小説『FAIRY TAIL PSIを使って大暴れ』
作者:OR()

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第14話 打ち砕かれた自信



何でこんなところにアクノロギアが?

そんな疑問は一瞬のうちに消え去った。
アクノロギアが村を破壊し始めたのだ。

アゲハ
『くっ!!レナ!!ビランさん!!すぐに村人たちを連れて避難してくれ!!』

オレは二人にそう告げると少しでも村の人たちが逃げる時間を稼ぐためアクノロギアへ向かっていく。

レナ
「アゲハおにいちゃん!!」

ビラン
「レナ!!夜科さんの言う通り早く逃げるんだ!!」

レナ
「でも!!」

ビラン
「私たちがここにいると夜科さんは私たちを心配して思いきり戦えなくなる。悔しいけど私たちにできることは戦いの邪魔にならないよう逃げることだけなんだ……いいね?」

レナ
「………分かった」

ちらりと後ろを一瞥し、少し安心する。どうやら二人はちゃんと逃げ始めたようだな。

その後、オレはアクノロギアに向かう途中に逃げ遅れている人たちを誘導した。まだ死人はいないみたいだったが、ケガ人が大勢いる。すぐに安全な場所まで避難するのは難しそうだ。かなりの時間アクノロギアを足止めしておかねぇと…!!
そんな時アクノロギアを目前に未だもたもたしている村人を見つけて叫んだ。

アゲハ
『おい、早く逃げろ!!ここにいたら確実に死ぬぞ!!!裏の山へ急げ!!』

「で、でもあんたは!?」

アゲハ
『オレはこいつを食い止める!!あんたらが逃げる時間ぐらいは稼げるはずだ』

「そんなの無茶だ!!あんたが戦うならオレも…」

アゲハ
『足手まといなんだよ!!早く行け!!』

村人の男は一瞬躊躇したがちゃんと逃げてくれた。

村人たちはすでに全員避難したようだ。
これで心置きなく戦える。

アゲハ
『うぉおおおおおおおお!!!!』

オレは全身にバーストエネルギーを纏わせ、ライズを全開にしてアクノロギアを殴り付けた。
しかしアクノロギアにとっては大人が幼児に叩かれた程度のダメージしか感じていないようだった。

アゲハ
『な!?くっそ…!!』

ズォオオオオオオオ


っ!!やべぇ!!


ドゴォオオオオオン!!!

アクノロギアがオレに尻尾を叩きつけようとするがなんとか避ける。

アゲハ
『ぐっ、暴王の流星【メルゼズ・ランス】!!』

オレはアクノロギアと距離を取り、暴王の流星を放った。

アゲハ
『暴王の流星はすべての魔力を喰らい尽くす、これなら…!!』


カッ!!


しかし暴王の流星は閃光と共にアクノロギアに直撃する前にかき消された。

アゲハ
『バリア………だと…!?』

さすがのアクノロギアも暴王の流星の危険性を察知したのか原作では使わなかった魔力を自分の周りに放出するバリアを使ってきた。
暴王の流星はその魔力を喰らい切れず、弾けとんだ。

アゲハ
『くそっ!!』

アクノロギアが再び尻尾をオレに打ち付けてきた。
さっきと同様に避けようとしたが、さっきまでとまるでスピードが違った。

アゲハ
『やべぇ!!ヨヨ、頼む!!』

ヨヨ
『マカセロ、≪弱者のパラダイム≫』


ズドォオオオオオン!!!

なんとかヨヨのお陰でそらすことが出来た。しかし尻尾を地面に打ち付けたときの衝撃でオレの体は上空へと吹き飛ばされた。

アゲハ
『ンの野郎…!!さっきまでは遊んでやがったのか!!』

オレはマテリアル・ハイでブロックを空中に作りそこに着地した。

アゲハ
『くらえ!!神刃【カミキリ】!!!』

オレはブレード型のバーストを発動し、アクノロギアに斬りかかる。
しかしアクノロギアの固い鱗に弾かれる。少しだけ鱗にダメージを残せたがアクノロギアは全く影響がないかのように動き出した。

アゲハ
『くそっ、これでもわずかに切り傷を残せただけかよ』

再びマテリアル・ハイを使って攻撃を避ける。

どうする?どうすればこいつに勝てる?
いや、勝てないまでもせめてここから追い払うぐらいは………
くそっ、こんなことなら最初からすべてのPSIを使用できるようにすればよかった。

アクノロギアの追撃が来た。紙一重で避ける事に成功。けどこのままじゃ時間の問題だ。いずれやられる…!!
次々と繰り出される猛攻を避けながら戦術を練るが全く勝てる手段が思い付かない。

アゲハ
『くそっ、最初から最強過ぎてもつまらないなんてふざけたこと言ってたあの時のオレをぶん殴ってやりてぇ!!』

正直なめていた。最初から全部のPSIが使えなくたって戦えるって。
甘かった。救いたいものを救うためには力がいる。オレは今更ながらそれを思い知った。

アゲハ
『“爆塵者【イクスプロジア】=星船形態”!!』

オレはイクスプロジアを攻撃要塞のような形で発動し、アクノロギアに攻撃する。


グオオオオオオオ!!!!


しかしアクノロギアは多少ダメージを負うが、構わず突っ込んできた。

アゲハ
『マジかよ!!この爆撃の嵐の中突っ込んできやがった!!!』

オレは急いでイクスプロジアを解除し、アクノロギアと距離を取る。しかしアクノロギアは予想を上回るスピードで距離を詰め、攻撃してきた。

ドガッ!!!

アゲハ
『ガハッ!!!』

振り下ろされた前足に地面にたたきつけられ、生まれて初めてまともに食らった一撃に体は一瞬でボロボロになった。



オォオオオオオオオオオオオオ



アクノロギアが勝利を確信したのか雄たけびを上げた。

頭がボーっとする……体もボロボロだ………

けど、意識はある…!!体中痛ぇけど…まだ……動かせる…!!!


アゲハ
『ま…てよ…………まだ…終ってねぇ…ぞ…』

ふらふらと不安定ながらも力を込め、立ち上がる。そんなオレに気付いたのかアクノロギアが振り返る。

オレはここで……負けるわけには……いかねぇんだよ!!!!



アゲハ
『お前はここで……オレが倒す!!!!』



なんとか村人たちの逃げる時間までは確保したが、オレがこのまま逃げてもアクノロギアはオレか村人たちを追って殺すだろう。
ここでこいつを倒す以外…ビランさんやレナたちが生き残る道はねぇ!!!

アゲハ
『アァアアァアアァアアアアア!!!!』

今のオレの力じゃこいつにはどれもこれも通用しねぇ……
日輪“天墜”や“生命の門”【セフィラゲート】並みの威力をもつPSIをまだ扱えないオレが今こいつに勝てる最後の手段。死と隣り合わせの危険な賭け。

けど、ビランさんたちを救うためなら……

オレはどうなってもいい……だから、


ズズズズズズズズ……


オレに力を………



ゴァアアアアアアアア―――


アゲハ
『暴王の月【メルゼズ・ドア】!!!!』

アクノロギアを倒す力を……!!!!

アゲハ
『行くぞォオオォオオオォオオオオ!!!』

オレは暴王の月を手にアクノロギアに接近する。

燃費は悪いしコントロールも効かない、しかも使った後死にかけるという危険な力。だが威力だけはある。
こいつをアクノロギアに叩き込めれば勝機はある!!

マテリアル・ハイを駆使して道を作りアクノロギアにどんどん近づいていく!!

アゲハ
『いける!!』





コォオオオオオオオオ……





オレがそう思った瞬間、アクノロギアは息を吸い込み始めた。

おい……嘘だろ…!?




カァアアアアアアッ




アクノロギアは急ごしらえで多少威力は低くなってあるがブレス攻撃を放ってきた。

オレの手にある暴王の月が魔力を感知し、ブレスを防ぐ。
しかし暴王の月でも喰らいきれずブレスの余波がオレを襲った。



アゲハ
『ぐぁああああああああああっ!!!!』





ドゴォオオオオオン








オレの体に衝撃波が走りオレは吹き飛ばされ、地面に激突した。

アゲハ
『ガッ……ハッ…!!…ち……くしょ…うが…』

くっそ……体が動かねえ……PSIの使い過ぎた事とさっきの暴王の月の影響で頭がガンガンしやがる。

ちくしょう…ちくしょう…!!

オレは……弱い………!!


――ミラ…………ごめん、約束……守れねえかもしれねえ。

オレの意識が朦朧としているとき聞き覚えのある声が聞こえてきた。

レナ
「アゲハおにいちゃん!!!」

その声にオレの意識は覚醒した。

アゲハ
『レナ!!?』

なんとか上体を起こすと避難したはずのレナがなぜかこっちに駆け寄ってきていた。

アゲハ
『バッ…カ野郎!!!何で戻ってきたんだ!!今からでも遅くねぇ!!逃げろ!!』

オレは必死に叫ぶがレナは止まらない。

レナ
「アゲハおにいちゃんがそんなにボロボロになってまで戦ってるのに私だけ逃げるなんてできないよ!!」

なおも駆け寄ってくるレナの背後にアクノロギアの前足が迫る。

アゲハ
『レナァアアアア!!後ろだ、逃げろォッ!!!』

動け!!動けよこの体ァ!!
一人の女の子も救えないのかよ、オレはっ!!
くそっ、くそォオオオオオオオオオ!!!!









トンッ









助からないと思っていたレナの体は誰かに突き飛ばされ、アクノロギアの攻撃の射程範囲外に出た。

レナ
「え……?お…とう………さん?」

レナが呆然と自分の体を突き飛ばした人物を見る。

ビラン
「レナ、例え私がいなくなっても、強く生きていきなさい。私も…そして天国のお母さんもいつまでも君を愛しているよ」

ビランさんは最期にレナに笑いかけ、アクノロギアの前足に……踏み潰された


レナ
「おとうさん……」


アゲハ
『ビラン…さん………』


レナ
「おとうさぁ━━━━━━━ん!!!!」








プツン








アゲハ
『アァアアアァアアァアアアアア!!!!』





憎しみと怒りを暴王(お前)





オレは……すべてを破壊する…暴王となった。


レナ
「アゲハ……おにいちゃん?」

アゲハ
『【レナ……そこら辺に隠れてろ。すぐに終わる】』

そう言うとオレは拳を握った。



パゥゥ……



握った拳を開き、いくつもの黒い球体を出してアクノロギアに手をかざす。

アゲハ
『【“流星”】』



ギュン



オレはその黒い球体から複数の暴王の流星を放った。


ギャアアアア!!!


アクノロギアはバリアを発動するが、今度は防ぎきれず、何発か暴王の流星をくらった。

オレはアクノロギアに反撃する隙を与えず、追撃する。

アゲハ
『【アクノロギア。これ以上オレの目の前でお前に人を殺させはしない。覚悟しろ】』

オレは複数の暴王の月を操り、アクノロギアにぶつけようとする。
アクノロギアはたまらず空へと回避した。

アゲハ
『【逃がすか!!】』

オレはアクノロギアを追いかける。

アクノロギアは追いかけてくるオレを見て息を吸い込んだ。

さっきの急ごしらえのものとは違う。
フルパワーのブレスでオレを殺すつもりだろう。

アゲハ
『【来い、受け止めてやる】』




ドォオオオオオオオオオッ




アクノロギアのブレスが放たれた。


アゲハ
『【暴王の月】』


ズドォォオオオオオオン!!!!


辺り一面が煙に包まれる。
アクノロギアはこの攻撃には耐えられる訳がないと判断したのかどこかに去っていった。


スタッ


アゲハ
『【去っていった……か】』

なんとか防げたようだな。


パキィ……


暴王状態が解除されオレは襲ってくる疲労感にたまらず膝をついた。

レナ
「アゲハおにいちゃん!!!」

アゲハ
『レナ……か?怪我は…ないか?』

オレは今にも手放してしまいそうな意識を必死に保ち、レナの安否を確認する。

レナ
「うん……でも……おとうさんは…」

アゲハ
『っ!!!……………ごめん…オレが…もっと強ければ……』

レナ
「ううん、私が悪いの!!私が…戻ったりしなければ……」

自分を責めるように俯くレナ。

アゲハ
『それは違う。お前が戻ろうが…放っておけばビランさんは助かったんだ。でもビランさんはレナを助けるためにここに…戻ってきた。その勇気を否定するようなことは絶対…言うな。
……それに、お前が戻ってきたお陰でオレは助かったんだ。
お前の行動は…正しかったと思うよ』

レナ
「アゲハ…おにいちゃん……う…うわぁあああぁああああああああ!!!」

レナはオレにすがりつき、大声をあげて泣いた。こんな小さな子供が今まで泣くのを我慢してたんだよな……

アゲハ
『ビランさんの墓……建ててやろうぜ』





オレたちはビランさんの遺体を回収し、近くの崖の上に埋めた。

オレは目の前で手を合わせるレナに話しかける。

アゲハ
『レナ、お前さえよければ妖精の尻尾に来ないか?』

レナ
「え?」

アゲハ
『お前…言ってたろ?大きくなったら魔導士になりたいって。どうだ?』

レナ
「いいの?私、魔法使えないよ?」

アゲハ
『それは魔法の使い方を知らないだけだ、使い方さえ覚えれば使えるようになるよ。お前には高い潜在魔力がある。大丈夫さ』

レナ
「…それなら……入りたい!!私もアゲハおにいちゃんみたいに強くなりたい!!それにおとうさんも喜んでくれると思う。」

レナは強い決意のこもった目をして言った。

アゲハ
『そうだといいな。
………ビランさん、レナは責任もってオレが守ります。だから安心して眠ってください』

オレはビランさんの墓に向かってレナを守ることを誓った。

アゲハ
『レナ、これからお前を瞬間移動【テレポーテーション】で移動させる。しっかりオレに捕まってろ』

レナ
「うん」

アゲハ
『いくぞ』

オレは最後の力を振り絞り、“瞬間移動”【テレポーター】を発動した。

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FAIRY TAIL 31 講談社キャラクターズA ([特装版コミック])
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