第４２話 求める強さは……
━Side アゲハ━
オレが評議院から戻って来た翌日、ナツとエルザも帰ってきた。
ナツ
「やっぱりシャバの空気はうめえ！！！最高にうめえっ！！！自由って素晴らしいっ！！！フリ━━━ダァ━━━ッム！！！」
評議院から帰ってきたナツは思いっきり叫んで喜んでいる。それにしてもうるさいな。
ルーシィ
「もう少し入ってればよかったのに………」
アゲハ
『言えてる……』
レナ
「おとなしくできないもんね、ナツは」
騒ぐナツを呆れた目で見るオレたち。
ルーシィ
「けっきょく“形式”だけの逮捕だったなんてね……心配して損しちゃった」
グレイ
「そうか！！カエルの使いだけにすぐに“帰る”」
アゲハ
『寒っ！！』
エルフマン
「さ…さすが氷の魔導士、ハンパなくさみィ！！！」
レナ
「ところでエルザとの勝負途中だったけど…どうするの？」
ナツ
「そうだ！！忘れてたっ！！！エルザ━！！！この前の続きだーっ！！！」
レナの言葉に勝負のことを思い出したナツがエルザに再び勝負しろと言い出す。
エルザ
「よせ…疲れてるんだ」
ナツ
「行くぞ━━━━━━っ！！！」
疲れてると言って断るエルザに構わず突っ込むナツ。
エルザ
「やれやれ」
ゴン！！！
エルザの振るったハンマーがナツに直撃ィ━━━━！！！ナツは壁に激突し、気絶した。
エルザ
「仕方ない、始めようか」
ハッピー
「終━━━了━━━！！！」
ハッピーが勝負の終わりを告げた。
グレイ
「ぎゃはははっ！！！だせーぞナツ！！」
アゲハ
『やっぱナツじゃまだエルザには勝てねえか』
ルーシィ
「あ━あ…またお店壊しちゃってぇ」
そんな様子を見ていたミラはマスターが眠そうにしているのに気づいた。
ミラ
「どうしました？マスター」
マカロフ
「いや…眠い…奴じゃ」
ミラ
「あ」
アゲハ
『帰ってきたのか、あいつ』
突然ミラが倒れる。それに続くように他のみんなも次々と眠っていく。オレはPSI障壁を張ってミストガンの眠りの魔法を防いでいた。ギルドの入り口から顔を隠しマントを着た男、ミストガンが入って来る。
マカロフ
「ミストガン」
アゲハ
『よっ！！久しぶりだな』
ミストガン
「ああ、そうだな」
ミストガンとは何度か会っている。まだ直接は顔を見ていないし、話したことも少ないが向こうから話しかけてくれることもあるので嫌われてはいないと思う。
ミストガンは依頼板の方へ歩いていき、依頼書を一つ取るとジイさんのところへ持っていった。
ミストガン
「行ってくる」
アゲハ
『気を付けろよ』
ミストガン
「ああ、分かってる」
マカロフ
「これっ！！眠りの魔法を解かんかっ！！」
ミストガンは振り返るとギルドの出口に向かって歩き始めた。
ミストガン
「伍、四、参、弍、壱」
そこまで言うと、ミストガンは霧の中に消える。それと同時にみんなも目を覚まし始めた。……ナツ以外。
「こ…この感じはミストガンか！？」
「あんにゃろォ！！相変わらずスゲェ強力な眠りの魔法だ！！」
眠りの魔法が解けて起きたギルドの奴等が一斉に騒ぎ始める。
ルーシィ
「ミストガン？」
事情を知らないルーシィは疑問符を浮かべる。
ロキ
「フェアリーテイル最強の男候補の一人だよ………」
あれ？ロキの奴ルーシィに近づいても大丈夫になったのか？いや、やっぱダメか……ロキは話をしていた相手がルーシィだったことに気づき、そそくさと離れていった。
グレイ
「どういう訳か誰にも姿を見せたくないらしくて仕事をとる時はいつもこうやって全員を眠らせちまうんだ」
ロキに代わりグレイが説明をする。
ルーシィ
「なにそれっ！！あやしすぎ！！」
グレイ
「だからマスター以外誰もミストガンの顔を知らねえんだ」
ラクサス
「いんや…オレは知ってっぞ」
「ラクサス！！いたのか！！」
「珍しいな」
声の主は２階にいるラクサスだった。ラクサスの声に反応してナツが目を覚ます。
グレイ
「もう一人の最強候補だ」
ルーシィに説明するグレイ。なんだかんだ言っても親切だよな、グレイって。
ラクサス
「ミストガンはシャイ何だあんまり詮索してやるな。つってもアゲハ、てめぇは眠りの魔法効かねえだろ」
エルザ
「そうなのか、アゲハ？」
アゲハ
『まあな、でもあいつの素顔は見たことねぇよ』
そんなことを話している中、ナツはラクサスに向かって叫んだ。
ナツ
「ラクサスー！！オレと勝負しろ━━━っ！！」
ラクサス
「やめとけ、エルザごときに勝てねえようじゃオレには勝てねえよ」
エルザ
「それはどういう意味だ」
うおっ！！エルザが禍々しいオーラを放ってる。これはまずい……
アゲハ
『お、落ち着けってエルザ。どうどう』
エルザ
「私は馬か！！」
余計怒らせてしまった……
レナ
「ごめんエルザ。アゲハ兄って基本ボケキャラだから」
エルザ
「まあ、そうだな……」
アゲハ
『ちょっと待て！！オレってボケキャラだったのか！？』
自分ではツッコみキャラだと思ってたからビックリだ。
ナツ
「降りてこい！！コノヤロウ！！！」
ラクサス
「おまえが上がってこい」
ナツ
「上等だ！！」
ナツは２階に上がろうとするがジイさんの巨大化した手に押し潰されてしまった。
アゲハ
『あ、ナツが潰れた』
マカロフ
「２階には上がってはならん、まだな」
ラクサス
「ははっ！！怒られてやんの」
マカロフ
「ラクサスもよさんか」
ジイさんがラクサスを注意するがラクサスは構わず続ける。うーん、何であんなにひねくれた性格になっちまったんだろうな……昔は素直だったみたいだけど……
ラクサス
「妖精の尻尾最強の座は誰にも渡さねえよ。エルザにもミストガンにもあの親父にも、そしてアゲハ！！てめえにもな！！オレが…最強だ！！」
そう言い残してラクサスはギルドの奥へ戻っていった。
アゲハ
『最強……ね…』
レナ
「どうしたの？アゲハ兄」
オレの呟きに反応したレナが聞いてきた。
アゲハ
『いや、何でラクサスはあんなに最強って言葉に固執するんだろうな、って思ってよ』
レナ
「そうだね。ぶっちゃけ最強ならアゲハ兄に決まってるのにね」
アゲハ
『いや…そういうことを言いたいんじゃなくってだな』
レナ
「？」
アゲハ
『あいつの求める強さは……何の為のものなんだろうな』
レナ
「求める……強さ…
ねえ、アゲハ兄は何の為に強くなろうとしているの？」
アゲハ
『オレか？オレは……オレの求める強さは…大切なものを守る為のものだ。もう二度と後悔しないためにな』
オレが初めてＳ級クエストに行ったあの日……目の前の人を助けられなかった日……オレは無力な自分を呪った。一ヶ月の眠りから目を覚ましたあの日…大切なものを守る為に、強くなろうって決めたんだ。
レナ
「アゲハ兄……」
アゲハ
『そうだ、レナが強くなりたい理由はなんだ？』
レナ
「私は…この幸せな毎日を守る為に、お父さんの最後の言葉に答えるために……強くなりたい」
アゲハ
『…そっか』
オレはレナの頭を撫でてやった。
アゲハ
『強くなろうぜ、レナ。この幸せな時間を守る為にも』
レナ
「うん！！」
オレの言葉にレナは満面の笑みで答えてくれた。