小説『FAIRY TAIL PSIを使って大暴れ』
作者:OR()

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━Side アゲハ━


ギルドがガジルに攻撃された翌日、ざわざわと騒がしいマグノリアの南口公園にオレたちはいた。

エルザ
「すまん通してくれ。ギルドの者だ」

野次馬を押し退け、騒ぎの原因がある中心へと入る。

グレイ
「!!!」

ルーシィ
「う…」

レナ
「そんな……」

アゲハ
『…………っ!!』

公園の中心にある木…そこに磔にされているシャドウ・ギアの3人がいた。3人とも全身ボロボロで意識がない。

ルーシィ
「レビィちゃん…」

グレイ
「ジェット!!ドロイ!!」

エルザ
「………ファントム…!!」


ギリ


握りしめた拳から血が流れる。ナツたちは皆、ファントムへの怒りに燃えている。そんな中、オレだけは自分に怒りを感じていた。

分かっていたハズだ、こうなる事は。たとえ後々の事を考えたのだとしてもオレは3人を助けるべきだった…!!みんなにこんな思いをさせる事もなかったんだ…!!

ボロボロのレビィたちを見て浮かび上がった悔やんでも悔やみきれない思いに……心がギシギシと痛む…


ザッザッザッ…


足音がした。野次馬たちが退き、自然と道ができる。

エルザ
「マスター…」

聖十のマークの描かれたコートを羽織ったマカロフのジイさんは磔にされている三人を一瞥し、顔を伏せる。

マカロフ
「ボロ酒場までなら我慢できたんじゃがな…ガキの血を見て黙ってる親はいねえんだよ……」

そしてジイさんは持っていた杖を握りつぶし、宣言した。




マカロフ
「戦争じゃ」











第58話 痛む心







マグノリア病院


ルーシィ
「レビィちゃん……ジェット……ドロイ……ヒドイ事するんだなぁ……ファントムって…」

病室で眠るレビィたちを見てルーシィが言った。

アゲハ
『……そうだな』

レビィたちをCUREで治療しながら答える。今、病室には意識が戻らないシャドウ・ギアの3人とその治療をしているオレ、そしてお見舞いに来たルーシィしかいない。

ルーシィ
「アゲハは行かなくていいの?」

ギルドのみんなはファントムと戦いに行ったのにオレが残っていることに疑問を持ったのかルーシィが聞いてきた。

アゲハ
『ああ、治癒の力を使えるのはオレだけだから……それにエルザにも止められたしな』

ルーシィ
「エルザに?」

アゲハ
『“ゼロギアのリバウンドはまだ回復してないんだろう”って言われてな』

ルーシィ
「なるほどね…」

もちろんそれだけが理由じゃない。昨夜…全力で治療するという誓いを自分に立てた。それを守らないわけにはいかない。

ルーシィ
「アゲハ……あたし許せないよ…あいつら……」

涙をこぼしながらそう言ったルーシィにオレは治療の手を止めずに言った。

アゲハ
『オレもだ……』

込み上げる思いに、オレは胸を押さえた。






しばらくして…


ルーシィ
「あたし、そろそろ出るね。治療の邪魔になっちゃ悪いし…」

アゲハ
『そうか…気をつけてな』

ルーシィ
「うん。じゃあね」

そう言ってルーシィは病室を出た。

アゲハ
『………………』

ルーシィがいなくなったのを確認し、オレは治療をやめた。ルーシィが出ていく前からとっくに治療自体は完了していた。受けたダメージが大きいからすぐには目が覚めないけど……

アゲハ
『ケガ自体は完全に治った。あとは意識を取り戻すだけだ。………すまねぇ、知ってたのに助けにいけなくて……』

最後に3人に頭を下げてオレも病室を出た。懐から仮面とマントを取り出し、それぞれ装着してオレはルーシィを追った。


━Side Out━



━Side ルーシィ━


「はぁー、みんなあたし置いてっちゃうんだもんなぁ…」

私は今、レビィちゃんたちのお見舞いを終えての帰り道を歩いている。治療のために残ったアゲハはともかくあたしまで置いてくことないのに……

そんなことを考えているうちに雨が降ってきた。

ルーシィ
「やだ…天気雨?」

ジュビア
「しんしん…と」

ルーシィ
「!」

空を見上げていると前方からあたし同様傘をささずにいる女の人が歩いてきた。

ジュビア
「そう……ジュビアは雨女。しんしんと…」

ルーシィ
「はぁ?」

何言ってるのこの人?訳のわからない事態に呆けていると女の人がまた話しかけてきた。

ジュビア
「あなたは何女?」

ルーシィ
「あの……誰ですか?」

あたしが問い返すとその人は質問には答えずそのまま振り返った。

ジュビア
「楽しかったわ、ごきげんよう」

ルーシィ
「え!?何なの!!?」

思わずツッコミを入れるとその女の人とはまた別の声が聞こえ始めた。

ソル
「ノンノンノン、ノンノンノン、ノンノンノンノンノンノンノン。 3・3・7の「ノン」でボンジュール」

ルーシィ
「また変なの出たっ!!!」

変な台詞と共にモノクルをかけた男が地面から現れた。なんかエバルーを思い出すわね……

ソル
「ジュビア様、ダメですなぁ仕事放棄は」

ジュビア
「ムッシュ・ソル」

ソル
「私の眼鏡がささやいておりますぞ。そのマドモアゼルこそが愛しの標的【シブル】だとねぇ」

ジュビア
「あら…この子だったの?」

ルーシィ
「え?」

何がなんだか分からずにいると、目の前の二人が並んで話し始めた。

ソル
「申し遅れました。私の名はソル、ムッシュ・ソルとお呼びください。偉大なる幽鬼の支配者【ファントムロード】よりお迎えにあがりました」

ジュビア
「ジュビアはエレメント4の一人にして雨女」

ソルとジュビアの二人が自分の所属ギルドを名乗った。

ルーシィ
「ファントム!!?あんたたちがレビィちゃんを!!!」

レビィちゃんたちの仇のギルドの者だと分かり、腰の鍵に手をかけた。絶対に許さない!!

ソル
「ノンノンノン、3つの「ノン」で誤解を解きたい。ギルドを壊したのもレビィ様を襲ったのも全てはガジル様。まぁ我々のギルドの総 意である事は変わりませんがね」

ソルがそう言った瞬間、私の周りを水が取り囲み、私を中に閉じ込めた。

ルーシィ
「んっ、ふっ!!ぷはっ、な…何…コレ!!」

必死に脱出しようとするけど抜け出せない…!!

ジュビア
「ジュビアの水流拘束【ウォーターロック】は決して破られない」

だめ……もう、意識が……



ドパァン!!



ルーシィ
「ぷはっ!!はぁっはぁっ!!ごほっ」

意識を手放す直前、突然水の檻が弾けとんだ。足りなくなった酸素を一気に取り込んだせいで少しむせる。

ソル
「何者…!?」

ジュビア
「ジュビアのウォーターロックが……」

ファントムの二人が驚いて水の檻を壊した人物を見た。

あたしも呼吸が落ち着いたのでその人物へと目を向ける。あたしを助けてくれたのは黒いマントを着て仮面を被った男の人だった。

え、誰この人?ウチのギルドにこんな格好した人いないわよ!?



━Side Out━




━Side アゲハ━


なんとか間に合った…!!オレが病室出た時にはルーシィの奴もうジュビアたちと対面していたからな……ルーシィが気を失う寸前でなんとかテレキネシスでウォーターロックを破ることができた。

ルーシィ
「あ、あんた…一体誰なの?」

今のオレは黒いマントに仮面をつけている。見た目じゃオレだと分からないためルーシィが問いかけてきた。

オレはそれに無言で下がってろと手で指示した。ルーシィは戸惑いながらも自分を助けてくれたからか素直に従った。悪いな、こいつら追っ払うまではこのままでいさせてもらうぜ。

ソル
「何者かは知らないが邪魔をするなら排除するのみです」

ジュビア
「そういうこと、ウォータースライサー!!」

ジュビアが水の斬撃を放ってきた。


ス…


オレはウォータースライサーに向けて手をかざした。


ピタッ


ルーシィ
「えっ!?」

ソル
「なんと!!」

ジュビア
「そんな…!!」

オレはテレキネシスでウォータースライサーをそのまま受け止め、固定した。一同の目は驚きのあまり見開かれている。

さぁ、お返しだ!!

オレは手を振りかざしウォータースライサーをソルに向かって直線上に放射した。

ソル
「ノ、ノ━━━━ン!!!」

ジュビア
「ムッシュ・ソル!!」

もろに水流を受けたソルは数メートル吹き飛ぶ。

シュッ

オレはライズを使い、ソルの後ろに回り込み、

ズドォオン!!

追撃を与えた。壁に激突したソルはそのまま気絶した。

ジュビア
「ムッシュ・ソルがやられた!?」

ルーシィ
「あの人…強い!!」

ジュビアとルーシィが驚愕の声をあげる。

アゲハ
『…………………』

ヒュン

ジュビア
「消えたっ!!どこに………ぅあっ!!」

トン、と首筋に手刀を打ち込み、ジュビアを気絶させた。これ、本当に気絶するんだな……

ルーシィ
「す……すごい…エレメント4の二人をやっつけちゃった…。あ、あんた本当に何者なのよ!!」

ルーシィが再度問いかけてきた。

ジュビアはもう気絶したし、もういいかな。


キュイン


オレは返事の代わりにジュビアを瞬間移動者【テレポーター】でファントム本部に送り返した。

ルーシィ
「瞬間移動者【テレポーター】!!?ってことはあんたまさか…!!」

アゲハ
『そ、オレだよ』

仮面だけ外し、ルーシィと向き合った。

ルーシィ
「アゲハ!!あんたレビィちゃんたちの治療してたんじゃ…」

アゲハ
『治療ならもう終わったよ。ルーシィが病室を出た後、なんか胸騒ぎがしてな……追いかけてきたら案の定だったって訳だ』

ルーシィ
「そうだったんだ……ってそれより何よその格好!!」

ビシッとオレを指差しながらルーシィが言った。

アゲハ
『ああ、これか?さっき瞬間移動者で転送したファントムの女の方いたろ?あいつ実はオレの友達なんだよな』

ルーシィ
「えぇええええ!!?」

アゲハ
『いや驚き過ぎだろ。まぁこんな事で仲悪くなったりすんの嫌だったからこんな格好してたって訳だ』

ルーシィ
「な、成る程……」

アゲハ
『それよりだ、何でファントムのやつらがルーシィを狙ったのかを聞き出さねぇとな。そのためにわざわざ一人残したんだし』

オレは再び仮面をつけ、気絶しているソルの胸ぐらを掴み、持ち上げる。

アゲハ
『うぉらぁ!!起きやがれクソがぁ!!』

パンパンパンパンパンパン……

ルーシィ
「うわぁ(汗)」


数秒後


アゲハ
『さぁ、話してもらおうか?ルーシィを狙った訳を……』

ソル
「ふ…ふぁい…」

ビンタの嵐により起きた顔中が腫れたソルから事情を聞く。

ソル
「実は━━━━━…」








ルーシィ
「ぜ、全部……あたしのせいで…」

ソルから真相を聞いたルーシィはギルドが壊され、レビィたちが襲われたのは自身の責任だと自分を責めてしまっていた。

ちなみにソルは話を聞き終えた直後にファントムの本部に送り返してやった。オレはすでにマントと仮面を外している。

アゲハ
『それは違う。悪いのはルーシィを連れ戻すって依頼だってのに余計な被害を出したファントムだろ。おまえは悪くない、絶対に自分を責めたりすんじゃねえぞ』

ルーシィ
「アゲハ……」

涙をこぼしながら、ルーシィはオレの名前を呼んだ。

アゲハ
『ほら、泣くなって。女の涙は苦手なんだ』

ルーシィ
「ぐす……うん…」

なんとか泣き止んだルーシィを連れ、オレはギルドへ戻った。

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