小説『FAIRY TAIL PSIを使って大暴れ』
作者:OR()

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第69話 観賞!ステージ・オブ・フェアリーテイル!


ルーシィ
「はぁ……」

ため息をついてカウンターに突っ伏すルーシィ。

ミラ
「あら?元気ないわねルーシィ」

アゲハ
『どうしたんだ?そんなに深刻そうな顔して……』

ルーシィ
「お金ない………グス…」

半泣きになりながらオレたちの問いに答えるルーシィ。

ミラ
「お嬢様のセリフとは思えないわよ」

ルーシィ
「違います!!あたし家のお金なんて一銭も持ってきてないんですよ!!!高額の仕事行ってもナツやグレイがいろんなもの壊しちゃうから報酬額減らされちゃうしさー」

アゲハ
『ま、あいつらとチームを組むって事はそれぐらいの過酷さに付き合う覚悟が必要ってこった』

ルーシィ
「アゲハ……アンタこうなる事分かってたからチーム組まなかったのね」

アゲハ
『もちろんだ!!』

ルーシィが恨みがましい視線をオレに向けたので、胸を張って言い放った。

あいつらがセットになって何も問題が起きない訳がない。

ルーシィ
「清々しく言うわね……」

アゲハ
『まあな。でもさ…なんだかんだ言って楽しいだろ?あいつらといると』

ルーシィ
「………そうね!」

オレの意見に同意したのか、笑顔でルーシィが言った。

ルーシィ
「でも……」

ルーシィの視線が自身の背後に移動する。

ルーシィ
「楽しいのはいいけど、報酬を減らされるのは別の問題よ。本当……人が悩んでるのにいい気なもんよね。あんなものどこから持ってきたのしら?」

ルーシィの視線の先にはビリヤード台と、そのとなりに立つナツとグレイの姿だった。

ナツ
「おし!!オレからな」

グレイ
「オメーにゃムリだヨ」

どうやらナツから先に始めるようだ。ナツはキューを構えて…………………火力をブースターに思いきり玉を突き、セットした的玉を何個か破壊した。

ナツ
「ちぇー、6コかぁ……」

ハッピー
「さっすがナツー」

グレイ
「バカ言え!!!5コだろ!!!1コはヒビ入ってるだけだ!!!」

ルーシィ
「遊び方違う!!!!」

予想外の遊び方にルーシィが思わずツッコむ。

アゲハ
『つーかこの遊び出費半端ねぇな。いちいち玉交換しなきゃなんねぇし。何で一々破壊するかな』

ルーシィ
「本当よね。あの二人って物を壊す事に悦を感じてるんじゃない?」

ミラ
「そんなことないと思うけどナー」

アゲハ
『いやミラ……無理があるって』

アレを見てルーシィの意見に賛同しないのは結構感性がズレてると思うぞ?って…このギルドに常識人なんてほとんどいねーんだった。

ルーシィ
「あーん!!このままじゃ家賃払えないよぉ━━━っ」

ナツたちの様子を見てついにルーシィが泣き出す始末。そんなルーシィを見かねたのかミラがひとつ提案をした。

ミラ
「じゃあとっておきの仕事 紹介しちゃおうかなー。すっごくルーシィ向きだし、何かが壊れる心配もないやつ」

ルーシィ
「え?」


ミラが紹介した仕事はオニバスにある客足の遠のいた劇場を盛り上げるというモノだった。
それを聞いたルーシィはいつもの最強チームのみんなを連れてオニバスへ仕事をしに行った。

アゲハ
『なぁ、ミラ……あのメンバーで仕事に行って何も起きない訳がないと思うのはオレだけか?』

ミラ
「さあ、どうかしら?でも面白そうじゃない?」

アゲハ
『それはそうだけどな……なんかルーシィが不憫に思えてきた』

ま、頑張れルーシィ。とりあえず心の中で激励を送っておいた。



ミラ
「ねぇ、アゲハ」

ルーシィたちがオニバスへ行ってから6日が経ち、オレがクエストから帰ってきた時の事だった。カウンターでメシを食っているオレにミラが話しかけてきた。

ミラ
「明日ルーシィたちが出る舞台観に行くんだけど一緒にいかない?今のところ一緒に行くのはマスターだけだけど…」

アゲハ
『ルーシィたちの?ていうかルーシィたち舞台に出るのか?演出の手伝いじゃなかったっけ』

ミラ
「それが急に役者が逃げ出しちゃったらしいのよ。それでルーシィたちが出演することになったって……。どう?明日ヒマなら一緒に行かない?」

アゲハ
『明日か……うん、とくに予定もないしオレも行くよ』

ミラ
「ホント!?じゃあ明日ギルドで集合ね!!」

アゲハ
『分かった。ごちそうさま、ミラ。今日も美味かったぜ』

メシを食い終わり、そう言って席を立つ。

アゲハ
『舞台観賞か……レナも誘うか』





翌日

ミラ
「じゃあアゲハ、お願いね!」

自宅でレナも誘い、ギルドに集合したオレは早速トリック・ルームを作っていた。

マカロフ
「いやー、悪いのぅアゲハ」

アゲハ
『いいよ、こっちのがオレも楽だし』

結局みんなそれぞれ仕事があるらしく、オレ、レナ、ミラ、ジイさんの4人だけで行くことになった。

アゲハ
『じゃあ転送するぞ』


フォン……





オニバス

レナ
「着いたぁー!!」

ミラ
「立派な劇場じゃない。ここでルーシィたちが舞台をやるのね」

マカロフ
「うーむ、あやつらに舞台なんぞできるのじゃろうか?」

アゲハ
『ま、そこんとこは気にしないでおこうぜ。それよりミラ、開演まであとどれくらいだ?』

ミラ
「10時開演だから……あと1時間ってところね」

レナ
「1時間もあるの?どうするアゲハ兄?」

アゲハ
『そうだな、ナツたちに会いにいくか?多分控え室にいるだろ』

ミラ
「そうね、そうしましょうか」

レナ
「みんな緊張とかしてるのかなぁ?」

マカロフ
「ルーシィやグレイはともかくナツやエルザが緊張してるトコなぞ思い浮かばんわい」

そんな訳で色々話しながら控え室へと向かう。


アゲハ
『ここか……』

コンコン、とノックをして返事を待つ。

ルーシィ
「はーい、今出まーす」

姫の衣装を着たルーシィがドアを開ける。

アゲハ
『よう!』

レナ
「元気だった?」

ルーシィ
「アゲハ!?レナ!?何でここに……」

オレとレナがここにいることに驚き、目を見開くルーシィ。

ミラ
「私たちもいるわよ」

ミラとジイさんもルーシィの前に立つ。

ルーシィ
「ミラさん!!マスターまで!!観に来てくれたんですか!?」

ミラ
「ええ、今日は楽しませてもらうわね」

ルーシィ
「はい!みっちり練習したんで楽しんで観てくださいね!」

アゲハ
『期待してるよ。それよりナツたちは中にいるのか?』

ルーシィ
「うん。今みんなセリフの最終確認中だけど…みんなとも話す?」

アゲハ
『いや、いいよ。あと30分で開演だし、邪魔しちゃ悪いしな』

レナ
「じゃあ劇頑張ってね、ルーシィ!!お姫様の服、似合ってるよ」

ルーシィ
「ありがと、レナ」

ミラ
「じゃあまたね」

マカロフ
「他の者にもよろしく伝えておいてくれい」



その後会場に入り、色々な知人を見つけて一緒に観賞することになった。クワトロケルベロスのマスターゴールドマイン、評議院のヤジマさん、その他にもガルナ島の人たちなど結構な知り合いが舞台を観に来ていた。

みんなと色々話していると、音楽が流れ出した。

アゲハ
『お、始まるみたいだな』

レナ
「楽しみだね!」

幕が上がり、ナレーションが流れ出す。

レナ
「わぁー、きれいな声だね」

アゲハ
『そうだな。……ん?あいつどっかで……』

ハープを奏で、きれいな歌声を披露する少女……羽が生えてる少女?

あっ、思い出した!!あいつルーシィの星霊だ!!琴座のリラ。なるほど、歌が上手いわけだ。考えたな、ルーシィ。

リラ
「西国の王子は♪姫を助けに 死の山へ♪」

そしてリラのナレーションが終わり、エルザが登場する。

レナ
「エルザだ!」

ミラ
「王子様役かぁ。似合ってるわね」

アゲハ
『ああ。ハマり役だな』

エルザの醸し出す凜とした雰囲気に観客も見惚れている。

しかし……

アゲハ
『あれ…?エルザの奴……震えてる?』

レナ&ミラ
「「えっ!?」」

バッ、と舞台に立つエルザに視線を向ける。するとやはり……

エルザ
「わ…わ…わわ……我が名はフレデリック。ひ…姫…た…たた、助けに……ました!!」

ガチガチ━━━━━ッ!!!

おいおい大丈夫かよ?観客からも野次が飛んでるぞ。しかも緊張のし過ぎで観客席に換装した剣ぶっ放してるし!!!

アゲハ
『あっぶねぇ!!』

マカロフ
「これは……」

ミラ
「予想外ね。エルザがこんなに本番に弱いタイプだったなんて」

ミラたちも心配になってきている。

そんな中、ルーシィが縄で縛られた状態になって出てきた。ルーシィはとらわれた姫を演じ始める。

ルーシィ
「ああ……助けてくださいフレデリック様。私は“あの”セインハルトに捕まってしまいました」

“あの”って何だよ!!まだ出てきてねぇぞセインハルト!!!

アゲハ
『エルザのミスをなんとかアドリブて誤魔化そうとして自分も失敗したってパターンだな、これ』

ハラハラしながら観ていると今度はグレイが出てきた。

グレイ
「我が名はジュリオス。姫を返してほしくば私と勝負したまえ」

レナ
「セインハルトじゃないの!?」

ミラ
「あらあら…」

アゲハ
『この時点でもうグッダグダだな……』

見るに堪えないな……これは。

エルザ
「勝負、勝負、し、勝負…」

うわ、これヤバくね?

舞台ではエルザが酸欠で顔を真っ青にしている。それをルーシィが助けようと、こっそり星霊を呼び出しているのが見えた。

ルーシィ
「開け!!時計座の扉 ホロロギウム!!」

煙と共に現れるホロロギウム。その中にエルザが入る。…………何だこれ?

エルザ
「…はっ!復活!!」

酸欠の治ったエルザが復活してホロロギウムから出る。そしてグレイに剣を向けた。

アゲハ
『なんとか立ち直ったか?』

レナ
「普通の劇で感じるのとは別の意味でハラハラするよ……」

マカロフ
「確かに……」

レナの意見に周りのみんなが同意して頷く。

グレイ
「くらえ 氷の剣!!!」

グレイは造形魔法で氷の剣を作り出し観客を沸き上がらせる。

エルザ
「な、なんの……私…に…は……じ、10の剣が…ァる」

負けじとエルザも換装によって剣を呼び出し、 グレイ目掛けて一気に放つ。

グレイ
「ぐわー」

棒読みの台詞を発し、なんか簡単にぶっ飛んでいったグレイ。え、戦闘シーンとかねぇの?弱すぎだろジュリオス!!

ルーシィ
「フレデリック様 ありがとうこざいます」

エルザ
「ヤ…ヤンデリカ姫… たくさん…子供を作りましょう」

アゲハ
『気が早ェよフレデリック!!!』

レナ
「アゲハ兄 公演中は静かにしないと」

アゲハ
『あ、ああ……悪いな つい…』

エルザの台詞に思わず大声でツッコんでしまったオレはレナに叱られ、声を落として謝った。
くそ、ツッコミどころ多すぎんだろこの劇!!

グレイ
「ハッハッハ!!フレデリックよ!!喜ぶのはまだ早い!!いでよ!!我が下僕のドラゴンよ!!!」

戻ってきたグレイがドラゴンを呼び出した。舞台が揺れ、奥からドラゴンの着ぐるみの中に入り、火を吐くナツとそれを飛んで支えるハッピーが現れた。

ナツの登場に観客たちが歓声をあげる。

ナツ
「オレ様は全てを破壊するドラゴンだぁ!!!」

おお、中々良くできてんじゃねーか。これでフレデリックとジュリオスの呼び出したドラゴンとの決戦で盛り上がれば……

グレイ
「こうなったら手を組むしかない」

エルザ
「オ、オウ……それは頼もしー…」

アゲハ
『お前が呼んだんだろーが!!!どういう展開だよ!!!』

ドラゴンを呼び出した張本人が手を組もうと言い出すと言う展開に大声でツッコんだ。

ダメだ ツッコまずにはいられねぇ!!!

ルーシィ
「私があいつを足止めします!!」

グレイとエルザをかばって全線に立つルーシィ。

レナ
「何言ってるの姫!?」

ルーシィ
「二人は逃げてください!!」

グレイ
「オウ」

エルザ
「た…助かったぞー」

レナ
「逃げちゃうの!?姫置いて!!?」

アゲハ
『姫に任せる気かフレデリック!!!?』

めちゃくちゃなストーリーについにレナもツッコミ出した。そうだよな…ツッコミ属性にとってはツッコまずにはいられないよな、この展開。

まぁ、これ以上めちゃくちゃな展開になることはないだろうと思っていると……


ズシィン


ハッピーが着ぐるみの分重くなったナツを支えきれず、落としてしまった。

その際にナツの吐いた火がルーシィのドレスに燃え移る。

ルーシィ
「きゃあああ━━━!!!グレイ助けて━━━!!!氷 氷!!!」

グレイ
「おし!!アイスメイク…ふごっ」

助けを求めるルーシィに氷を出そうと構えるグレイだったが何者かに頭を踏み台にされ、地に伏せる。


スパパパパパパッ


ルーシィ
「ひぇあ━━━━っ!!!!」

エルザの剣によってルーシィのドレスがバラバラに切り裂かれた。

ミラ
「ッ!!見ちゃダメ アゲハ!!!」

アゲハ
『ごふっ!!!』

ミラに鳩尾を思いきり殴られ、蹲るオレ。

何…故……オレ…だけ………

ミラ
「(他のひとの裸見るなんて許さないんだから!!)」

レナ
「アゲハ兄ぃ 大丈夫?」

アゲハ
『な…なんとか……』

息も絶え絶えになりながらもレナに返事を返す。

マカロフ
「な、なんだかヤバそうじゃぞ?」

アゲハ
『え゙っ!?』

顔を上げ、舞台を見てみれば、 落とされた痛みで観客に炎を撒き散らすナツ。めちゃくちゃに氷を出すグレイ。ナツを振り回して暴れまわるエルザ。

ルーシィ
「もうめちゃくちゃ━━っ!!!」

ルーシィが叫ぶ。

アゲハ
『なんだかすっげえやな予感が……』

轟音が響き渡り、舞台が破壊されていく。そしてついに劇場は倒壊した。

しかし何故か大喝采する観客たち。みんな大笑いしている。

ミラ
「ふふっ、面白いわね」

アゲハ
『どこが!!?』

レナ
「こんなにグダグダなのに!!?」

マカロフ
「何でいつもこうなるのかのぅ?はぁ……」

この劇場でまともな感性を待ち合わせていたのはオレ、レナ、ジイさんの三人だけだったようだ。

観るだけでこんなに疲れる劇に初めて出会ったよ……

一週間後、ずっと公演をさせ続けられたと言うナツたちの話を聞いて思わず手を合わせた。

ご愁傷さまでした。




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