小説『FAIRY TAIL PSIを使って大暴れ』
作者:OR()

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ドォオオオオン


アゲハ
『うっ……ゲホッ…ゲホッ………』

畜生、体が思うように動かねえ……

ジョゼ
「ククク……こんなものでは済まさんぞ」

ジョゼが再び手をかざして攻撃を仕掛ける。オレはボロボロの体をなんとか動かして、致命傷を避けていた。

ジョゼ
「デッドウェイブ!!!」

ジョゼが闇の波動を放ってきた。それをオレはライズを使って避けようとした。

アゲハ
『ライ……っ!!!』


ズキン


ライズを発動しようとしたところでまた激しい頭痛に襲われた。

アゲハ
『しまっ……!!!』


ドゴォオオオオオオン


頭痛のせいで動きが止まったオレにジョゼの攻撃が襲いかかった。

その攻撃によってオレは吹き飛ばされ、壁に激突した。

アゲハ
『く…そったれ……』

朦朧とする意識の中、オレはジョゼを睨み付ける。



そんなオレの側で、1つの希望の芽が生まれていた。






第65話 新たなる力






━Side エルザ━


エルザ
「!!何だ…?」

運んでいるうちに目を覚ましたミラたちと共に避難していた時だった(ミラはアゲハの元へ戻りたがったがなんとか説得した)。1つの魔力が小さくなっていったのを感じた。未だ感じるもう1つの魔力はとても禍々しい。

エルザ
「まさか……アゲハ…?」

ミラ
「どうしたのエルザ?」

立ち止まり、アゲハの戦っている場所を見つめる私にミラが不安げに問いかけてくる。アゲハの名を呟いたことに気づいたからだろうか……

エルザ
「ぶつかり合っていた魔力の内のひとつが小さくなってきている。おそらく……アゲハの方だ…!!」

ミラ
「え…?」

グレイ
「何だと!?」

エルフマン
「ウソだろ!!?」

皆、信じられないといった表情を浮かべている。私も信じられない。アゲハが負けるなど……

エルザ
「やはりアゲハが言っていたゼロギアのリバウンドが回復しきっていなかったのか……!!」

今のアゲハは全快時の半分の力も出せていなかった。やはりジョゼ相手ではキツかったのか…!?

エルザ
「お前たち!!私は今からアゲハの元へ戻る!!お前たちは先に避難しているんだ!!!」

グレイ
「はぁ!?ふざけんな!!お前一人だけに行かせられるかよ!!」

エルフマン
「そうだ!!ここで逃げるなど漢にあるまじき行為!!!」

私の指示を聞かず共にアゲハの元へ戻ろうとするグレイとエルフマン。

エルザ
「言うことを聞け!!お前たちが戻ったところで何もできは………なっ!?ミラ!!?」

グレイとエルフマンを説得している内にいつの間にかミラが来た道を引き返していた。

エルザ
「待てッミラ!!」

駆けていくミラを追いかけようと私も走り出す。だが……

エルザ
「ぐっ…!!」

アリア、ジョゼとの戦いで疲弊しきっているせいで膝をついてしまった。

グレイ
「エルザ!!」

エルフマン
「大丈夫か!!」

グレイとエルフマンが慌てて駆け寄ってくる。

エルザ
「私の事はいい!!それよりも早くミラを連れ戻してくれ!!あいつらの戦いに巻き込まれたら大変だ」

グレイ
「分かった」

エルフマン
「けど一人で残って大丈夫か?」

エルザ
「心配ない。さぁ、早く行け!!」

私の言葉を聞いた二人はすぐにミラを追っていった。

エルザ
「頼んだぞ…グレイ、エルフマン。そして負けるなよ……アゲハ。約束破ったら承知しないぞ」

アゲハと交わした絶対に勝つという言葉を信じてうまく動かない体を引きずって私もアゲハの元へ歩き出した。



━Side Out━



━Side アゲハ━



アゲハ
『はぁっ……はぁっ……』

くそっ……体に力が入らねえ。もう打つ手ないのか…?

ジョゼ
「いい気味だ。私に楯突くからこういう事になるのだ」

アゲハ
『うる…せぇよ……このド三流が…』


ドガァアアアン


アゲハ
『がっ……!!』

再びジョゼの魔法がオレを襲った。うつ伏せに倒れるオレの口に鉄の味が広がる。

やべぇ…もう……意識が………

ジョゼ
「ふん、これでもう立てまい。貴様に止めを指した後はマカロフのクソガキどもを殺しにいくか」



ピクッ



何だと…?オレの仲間を……殺すだと…?ふざけるな…!!そんなこと……絶対にさせてたまるかよ!!!

ジョゼの言葉で飛びかけていた意識が蘇る。視界がはっきりと戻り、倒れるオレの目の前に1つの希望が映った。

アゲハ
『これは……』

オレの目と鼻の先にある小さな小さな1つの“光り輝く芽”。

まさか……!!

ジョゼ
「これで終わりだ!!死ぬがいい暴王【メルゼズ】のアゲハ!!!」

ジョゼが魔力を手のひらに集め、オレに向かって放った。








ドッ!!!








ジョゼ
「何…だと……!?」

ジョゼの目が見開かれる。ジョゼの視界に入ったのは……オレを守るように体を覆う何本もの光る枝。

ジョゼの攻撃を放たれる直前、視界に映った光る芽を見てもしかして、と思ったが……

アゲハ
『案の定だったな』


ついに手に入れた……オレの新たなる力


生命の樹【セフィロト】


ジョゼ
「くっ、まさかまだこんな力を隠し持っていたとは…!!」

後ろに下がり、こちらの様子を窺うジョゼ。相当キレてるがまだ頭は冷静みたいだな。セフィロトの危険度を察知してとっさに距離を取っている。

何はともあれセフィロトのおかげで道が拓けた。もう一踏ん張りだ。

オレとジョゼは向かい合って互いに隙を窺う。下手に動いたらやられる。どちらもそれを自覚しているためかなかなか攻撃を仕掛けることができない。なかなか崩れない沈黙は意外な人物により崩れた。

ミラ
「アゲハッ!!!」

アゲハ
『なっ!?ミラ!!?』

少し遠くからミラが現れた。ミラの声にオレの視線がジョゼから外れる。その隙をジョゼは見逃さなかった。

ジョゼ
「かあっ!!!」

アゲハ
『ぐっ!!』

ジョゼの放った魔法をなんとか見切って避ける。そんな中、オレは見た。ジョゼの視線がミラを捉えるのを……その口端が醜く上がったのを……

ミラ
「えっ…?」

ジョゼが手のひらをミラに向ける。


しまった!!


アゲハ
『ミラァッ!!!』

ジョゼの魔法が放たれる。そこまでスピードのある魔法じゃなかったからギリギリ間に合いはする…だがPSIで防御するだけの猶予はねえ。やっぱりジョゼの野郎…オレにミラを庇わせるつもりで……!!!

バッ

ミラ
「アゲハ!!?」

間一髪でミラの前に躍り出る。耐えきれ…!!こいつを凌いだところで油断してるあいつに止めを食らわしてやる!!

両腕を体の前で交差させ、衝撃に備える。

グレイ
「おいおい、一人でカッコつけてんじゃねえよアゲハ!!アイスメイク・シールド!!!」

その時、目の前に黒髪の男が現れ、氷の盾でジョゼの魔法を防いだ。

ジョゼ
「何ッ!!?」

アゲハ
『なッ…!!グレイ!!?』

グレイ
「オレだけじゃねえぞ!!」

エルフマン
「おぉおおおおおお!!!全身テイクオーバー・ビーストソウル!!!」

アゲハ
『エルフマン!!』

エルフマン
「漢ォオオオ!!!!」


ドガァッ!!!!


ジョゼ
「ぐうっ…!!!」

全身テイクオーバーしたエルフマンが腹に拳を打ち込み、ジョゼを打ち上げる。強烈な一撃だったがジョゼはまだ意識を保っている。

ジョゼ
「なめるな!!貴様ら如きの攻撃なぞ屁でもないわぁっ!!!」


ドドンッ!!!


グレイ
「ぐぁっ!!!」

エルフマン
「うぉおおおお!!?」

完全にキレたジョゼがグレイとエルフマンに魔法を食らわせる。もろに食らったグレイとエルフマンは吹き飛ばされた。しかしその表情は苦痛に歪むものではなかった。

チャンスだ!!オレはグレイたちに意識が向いているジョゼの隙をつき、懐に入り込んだ。それを見たグレイが口端を上げる。

グレイ
「へっ、オレたちは囮だよ。ぶちのめせ!!アゲハ!!!」

アゲハ
『ったり前だ!!!』

オレは肘打ちでジョゼの鳩尾に一発いれる。そしてその攻撃により一瞬動きが止まったジョゼの顎を思い切り、殴りあげた。ジョゼの体が宙を舞う。

グレイ
「さぁ、これでフィニッシュだ!!」

エルフマン
「行けぇアゲハ!!!」

アゲハ
『チェックメイトだ、ジョゼ』

二人がジョゼを倒すチャンスを与えてくれた。絶対に応えなきゃな!!

オレは両手で印を組み、唱えた。



アゲハ
『生命の樹“峻厳”【セフィロト・ゲブラー】』



オレが唱えると同時に床から輝く光の樹が芽生え、ジョゼに向かって枝が伸びていく。それを防ごうとジョゼは魔法障壁を展開するがセフィロトは障壁もろとも………ジョゼの体を貫いた。

ジョゼ
「ぐはっ……」

セフィロトに貫かれたジョゼは生命エネルギーを吸い取られ、口から血を吐いて気絶した。ミラたちはその様子を唖然とした表情で見つめている。

グレイ
「すげえ……障壁ごとジョゼを貫いた………」

エルフマン
「何だこれ……光る…樹?」

ミラ
「これがアゲハの新しい力……なんて神々しい……」

ミラたちがそれぞれ言葉を発するのを横目に、オレはセフィロトを解除し、地面に落ちるジョゼに一言言い放った。

アゲハ
『急所は外した。まだ生きてられるだけの生命エネルギーは残してある。後は評議院にでも治してもらうんだな』

それだけ言うと、オレはミラたちの元へと戻る。みんなまだ驚いているのか、口を半開きにしたままだ。

ったく、なんて顔してんだよ。

アゲハ
『よう、ミラ』

ミラ
「あ………」

片手を上げてミラに呼び掛けると、ミラは口許を押さえて目に涙をためる。

アゲハ
『………勝ったぜ』

ミラ
「━━━━…バカッ!!!」

ミラは叫ぶと同時に腕を振りかぶる。ん?振りかぶる…?

アゲハ
『うぇっ!!?』

ゴッ

アゲハ
『ぐふっ』

鈍い音と共に頬に衝撃が来た。

アゲハ
『い、いきなり何すんだよミ…ラ……』

文句を言おうとしたけど、ミラの目から流れる大粒の涙に何も言えなくなってしまった。

ミラ
「バカアゲハ!!こんなに大ケガして…!!魔力もほとんど空っぽじゃない!!結果的に無事だったからよかったけど、一歩間違えたら死ぬとこだったのよ!!!」

アゲハ
『ミラ……』

ミラ
「でも……ちゃんと無事でいてくれてよかった」

そう言って未だに泣き続けるミラをオレは抱き締めた。

アゲハ
『心配かけてごめん。でも約束はちゃんと守ったぜ』

ミラ
「…………うん」

オレの言葉に答えたミラは顔を上げ、笑顔を見せた。

ミラ
「アゲハ、みんなを守ってくれてありがとう」

アゲハ
『ああ、どういたしまして』

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