小説『FAIRY TAIL PSIを使って大暴れ』
作者:OR()

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第15話 生きたい


━Side ミラ━



━魔導士ギルド 妖精の尻尾━

ミラ
「………………」

アゲハがS級クエストに行って3日目、アゲハは今頃どうしているかな、と考えていると急に胸騒ぎがした。

何なの?この不安な気持ち……
まるで大切な何かを失うような………ダメ、アゲハは必ず帰ってくるって約束してくれた。
私はそれを信じなきゃ。

そして、そんな不安な気持ちを抱えながら数時間が過ぎた。

エルフマン
「姉ちゃん……オレ、なんか嫌な予感が……」

エルフマンも不安らしい。でも……

ミラ
「エルフマン、アゲハはきっと大丈夫よ。必ず帰ってきてくれる。
私たちにできることはアゲハが無事に帰ってくるのを信じること………でしょ?」

これは、エルフマンだけじゃなく自分にも向けた言葉。

エルフマン
「姉ちゃん……そうだよな。漢たるもの、信じることが大切!!」

そう、大丈夫。アゲハならきっと……

そんな時だった。

ギルドの入り口に突然二人の人影が現れたのは。

その人影の正体は、一人の少女と………傷だらけになったアゲハだった。

ミラ
「アゲハ!!!」



━Side Out━




アゲハ
『着いた……のか?』

オレとレナは“瞬間移動”【テレポーター】の力でギルドまで移動してきた。

どうやら無事にたどり着けたようだ……よかった。
もう、意識を保っているのが限界に近くなってきた。

ミラ
「アゲハ!!!」

オレたちがいることに気が付いたのかミラとエルフマンがこっちに駆け寄ってくる。

ミラ
「アゲハ!こんなにボロボロになって……早く治療しないと!!マスタ…『ミラ』アゲハ!?」

アゲハ
『ただいま、それと……この子を、レナを頼む』

そこまで言うと、オレはレナの事をミラに頼んで意識を手放し、床に倒れ込んだ。





━Side ミラ━



アゲハ
『ただいま、それと……この子を、レナを頼む』

そこまで言って、アゲハは床に倒れ込んだ。

ミラ
「アゲハ!!!しっかりして!!」

私は必死にアゲハに訴えかける。しかしアゲハから返事は帰ってこない。

エルフマン
「アゲハ!!無事に帰ってくるって約束したじゃねぇか!!」

私とエルフマンの声でアゲハが帰ってきている事に気づいたのかギルドのメンバーが駆けつけてきた。
みんな傷だらけのアゲハに驚いていた。

ナツ
「おい、アゲハ!!!しっかりしろよ!!」

グレイ
「こいつがこんなになるなんて一体何があったんだ!?」

カナ
「私、アゲハが怪我をしたところさえ見たことがないのに、こんな重体になって帰ってくるなんて……」

マカロフ
「どいてくれ、ワシが容態を見る」

マスターがみんなをどかせてアゲハの様子を見る。

マカロフ
「これは、すぐにポーリュシカを呼ぶ必要があるな」

マスターが少し焦ったような声で言った。

ミラ
「え……?」

そんなに………ひどい状態なの……?

ナツ
「どういう事だよ、じっちゃん!!!」

マカロフ
「かなり深刻な状態ということじゃ。外傷はもちろん内部にもダメージを受けておる」

グレイ
「それって……」

マカロフ
「うむ、PSIを使いすぎたようじゃ。事は一刻を争う、ワシはすぐにポーリュシカを呼んでくるからお主らはアゲハを医務室に運んでおけい!!」

その言葉を聞いてナツがすぐに動いた。
ナツには珍しくそーっとアゲハを医務室へと運んでいった。


私はアゲハが深刻な状態だとマスターが告げたときからほとんど何も聞こえなくなってしまった。


アゲハが………深刻な状態……
一刻を争う……?
また………また……大切な人を失ってしまうの?
嫌、そんなの……

ミラ
「いやぁああああああああ!!!!」

エルフマン
「姉ちゃん!!?」

カナ
「ミラ!!?」

ミラ
「いやっ!!そんなの…!!!」

もう大切な人がいなくなるなんて……嫌っ!!!!

アゲハっ……アゲハァアアアア!!!!

私はもう何が何だか分からなくなってとにかくめちゃくちゃに叫び続けた。


ぎゅっ


そんな錯乱した私は、自分の手が握りしめられたのを感じた。

誰………?

顔を上げて見てみると私の手を握っていたのは、アゲハがギルドに帰ってきたとき一緒にいた少女だった。

レナ
「大丈夫です、アゲハおにいちゃんは言ってました。
『もしかしたら、ギルドに着いたらオレは気絶するかもしれない。でも心配しなくていい、少しの間 眠るだけだから』って。
私も不安だけど……アゲハおにいちゃんは絶対大丈夫って言ったから……だから信じて待っていましょう」

まっすぐな笑顔を浮かべながら少女は言った。

ミラ
「あなたは………?」

レナ
「レナっていいます」

ミラ
「レナ………ありがとね。あなたのお陰で自分を取り戻せた。
そうよね、私たちがアゲハを信じないと!」

グレイ
「そうだよな、オレたちが信じなきゃ治るもんも治んねえぜ!!」

カナ
「そうだね!!」

ナツ
「ああ!!」

レナに感謝しなきゃね………
この子のお陰でギルド全体の雰囲気が明るくなった。私も自分を取り戻せた。

マカロフ
「ポーリュシカをつれてきたぞ!!!」

そんな中、マスターがポーリュシカさんを連れてきた。

ポーリュシカ
「今から治療を始める。入ってくんじゃないよ」

ミラ
「待って!!」

私の声に医務室に入ろうとしたポーリュシカさんが振り返る。

ポーリュシカ
「何だい?」

ミラ
「私にも看病させてください」

黙って待ってるだけなんてとてもできない。

ポーリュシカ
「駄目だ。邪魔なだけだからね」

ミラ
「手伝いだったら何でもやります。お願いします!!」

ポーリュシカさんは数秒私の顔を見た後、口を開いた。

ポーリュシカ
「………仕方ない、あんただけだよ。それと辛気くさい顔はしないこと。いいね?」

ミラ
「はい!!」

私はポーリュシカさんと共に医務室へと向かった。



━Side Out━




アゲハ
『あれ…オレ、何でこんな処にいるんだっけ…?』

オレがギルドで意識を手放した後、最初に視界にに入った光景は真っ暗な世界にベッドがひとつあるだけの空間だった。
オレはそのベッドに横たわっていたようだ。

アゲハ
『オレ……死んだのか?いや、違うな。
もしオレが死んだんなら元の世界のオレの部屋に戻るってあの手紙に書いてあったし……』

それじゃあここはどこだ?
周りを見渡しても答えは出ない。

アゲハ
『オレの精神世界……ってやつか?
そういえばPSYREN原作のアゲハも最終回で似たような世界にいたっけ……』

確か原作では目覚めるのに半年かかったんだっけ………
じゃあ自然に起きるまで待つしかない……かぁ。

オレはとりあえずベッドに寝ころがる事にした。

アゲハ
『そういえばレナの奴、ちゃんと妖精の尻尾に入れたかな?
それと………ミラ、怒ってんだろうな……』

横になってみると色々な思いが頭を駆け巡ってきた。

ミラ、心配かけちまったよな。絶対無事に帰るって約束したのにあの様だもんな。
早く起きて安心させてやんないと……
それにギルドのみんなにも迷惑かけたんだろうな……ちゃんと謝らねぇと。
あと、ビランさんにレナの事はオレが守る、なんて言っておいて情けねぇなオレ。

みんなに伝えたいことがまだまだたくさんある………
未練たらたらだな、オレ。


……………最初はいつ死んでもいい、って思ってたんだけどな。
死んでも元の世界に戻るだけだし、あの手紙に書いてあった通りコンティニューのないRPGゲームのような感覚でいた。
それがいつの間にか、現実の世界よりもこの世界の方が大切になっていた。
この世界の仲間が何よりもかけがえのないものになっていたんだ。


生きたい…………!!
あいつらと、ギルドの仲間たちともっともっと多くの時を過ごしていたい!!

そんな時、頭上から一筋の光が下りてきた。

アゲハ
『な、何だァ!!?』

いきなり下りた光にビックリし、オレは体を起こす。

「━━━━━━━」

何だ?誰かの声が聞こえた気がした。

アゲハ
『声?一体誰の………』

オレが聞こえてきた声を疑問に思っているとまた新たな声が聞こえた。

ナツ
「アゲハ━━━━━!!!」

アゲハ
『ナツ!?』

グレイ
「さっさと起きやがれ━━━!!!」

ハッピー
「起きて━━━━!!アゲハ━━!!!」

アゲハ
『グレイ、ハッピー……』

エルザ
「起きろ!!この寝坊助アゲハ!!!」

カナ
「さっさと起きなさいよ!!」

レビィ
「アゲハ━━!!!起きなさ━━━い!!」

エルフマン
「ここで起きないなら漢じゃない!!」

アゲハ
『エルザ、カナ、レビィ、エルフマン……』

仲間の声が……次々と聞こえてくる。

レナ
「アゲハおにいちゃん、約束、ちゃんと守ってよね」

アゲハ
『レナ………』

そうだ、約束……したんだ。約束は絶対に……守らないと……


ミラ「起きて、アゲハ」



パァアアアア

最後にミラの声が聞こえた瞬間、オレの意識は浮上した。

-16-
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