぁ、何ともでたらめな。だが、それと最初の質問は違う。それはあくまでも気みたいなもの。だが、君という存在は」

「えぇ、一応世界観を納得していただこうと思いまして。で、最初の質問にかえります。私たちの魔法概念は自然との共有。つまり自然、精霊という存在から魔力を借り受け形と成す。これが私たちの魔法の概念です」

「ということは君は精霊か!?」

「半分正解で半分外れ。半妖とはご存知ですか?」

「えぇ。半分人間、半分妖怪。いわゆる人間と妖怪のハーフでしょ」

「はい。私は半分人間、半分精霊の人工半(はん)精(せい)なんです」

「人工?」

「人間は何事においてもわからないモノは実験し証明、利用したがる。私がいた場所も様々な実験を受けました。その結果投薬、魔法による改変などによって人工的に精霊と融合させられたというわけです。まぁ、これはあくまでも一部に過ぎませんがね」
 そういって私は冷めきった紅茶を口に含む。すると、恭也が、机をたたき、

「巫山戯ている! 君はなぜそんなに平気でいるんだ! 国は、警察は!?」

「無駄ですよ。このバックについていたのは日本政府、魔法省、環境省、文部科学省、国際ウィザード連合といった国際がらみなんですから」

「魔法省とその何とか連合、って何? あと環境省がなんで?」

「魔法省はいわゆる魔法に関することを専門に取り扱っている日本の行政機関。国際ウィザード連合、通称IWUは国連にとって代わった国際機関のことです。で、環境省がなぜ出てきたかというと魔法発動に必要なのは自然環境の整備。つまり私たちの世界では森林などを破壊する国交省より環境保護や整備を行う環境省が力を持ったんです」

「国がらみでそんなことを・・・巫山戯ている」

「恭也さん。所詮人は己が欲望に忠実に生きているんです。例え一人が違うといっても強大な権力の前では無駄なんです」

「すずかやなのはちゃん、アリサちゃんはこのことは?」

「知りません。むしろ一生知らないでおいてほしいですね」

「どうしてだ?」

「彼女たちには重すぎること。彼女達は純粋でいてほしいんです。私がいる場所はあまりにも汚れすぎている。出来れば彼女たちにはあのまま笑顔でいてほしいんです。そのためなら私はどんな罪でも汚れでも背負っていきます。私が再び幸せをつかめたのも彼女たちのおかげなのですからね」

「・・・・・」


SIDE忍

「彼女たちには重すぎること。彼女達は純粋でいてほしいんです。私がいる場所はあまりにも汚れすぎ
ている。出来れば彼女たちにはあのまま笑顔でいてほしいんです。そのためなら私はどんな罪でも汚れでも背負っていきます。私が再び幸せをつかめたのも彼女たちのおかげなのですからね」

「・・・・・」

 そういって葵君はすずかたちがいる場所を見降ろしていた。

 その目はどこまでも悲しく、どこまでも透き通っていた。なんでこの子が、なんでそんなどひどいことができるんだ! 彼が何をしたっていうんだ!?

『所詮人は己が欲望に忠実に生きているんです。例え一人が違うといっても強大な権力の前では無駄なんです』

 たった9歳の子供が言えるセリフじゃない。でも彼は言ってのけた。どれだけ重いものを背負い、どれだけ辛い思いを、悲しい思いをしてきたのだろう。

「私は守りたいだけなのかもしれないな。幸せという物をくれた彼女たちを」

 彼がそうつぶやいたのがこの静寂の中ではよく響く。

「あら。その中にはすずかも入っているのかしら?」

 そう、彼に聞いてしまった。これ以上彼に重い罪を背負わせたくないのに聞かずには居られなかった。

 だが彼は、

「無論、すずかもなのはもアリサも最優先で護ってみせますよ。我が体を楯にしてでも」

 彼の眼はまるで鋭い刃物のように光っていた。だが、その光がどこか安心させてくれる。

 でも次の瞬間には穏やかな笑顔になって、

「さて、紅茶も冷めてしまっていますが、ケーキでも食べましょう。自信作なのですが感想を聞かせてもらえれば幸いです」

「そうね」

 そういって私たちはケーキ(ティラミス)を口に運ぶ。口の中には甘いクリーム味と風味が一気に・・・って!

「これ、君が作ったの!?」

「えぇそうですが?」

「・・・・パティシエ並み・・・いえ、三ツ星並み・・」

SIDE Out


 そのころなのはたちは、

「このケーキ美味しい!」

「見た目も、形もいいしこれ、なによりおいしいし! 三ツ星レストランに出されてもおかしくないわよ?」

「ファリン、これどこのケーキ?」

「えっと、さっきお姉さまに聞いたら、その・・・」

「どうしたんですか? ファリンさん」

「これ、葵君が作ったみたいです」

「「「・・・・え?」」」

 彼女達は葵が作ったという情報を聞いて頭を悩ませていた。その理由はというと、

「「「女としてなんか・・・・負けた気が・・・・」」」

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