小説『FAIRY TAIL PSIを使って大暴れ』
作者:OR()

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第23話 ハルジオン港にて


━ハルジオンの街━


アゲハ
『おい、ついたぞ。早く起きろ、ナツ』

オレは列車の中でグロッキーになっているナツに声をかける。

ナツ
「ま…待ってくれ。ちょっと休ませて…」

ハッピー
「早くしないと列車出ちゃうよ。それに情報が確かならこの街に火竜がいるハズだよ、早く行こ」

ナツ
「お、おぉう……」

ダメだこりゃ。
早く行こうと促すハッピーだがナツは乗り物酔いで既にフラフラになっている。

こりゃ自力で歩くのは無理そうだな。

アゲハ
『仕方ねぇ、担いでいくか』

ナツ
「や、やさしくしてくれ。ウップ……」

アゲハ
『絶対ぇ吐くなよ、吐いたら殺す』

ナツ
「あ゛い」

オレはナツを肩に担いでハッピーと共に列車を降りた。

オレたちは今、火竜【サラマンダー】がいると言う情報を頼りに港街ハルジオンに来ている。

竜がこんな街にいるわけないけどな。


オレがこの世界に来てからちょうど一年が経った。そんな時期にナツが火竜の情報を頼りにハルジオンに行く。
この状況はもうあれしかねぇだろ。
というわけで今日から原作突入ってことだ。
これから忙しくなるな……


━Side ルーシィ━

ルーシィ
「ちぇっ1000Jしかまけてくれなかったー。あたしの色気は1000Jか━━━っ!!!」

あたしの名前はルーシィ。
さっき魔法屋で白い小犬【ホワイトドギー】っていう魔法を買ったんだけどこれが意外に高くって。
お色気作戦でまけてもらおうとしたが失敗してしまった。
ムカついたから近くに置いてある看板に八つ当たりしてやった。
街の人がビクついてるけど気にしない。

ルーシィ
「?」

街を歩いていると前の方から黄色い歓声が上がっているのに気がついた。

女の子が広場に集まっている。

ルーシィ
「何かしら?」

あたしが首をかしげていると、

「この街に有名な魔導士様が来てるんですって!!」

「火竜【サラマンダー】様よ━━━っ!!」

ものすごい勢いで女の子たちが黄色い声援のする方に走っていった。

ルーシィ
「火竜【サラマンダー】!!?あ…あの店じゃ買えない火の魔法を操るっていう…この街にいるの!?」

見れば女の子たちがキャーキャー騒いでいる。

ルーシィ
「へぇ━━すごい人気ねえ。かっこいいのかしら」

気になったのであたしも火竜【サラマンダー】を見に行くことにした。
かっこいい人が気になるのは仕方ないわよね、あたしも女の子だもん。


━Side Out━


━アゲハ Side━


ナツ
「アゲハぁ━━、なんでトリックルームでここまで連れて来てくんなかったんだよ━━」

列車を降りた後、なんとか調子を取り戻したナツがトリックルームで自分を連れて来てくれなかったことに文句を言ってきた。

アゲハ
『余計な力は使いたくないし、それにトリックルームは目立つんだよ』

そう、いきなり謎の箱が出現して中から人が現れるなんて騒ぎになるに決まってる。

アゲハ
『まあ機嫌直せ。メシでも奢ってやるから』

ナツが恨みがましく睨んでくるので、メシを奢ってやることにした。

ナツ
「ホントか!?サンキューアゲハ!!!オレら今金欠だったんだ!!」

ハッピー
「現金だね、ナツは」

メシと聞いて元気になったナツにハッピーが呆れる。

ナツ
「それはそうと、ハッピー、アゲハ。火竜【サラマンダー】ってのはイグニールの事だよなぁ」

ハッピー
「うん、火の竜なんてイグニールしか思い当たらないよね」

ナツ
「だよな。やっと見つけた!ちょっと元気になってきたぞ!」

ハッピー
「あい」

アゲハ
『そりゃよかった』

ハルジオンの街道を歩いているとなにやら人だかりが出ていた。

「「火竜【サラマンダー】様━━!!」」

ナツ
「おっ!!噂をすればなんたらって!!
行くぞハッピー!!」

ハッピー
「あい」

アゲハ
『あ、おい!!』

ナツ
「イグニール!!」

ナツとハッピーは既に騒ぎの中心へと走っていった。

アゲハ
『とりあえず追いかけるか』

オレはナツたちを追って走り出した。


━Side Out━



━Side ルーシィ━


な…な…な…何? このドキドキは!!? ちょ、ちょっと…あたしってばどうしちゃったのよ!!!

火竜
「ははっ、まいったな。これじゃ歩けないよ」

女の子たちの黄色き声援の中、中心でたたずむ一人の男。

その人を見た瞬間あたしの胸は音を立てて鼓動し始めた。

はうぅ!!!!

ドキドキしているとチラ、とこちらを見た彼と目があう。

有名な魔導士だから? だからこんなにドキドキするの!!?

ナツ
「イグニール!! イグニール!!」

なんか声が聞こえるけど気にならない。

これってもしかしてあたし・・・

あたしが彼に近づこうとした瞬間、

ナツ
「イグニール!!!」

アゲハ
『おい、待てって言ってんだろ、ナツ!!』

大きな声を出して桜色の髪をした少年と藍色の髪の少年が人の輪の中に入ってきた。



━Side Out━




━Side アゲハ━


人の並みを掻き分け、中心へと押し入ったオレたち。

ナツ
「イグニール!!!」

ナツが父親の名前を叫ぶが、目の前にいたのは知らない男。確かボラ……とか言う名前だったか?

ナツ
「誰だオマエ」

ボラ
「!!!」

ナツが自分を知らないことにショックを受けた様子のボラ。
そんなに自信があったのか……

ボラ
「火竜【サラマンダー】と言えば わかるかね?ってはやっ!!」

キリ、とカッコつけて名乗るボラだが人違いだとわかったオレたちは早々にその場を離れていた。

「ちょっと!アンタ失礼じゃない?」

「そうよ!!火竜【サラマンダー】様はすっごい魔導士なのよ!!」

「あやまりなさいよ!!」

ナツ
「お、お、なんだオマエら」

ナツが怒った女たちに首を掴まれ、ボラのもとへと引き戻された。

オレはこの展開を知っていたので少し離れたところにハッピーと避難していた。

ボラ
「まあまあその辺にしておきたまえ。彼とて悪気があった訳じゃないんだからね」

ボラがナツに悪気はないと女たちをなだめる。

そんなボラに女たちは黄色い声援をあげる。

ん?一人だけ声援をあげてないやつがいるな。あ、あれがルーシィか……

女たちの黄色い声に答えつつ、ボラはサインを書き出し、ナツにひざまずく

ボラ
「僕のサインだ、友達に自慢するといい」

またも決め顔をして言うボラ 。

ナツ
「いらん」

そしていらないと一蹴するナツ。

ハハハハハ!!断られてやんのボラの奴!!
ザマァ━━!!

「「どっか行きなさいっ!!!」」

ナツ
「うごっ」

女たちに蹴り出されたナツはオレの足元まで吹っ飛んだ。

アゲハ
『お帰りー』

ハッピー
「人違いだったね」

倒れたナツに声をかけるオレたち。

ボラ
「君達の熱い歓迎には感謝するけど……僕はこの先の港に用があるんだ。失礼するよ」

パチン

そう言ってボラは指をはじき、炎を出して舞い上がる。

ボラ
「夜は船上でパーティをやるよ。みんな参加してくれるよね?」

「「もちろんです?」」

周りの女たちを誘うボラ。たしか奴隷にするためだったっけ?船上パーティーを開いたのは。
原作通りに進めば後でナツに潰されるし、放っておいても大丈夫か。どこに船があるか知らないし……

それにしてもショボい炎だな。なんで偽物にしてもあの程度で火竜って呼ばれてんだ?

ナツ
「なんだアイツは」

アゲハ
『ただのいけすかない雑魚だろ』

ルーシィ
「本当いけすかないわよね」

ナツ
「ん?」

後ろから金髪をくくった女の子、(多分、いや99%合ってると思うけど)ルーシィが声をかけてきた。

ルーシィ
「さっきはありがとね」

ナツ&ハッピー
「「?」」

アゲハ
『チィース』

ナツとハッピーは首をかしげ、オレは何か反応を返さねぇと、と思って挨拶した。




━レストラン━


ナツ
「あんふぁいいひほがぶぁ」

ハッピー
「うんうん」

アゲハ
『もっと落ち着いて食えよ。メシは逃げたりしねぇんだから』

オレたちは今、ルーシィの奢りということでレストランで料理を食べている。

つかナツの奴ホント食い方汚ぇな。いろいろ飛んでんぞ、主にルーシィの方に。

ルーシィ
「あはは……ナツとハッピーだっけ?ゆっくり食べなって。なんか飛んできてるし。アゲハも遠慮せずに食べて。
(てかお色気代パーね……)」

アゲハ
『ああ、サンキュ』

ルーシィが苦笑い気味に言ってくる。
ボソッと呟いた言葉をオレは聞き逃さなかった。
お色気代ってたしか1000Jだったよな。お色気、向いてないんだったな、ルーシィ。

さっきのボラの使っていた魅惑【チャーム】という魔法にかかりかけていたのをナツが飛び込んだお陰で正気に戻れたと説明するルーシィ。
そのお礼にとオレたちをレストランに連れてきたらしい。
てか原作読んでるから知ってたけど。

ルーシィ
「こー見えて一応魔導士なんだーあたし」

アゲハ
『へぇ、そうなんだ』

一応知らないフリはしないとな。

ナツ
「ほぼぉ」

ナツは未だに料理を食い続けている。ホントよく食うな、こいつ。

ルーシィ
「まだギルドには入ってないんだけどね」

アゲハ
『ああ、じゃあルーシィは今フリーの魔導士なのか』

ルーシィ
「うん、そうよ。てかアゲハ詳しいわね。もしかしてアゲハも魔導士?」

嬉しそうな声を挙げるルーシィ。

どう答えるべきかな。原作通りに進めるにはオレが妖精の尻尾に所属していることは言わない方がいいか。

アゲハ
『うんにゃ、オレはちげぇよ。ダチが魔導士なんだ』

とりあえずごまかすオレ。
それにオレ魔導士って言うよりサイキッカーだからな。ウソは言ってない。

ルーシィ
「へぇー、そうなんだ。
あ、あたしね、入りたいギルドがあるんだ━
あたしの入りたいトコはもうすっごい魔導士がたくさん集まるところで、入りたいんだけどきっと厳しいんだろうなぁ……」

ナツが何か反応を返すが勝手に魔導士の話なんてわからないか、と言って話を進めるルーシィ。

ルーシィ
「でも、絶対そこのギルドに入るんだぁ。あそこなら大きい仕事たくさんもらえそうだもん」

よくしゃべるなぁ━
よく息が続くもんだ。感心するぜ。

ナツ
「ほ……ほォか…」

ハッピー
「よくしゃべるね」

ナツたちもオレと全く同じ反応をしている。
ギルドでもこんなに喋るやついないからな。

オレらがルーシィのしゃべる量の多さに驚いているとルーシィが自分の疑問について聞いてきた。

ルーシィ
「そういえばあんたたちは誰か探してたみたいだけど………」

ハッピー
「あい、イグニール」

ハッピーが答える。

ナツ
「火竜【サラマンダー】がこの街に来るって聞いたから来てみたはいいけど別人だったな」

ハッピー
「火竜【サラマンダー】って見た目じゃなかったんだね?」

アゲハ
『明らかに偽もんだったな』

ルーシィ
「見た目が火竜【サラマンダー】って……どうなのよ、人として……」

ルーシィがもっともな疑問を口にする。

ナツ
「ん? 人間じゃねぇよ?イグニールは本物のドラゴンだ」

ルーシィ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」

ナツが言うと、ルーシィは驚愕の表情を浮かべる。

スッゲェ顔してんな。原作でもそうだったけど、やっぱルーシィのリアクションっておもしれぇ。

ルーシィ
「そんなの街の中にいるハズないでしょー!!!」

響き渡るルーシィの怒声。

ナツ&ハッピー
「「っ!?」」

驚愕の顔に変わるナツとハッピー。

ルーシィ
「オイイ!!!今気づいたって顔すんな━━!!」

おお!!ルーシィの生ツッコみだ。やっぱキレがあんな。しかも早い。もはやプロの領域だな。


ルーシィ
「さてと、あたしはそろそろ行くけど…ゆっくり食べなよね」

その後すこし話していたら、ルーシィが金を置いて立ちあがる。

ナツ&ハッピー
「ぐもっ」

ナツとハッピーの顔にルーシィがビクる。

ナツ
「ごちそう様でしたっ!!!」

ハッピー
「でした!!!!」

ナツとハッピーはそのまま出口に向かうルーシィに床に手をついて頭を下げた。

アゲハ
『やめろ!!みっともねぇ!!
ホントにわりぃな、ルーシィ』

ルーシィ
「い…いいのよ、あたしも助けてもらったし…おあいこでしょ?ね?」

ナツ
「あまり助けたつもりがないトコがなんとも…」

ハッピー
「あい……はがゆいです…」

ナツ
「そうだ!!これやるよ」

そう言ってナツが差し出したのはさっきもらった火竜【サラマンダー】ことボラのサインだった。

ルーシィ
「いらんわっ!!!」

アゲハ
『そりゃそうだろうな……』

ナツの手からサインを叩き落とし、ルーシィはそのまま店を出ていった。

ナツ
「んじゃ、メシの続きと行こうぜ」

ハッピー
「あい」

アゲハ
『まだ食うのかよ……』

結局オレはルーシィが店を出た後もナツの食事に付き合うのだった。


━夜━


ナツ
「ぷはぁー!食った食った!!」

ハッピー
「あい」

アゲハ
『お前ら食いすぎなんだよ。ルーシィが残してってくれた金額を軽くオーバーするまで食いやがって』

結局オレが足りない分を払うはめになった。

オレらが店を出ると既に辺りは暗くなっていた。
オレらがいた店は街の高いところに建っているので、見晴らしがよく海岸まで見渡せる。

ふいに、ハッピーが港の方を見て呟いた。

ハッピー
「そいや火竜【サラマンダー】が船上パーティーやるって言ってたけどあの船かなぁ」

ハッピーが言うように、港の方を見ると海の上に船が浮かんでいた。

えーと、たしかルーシィが騙されてあの船に乗るんだったっけ?

ナツ
「うぷ……気持ちワリ……」

アゲハ
『想像だけで酔えるなんて、お前どんだけ乗り物苦手なんだ?』

オレがナツの乗り物の苦手さ加減にあきれていると、二人の女が同じように船を見て話をしていた。

「見て見てー!! あの船よ、サラマンダー様の船。あーん、私もパーティー行きたかったぁ」

どうやら偽サラマンダーのボラについて話しているらしい
とは言ってももう一人は知らないようで、

「サラマンダー?」

「知らないの? 今この街に来てるすごい魔導士なのよ」

ここまでならよかったんだけどな、

「あの有名な妖精の尻尾の魔導士なんだって」

ナツ&amp;amp;ハッピー
「「!!!」」

これはナツには聞き捨てならねぇだろうな。
ま、オレもだけど……

ナツ
「妖精の尻尾?」

ナツは疑問符を浮かべて呟く。

ナツは改めて海に浮かんでいる船を見る。
するとナツはまたも想像だけで酔いそうになる。

締まらねぇなあ

アゲハ
『で?どうするよ、ナツ?』

ナツ
「決まってんだろ!!」

アゲハ
『だよな』

オレたちは海に浮かぶボラの船を見据えた。



━Side Out━





━Side ルーシィ━


ボラ
「ルーシィか……いい名前だね」

ルーシィ
「どぉも」

満面の笑みで答えるあたし。
あたしは今、昼間の約束どおりサラマンダーのパーティーに来ている。

正直こんな奴のパーティーになんか来たくなかったけど妖精の尻尾に入れてくれるって言うんなら話は別。
妖精の尻尾に入るまではあのバカ男に愛想よくしとかないとね。

ボラ
「まずはワインで乾杯といこう」

そう言ってサラマンダーはワインをグラスに注ぐ。
けれど……

ルーシィ
「他の女の子たち放っておいていいの?」

あたしは自分以外がここにいないことを疑問に思い、サラマンダーに聞いてみる。

他の子たちは外でパーティーをしているようだ。

ボラ
「いーのいーの。今は君と飲みたい気分なんだよね」

サラマンダーは笑いながら指をはじくと、ワインが粒状になって浮かび上がる。

ボラ
「口をあけてごらん。ゆっくりと葡萄酒の宝石が入ってくるよ」

サラマンダーは得意気に笑ってそう言った。

うざ━━━━━っ!!!
でもここはガマンよ!!ガマンガマン!!

妖精の尻尾に入るため、逆らわない方がいいと思い、口を開ける。
しかしワインが入りかけたところで、

ルーシィ
「!」

あたしは立ち上がって手を振り、ワインを弾いた。

ルーシィ
「これはどういうつもりかしら? 睡眠薬よね」

ワインに睡眠薬が入っていたのに気づいたあたしはワインを弾き飛ばす。

ボラ
「ほっほーう、よく分かったね」

ルーシィ
「勘違いしないでよね。あたしは妖精の尻尾には入りたいけど、アンタの女になる気はないのよ」

あたしがそう言い放つとサラマンダーは急に態度を変えた。
そして気持ち悪い笑みを浮かべ、

ボラ
「しょうがない娘だなぁ。素直に眠っていれば痛い目みずに済んだのに……」

ルーシィ
「え?」

あたしがその言葉を疑問に思っていると、

ガシッ ガシッ

ルーシィ
「!!?」

後ろのカーテンが開き、人相の悪い男たちに両腕を拘束された。

ルーシィ
「な、何なのよコレ!!!」

あたしは必死に叫んで振りほどこうとするけど腕の拘束は外れない。
サラマンダーがあたしのあごをつかんできた。

ボラ
「ようこそ、我が奴隷船へ。ボスコに着くまでおとなしくしていてもらうよ、お嬢さん」

ルーシィ
「えっ!!?」

サラマンダーが信じられないことを言ってきた。

ルーシィ
「ちょっと……妖精の尻尾は!!?」

ボラ
「言ったろ? 奴隷船だと。はじめから商品にするつもりで君を連れ込んだんだ。あきらめなよ」

ルーシィ
「そんな……!!!」

「サラマンダーさんも考えたよな。魅了【チャーム】にかかってる女どもは自らケツをふって商品になる」

「この姉ちゃんはチャームがきかねぇみてぇだし……少し調教が必要だな」

「へっへっへっ」

や…やだ……嘘でしょ…………
なんなのよコイツ…!! こんなことする奴が……

あたしが呆然としていると、サラマンダーはあたしの太ももに足を伸ばし、門【ゲート】の鍵を奪う。

ボラ
「ふーん。ゲートの鍵……星霊魔導士か」

「星霊?なんですかいそりゃ。あっしら魔法の事はさっぱりで」

ボラ
「いや、気にする事はない。この魔法は契約者以外は使えない。
つまり僕には必要ないって事さ」

ポイ

サラマンダーはそう言ってあたしの鍵を窓から投げ捨てた。

こんな…こんなことをする奴が……!!
これがフェアリーテイルの魔導士か!!!

自分のあこがれたギルドの正体がこんなやつらだったなんて……!!

あたしはサラマンダーを睨む事しかできなかった。

ボラ
「まずは奴隷の烙印を押させてもらうよ。ちょっと熱いけどガマンしてね」

男はそういって奴隷の烙印をあたしに押しつけようとする。

魔法を悪用して………

人を騙して…………

奴隷商ですって!!?

ルーシィ
「最低の魔導士じゃない」

バキッ!!

その瞬間、天井に穴が空き、何かが振ってきた。

ズシィンっ!!

振ってきたのは昼間に会ったマフラーをした桜色の髪の少年。

ボラ
「ひ・・昼間のガキ!!?」

ルーシィ
「ナツ!!?」

サラマンダーはナツの登場に驚く。
あたしはナツが来たことで両腕の拘束が外れ自由になった。

ナツ
「おぷ・・・・駄目だ、やっぱ無理」

ルーシィ
「え━━━っ!!? かっこわる━━っ!!!」

ナツは壁に倒れ掛かって吐き出した。

何なの、一体!?助けに来たんじゃないの!?
あれ、そういえば……

「ナツ、アゲハは!?」

そう、昼間会ったもう一人の少年がいない。

ハッピー
「アゲハなら後で来るけど、ルーシィこんなところで何してるの?」

ナツが開けた穴から声が聞こえてきた。

ルーシィ
「ハッピー!!?」

見上げると羽の生やしたハッピーが空を飛んでいた。

ルーシィ
「騙されたのよ!!! フェアリーテイルに入れてくれるって…それで……あたし……」

あたしが話をかいつまんで伝えると、ナツがピクッと動く。

ルーシィ
「てか…アンタ羽なんてあったっけ?」

さっきまで羽なんて無かったはず。

ハッピー
「細かい話は後回しっぽいね」

ハッピーはあたしの質問には答えずあたしの体を尻尾を使って持ち上げた。

ハッピー
「逃げよ」

ナツが開けた天井にに向かってハッピーが飛ぶ。その途中、未だに船酔いで苦しんでいるナツが目に入った。

ルーシィ
「ちょっ…ナツはどーすんの!!?」

あたしは焦ってハッピーに言う。
するとハッピーは、

ハッピー
「二人は無理」

と言い切った。

ルーシィ
「あら…」

ボラ
「逃がすかぁっ!!!」

サラマンダーがあたしたちに向けて火を放つ。

ハッピー
「おっと!」

ハッピーは旋回して火を避ける。

ボラ
「ちっ、あの女を逃がすなっ!!評議院どもに通報されたらやっかいだ!!!」

「はいっ!!!」

ドン ドドン ドドン

ハッピー
「わっ 銃だ!!」

ルーシィ
「きゃあああっ!!!」

焦った男たちは今度は銃で攻撃してきた。

ハッピー
「ルーシィ、聞いて」

ハッピーが銃弾の嵐の中話しかけてくる。

ルーシィ
「何よこんな時に!!」

あたしが問うと、

ハッピー
「変身解けた」

ハッピーの羽が消えてしまった。

ルーシィ
「くそネコ━━━!!!」

ヒュ━━━━━ … バスッ

ルーシィ
「あ、あれ?」

海にまっ逆さまに落ちていくはずだったのに途中で誰かに抱き止められた。

アゲハ
『よっ!!大丈夫か、ルーシィ、ハッピー』

ルーシィ
「アゲハ!!?」

あたしとハッピーを受け止めていたのはアゲハだった。

え……!? ここって空中よね…!?ど、どうなってるの!?

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FAIRY TAIL 31 講談社キャラクターズA ([特装版コミック])
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