第7話 ほのぼのした1日?Part2
エルザと修行をするため、オレたちはギルドの近くの広い空き地に来ていた。
あ、ちなみにミラは仕事が残っているそうなので、メシ食った後ギルドに戻った。
「さあ、始めようか」
「おう!っていうか修行って何するんだ?」
そういえば修行の内容を聞いていない。
「なに、簡単なことだ。ひたすら組手をしてもらう、日暮れまでな。ちなみに魔法も使ってオーケーだ」
「魔法ありの組手!?てか日暮れまでずっと!?」
体力持つかな、オレ。明日は筋肉痛で動けないかも。でも断ったら半殺しにされるのは目に見えてるし。あ、そうだ。“アレ”試してみるか。
「フフフ、腕がなるな。今日こそ一ヶ月前のリベンジを果たせるかもしれん」
「こぇえええよ!!指パキパキ鳴らさないで!!」
エルザが獲物を狩るような目でオレを見ている。うん、怖い。てかそんなにリベンジしたかったのか。
「はぁ。ま、やるしかねぇか。始めようぜ」
「そうだな、では早速始めよう」
オレとエルザは互いに向かい合い、構える。
「行くぞ!!」
まずはエルザが飛び出した。手には魔法剣だけを換装している。まずは小手調べってとこか。
「行くぜ、ヨヨ」
≪ヨシキタ≫
オレは自分のなかに潜むもう一人のオレ、ヨヨを呼び出した。てかヨヨまで呼び出せるんだな。しかも性格も外見も原作と同じだし。
「スキだらけだぞアゲハ!!はぁああああ!!!」
なにも仕掛けてこないオレにエルザが切りかかってくる。いくら組手とはいえ、ライズもかけていない状態でもろに魔法剣を食らったら死ぬ。ということは剣から白いオーラ、“死の脅威”が見える。
つまりは……
「何っ!!?」
オレに降りかかる死の脅威を祓うことが出来る。
「弱者のパラダイム」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
アゲハに攻撃したと思ったら気がつけば私の方が吹き飛ばされていた。
「何が起こったというんだ……?」
「内緒♪」
私が思わず疑問を口にすると、アゲハはイタズラっぽく笑って言った。
「ふっ、つくづく謎が多いやつだな。さて、そろそろ本気で戦うとするか。換装!!」
テレキネシスか何かで私を吹き飛ばしたというのなら、それを使わせる暇を与えなければいい。
「飛翔の鎧だ。このスピードならついてこれまい!!」
私は超スピードでアゲハに攻撃しようとする。
「ヨヨ」
しかしアゲハが手をかざすと、またも私の方が吹き飛ばされてしまった。
何故だ!?いくらなんでもこんなこと……
「さすがにちょっとズルかったかもな。ネタばらしだ。教えてやるよ」
アゲハが少し申し訳なさそうにしながら言った。
「エルザを吹き飛ばしたのはオレにしか見えないもう一人のオレ、ヨヨの仕業だ」
「もう一人のお前……だと?」
何を言っている?
「ワケわかんない、って顔してんな。無理もねぇか。簡単にいうとヨヨはオレの心の中にいる存在だ。オレの目には死の脅威が映るのは知ってるよな」
「ああ、白いオーラになって見えるってやつだろう?」
前にアゲハが教えてくれた。
「そうだ、ヨヨはオレの目に映る死の脅威そのもである光を祓うことでその脅威をもたらす攻撃をそらすことが出来る。例えばオレが銃弾で撃たれて、ヨヨがその銃弾の作る光を横に祓うと銃弾も横に飛ばされるって具合にな」
アゲハの説明した能力に私は驚愕した。防御においてはほぼ無敵ではないか。
「ということは私の剣が発する白い光を祓ったことで私も一緒に吹き飛ばされた、というわけだな?」
「そうそう、理解が早いな。とまあ、このままじゃ組手になら無いからヨヨはもう解除するよ。次は純粋に力比べと行こうぜ!」
アゲハが拳を手のひらに打ち付けながら言った。
「あのままヨヨとやらを使っていれば楽に戦えたのに、不思議な奴だな。」
「ま、今日の目的は修行だからな。それじゃあ行くぜ!!」
「来い!!」
「はぁっはぁっ、今日はこれくらいにしておこうか」
「そ、そうだな。もう動けない。五時間ぶっぱなしで戦い続けるとか……オレ今日自分の限界を越えた気がする」
マジで疲れた。最後の方とかPSI使わずに反射神経だけで避けてたからな。
「アゲハ……今日は修行に付き合ってくれてありがとう」
「どうしたんだよ、急に?」
いつもと雰囲気の違うエルザに少し戸惑う。
「いや、最近私は自分が強くなったと思ってきていた。少し満心…していたんだろうな。
少しだけ、ほんの少しだけだが敵との戦いで油断するようになってしまった。こいつになら勝てる、全力を出すまでもない、という風にな」
「エルザ…………」
「そんな時だった、お前がギルドにやって来たのは。お前と勝負して私は思い知った。世界にはまだまだ強いやつがたくさんいる、もっと強くならなくては、と思えるようになったんだ」
エルザの話す言葉はどれも真剣で……オレはこの言葉を聞き逃してはいけない、そんな気がしていた。
「だから、もう一度お前と勝負してみたかったんだ。あの時の気持ちを忘れないために。今日は私のわがままに付き合ってくれて本当にありがとう」
エルザがオレに笑いかけながら礼を言った。
この時、オレは初めてエルザの心のそこからの笑顔を見た気がしたんだ。
「そんなに大したことはしてないと思うけどな……それでも、オレがエルザに何かいい影響を与えることができたのは嬉しいよ。また一緒に組手しようぜ」
「アゲハ……ああ、そのときはよろしく頼む」
「さて、そろそろ帰るか。時間も遅いし…」
「そうだな」
こうして、オレの休日は終了した。
たまにはこんなほのぼのした1日?があってもいいかな。
こんな日々がいつまでも続くことを願いながら、オレは眠りについた。