小説『FAIRY TAIL PSIを使って大暴れ』
作者:OR()

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第33話 DEAR KABY


エバルーをぶっ飛ばしたオレたちは、依頼人のカービィさんの家(借り物)に向かっていた。

ルーシィ
「この本はね……エバルー公爵がケム・ザレオンに無理矢理書かせた自分が主人公の冒険小説なのね。本当……構成も文体もひどくて、とてもじゃないけどケム・ザレオンほどの文豪が書いたとはとても思えなかったわ」

ルーシィはナツたち“日の出【デイ・ブレイク】”について気づいたことを語っている。

ルーシィ
「だから秘密があると思ったの。この本にはね!」

ナツ
「?」

ナツはワケわからん、って顔してる。そりゃそうだよな。ナツに本の話なんて理解できねぇか。

アゲハ
『カービィさんにとって良い秘密、ってことか?』

ルーシィ
「もちろん!!」

ルーシィは笑顔で答えた。




そしてカービィさんの元に着いてルーシィが本を差し出した。

カービィ
「こ…これは一体……どういう事ですかな?私は確か破棄してほしいと依頼したハズです」

目の前のデイ・ブレイクに驚くカービィさん。

ルーシィ
「破棄するのは簡単です。カービィさんにだってできる」

ルーシィがそう言うと、カービィさんはデイ・ブレイクをひったくった。

カービィ
「だ…だったら私が焼却します。こんな本…見たくもない!!!」

ルーシィ
「あなたがなぜこの本の存在を許せないのかわかりました」

カービィ
「!!」

ルーシィ
「父の誇りを守るためです。あなたはケム・ザレオンの息子ですね」

ナツ
「うおっ!!!」

ハッピー
「パパ━━━━━━━━━!!?」

カービィ
「な……なぜ……それを…」

ルーシィ
「この本を読んだことは?」

カービィ
「いえ…父から聞いただけで読んだ事は……しかし読むまでもありません。駄作だ。父が言っていた」

ナツ
「だから燃やすって?」

カービィ
「そうです」

ナツ
「つまんねぇから燃やすってそりゃああんまりじゃねーのか!!?お?父ちゃんが書いた本だろ!!!」

アゲハ
『ナツ…言っただろ?誇りを守るためだったんだよ。カービィさん、アンタの父親は“日の出【デイ・ブレイク】”を書いたことを恥じていた。アンタはそう思ってるんだろ?』

ルーシィ
「アゲハ、アンタ何でそんな事……」

アゲハ
『ワルいとは思ったけどな。カービィさんの話には裏があると思ってお前らの安全の為にも時読の右手【サイコメトリー・ライト】で記憶を覗かせてもらったんだ』

本当は原作読んでたから最初から知っていたけどな。辻褄合わせのためにカービィさんの髪の毛から記憶を読み取ったことを教える。
ついでにカービィさんの過去についても話した。

アゲハ
『アンタはケム・ザレオンが死んだ後もずっと憎み続けていた。だけど今はもう違うんだよな?』

カービィ
「ええ、年月がたつにつれて憎しみは後悔へと変わっていった…………私があんなことを言わなければ父は死ななかったかもしれない…と」

カービィさんはポケットからマッチを取り出しながら言葉を紡ぐ。

カービィ
「だからね……せめてもの償いに父の遺作となったこの駄作を…たちの名誉の為、この世から消し去りたいと思ったんです」

ジッ

マッチに火をつけ、本に近づける。

カービィ
「これできっと父も……」

ルーシィ
「待って!!」

ルーシィが叫んだ瞬間、デイ・ブレイクが光出した。

アゲハ
『間に合ったか』

カービィ
「な…何だこれは…!!!」

カービィさんが目を見開き驚いている。てか初めて見たよ、カービィさんの目が開いてるところ。

ハッピー
「文字が浮かんだ━━━━っ!!!!」

ハッピーの言う通り、本を見るとタイトルの文字が浮かんでいる。

ルーシィ
「ケム・ザレオン…いいえ…本名はゼクア・メロン。彼はこの本に魔法をかけました」

カービィ
「ま……魔法?」

タイトルの文字が並び代わり、タイトルが DAY BREAK から DEAR KABY へと変わった。

カービィ
「DEAR KABY!!?」

ルーシィ
「そう……彼のかけた魔法は文字が入れ替わる魔法です。中身も、全てです」

本が開き、文字が飛び出る。

ナツ
「おおっ!!!」

ハッピー
「きれー」

アゲハ
『大したもんだな』

この光景にオレたちはそれぞれ感嘆の声をあげる。

ルーシィ
「彼が作家をやめた理由は……最低な本を書いてしまった他に……最高の本を書いてしまった事かもしれません…カービィさんへの手紙という最高の本を」

ナツ
「すげェ!!!」

ハッピー
「文字が踊ってるよ!!」

アゲハ
『カービィさん……アンタの父親はスゲェ人だよ……』


やがて文字がすべて本のなかに収まり、一冊の本として完成した。

ルーシィ
「それがケム・ザレオンが本当に残したかった本です」

カービィ
「父さん…私は……父を……理解できてなかったようだ………」

本を手に取り、カービィさんは目に涙を浮かべて言った。

ルーシィ
「当然です。作家の頭のなかが理解できたら、本を読む楽しみがなくなっちゃう」

カービィ
「ありがとう。この本は燃やせませんね……」

アゲハ
『ならオレたちも報酬はいらねーな』

ナツ
「そうだな」

ハッピー
「あい!!」

カービィ
「え?」

ルーシィ
「はい?」

カービィさんとルーシィは理解できない、といった顔をしている。

アゲハ
『依頼は“本の破棄”だ。オレたちはそれを達成してねーからな』

カービィ
「い……いや……しかし…そういう訳には…」

ルーシィ
「そ…そうよ…せっかくの好意なんだし…いただいておきましょ」

カービィさんの言葉に便乗するルーシィ。空気読めよ。

ハッピー
「あ━━━ルーシィがめつー!!!さっきまでいい事いってたのに全部チャラだ」

ルーシィ
「それはそれ!!」

ナツ
「いらねぇモンはいらねぇよ。かーえろっ。メロンも早く帰れよ、じぶん家」

そう言ってナツは玄関から帰っていった。

カービィ
「!!!」

ルーシィ
「え?」

アゲハ
『カービィさんアンタたちが無理して金を払う必要なんてないぜ。この家も借り物なんだろ?こんな事しなくてもいつでも依頼待ってるから、また依頼があったらよろしくな。
ほら行くぞ、ルーシィ』

オレは渋るルーシィをつれて外に出た。



━帰り道━


オレたちはトリックルームしても騒がれない場所に移動するため、歩いている。

ルーシィ
「信じらんな━━━い!!!普通200万チャラにするかしら━━━!!!てか帰りは歩き?」

ナツ
「依頼達成してねーのに金もらったら妖精の尻尾の名折れだろ」

ハッピー
「あい」

ルーシィ
「全部うまくいったんだからいいじゃないのよぉっ!!!はぁー…あの人たちお金持ちじゃなかったのかぁ……作家の息子のくせに何でよぉー」

明らかに落ち込んでいるルーシィ。見るに耐えんな。ま、特に励ましたりはしないけど(笑)

ルーシィ
「あの家も見栄を張るために友人に借りたって言ってたし……そんなことしなくても依頼引き受けてあげたのにね」

アゲハ
『ホントかよ?』

ルーシィ
「引き受けたわよ!!!多分ね」

アゲハ
『多分って言ったか?今……』

オレのツッコみを無視し、ルーシィはオレたちに質問を問いかける。

ルーシィ
「てゆーかアンタたち何で家……気づいたの?」

ナツ
「ん?あいつ等の臭いと家の臭いが違った。普通気づくだろ」

ルーシィ
「あたしは獣じゃないから」

アゲハ
『オレは記憶を覗いたって言っただろ?その時にカービィさんの家も見たからな。それで分かった』

ルーシィ
「なるほどね」

ルーシィは納得した様子だった。

アゲハ
『それにしてもケム・ザレオン…すげえ魔導士だな』

ハッピー
「あい…30年も前の魔法が消えてないなんて相当の魔力だよ」

ルーシィ
「若い頃は魔導士ギルドにいたみたいだからね。そしてそこでの冒険の数々を小説にしたの。憧れちゃうなぁー」

ナツ
「やっぱりなぁー」

ルーシィ
「ん?」

あ、ナツが悪い顔してる。

ナツ
「前……ルーシィが隠したアレ…自分で書いた小説だろ」

ハッピー
「やたら本の事詳しい訳だぁー!!!」

ルーシィは小説の事がバレ、顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。そろそろトリックルーム使ってもいい頃かな。オレはナツたちの会話をよそに準備に入る。

アゲハ
『おーい、三人とも!!トリックルーム、準備に出来たぞ!!』

ナツ
「うおっしゃあ!!!トリックルームきたぁあ!!!」

ハッピー
「あい!!」

ナツとハッピーが早速箱の中へと入る。

ルーシィ
「な、何?この箱」

アゲハ
『空間【ゾーン】系PSIトリックルーム。簡単に言えば空間移動できる箱だ。早く入れ』

ルーシィ
「ホント、アンタって何者なわけ?」

ルーシィが箱に入りながら言う。

アゲハ
『サイキッカーだって言ってんだろ。じゃあ転送するぞ』

ナツ
「おお━━━━!!!」

オレはギルドの正面に設置したもうひとつのトリックルームへとオレたちを転送した。

次の瞬間、オレたちはギルドの正面に立っていた。ナツたちはすでにギルドへと入っていった。

ルーシィ
「ほ、本当に移動した」

ルーシィは一瞬で移動したことに驚いているようだ。その場に立ち尽くしている。

アゲハ
『さて、今日のクエストはどうだった?楽しめたか?』

オレはルーシィにクエストの感想を聞く。

ルーシィ
「うん、依頼料はチャラになっちゃったけど、いい経験ができた」

アゲハ
『そりゃよかった。そうだ、今度メシでもおごろうか?ルーシィへのご褒美ってことで』

ルーシィがまだ依頼料チャラの件を引きずってるようなので、提案してみた。

ルーシィ
「アゲハが?」

アゲハ
『何がおかしいんだ?』

怪訝そうにオレを見るルーシィを不思議に思って、聞いてみる。

ルーシィ
「だってアンタ金持ってなさそうだから」

アゲハ
『失礼だな!!エバルーよりは金持ってるわ!!』

ルーシィ
「えぇえええええええ!!!うそぉおおお!!?」

めちゃめちゃ驚くルーシィ。何だよその反応。オレは結構稼いでるんだぞ!!

アゲハ
『ちょっとムカついた。やっぱ奢ってやんねー』

ルーシィ
「ああー、ちょっと待ってよ!!ごめんなさい!!奢ってー!!」

オレが意地悪な発言をするとすぐに謝ってきた。面白っ!!

アゲハ
『どうしよっかなー』

ルーシィ
「アゲハぁ━━━!」


結局数日後、オレはルーシィに一度夕食をおごってやった。ルーシィは遠慮なく高級レストランで奢れと言ってきやがった。あの野郎(女だが)……………
ま、依頼料もらえなかったショックからは立ち直れたみたいだし、めでたしめでたしってことで。

余談だがルーシィにメシを奢った翌日、ミラから質問攻めにあった。その時のミラの剣幕とにじみ出る黒いオーラにオレはただただ震えることしかできなかった。

何故ミラは怒ったんだ……?

謎だ……………………………………

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