小説『恋姫無双 槍兵の力を持ちし者が行く 』
作者:ACEDO()

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21話

   皆さんこんにちは、蒼です。
  ようやく、華琳の元に帰って来ました。
  取り敢えず言いたい事は華琳に再会して……その後の記憶が飛んでる。というか身体中が痛い。 
  これが所謂、許容出来ない恐怖から精神を守る為の、記憶喪失とかいうやつか。まあ記憶云々はいい。というかちゃんと落ち着いたら思い出せそうだ。

 「ところで蒼、何か言いたい事はある?」

 「色々あるけど、まずは立たしてください」

 「却下よ」

 まあ、ダメ元で言ってみたが、駄目かよ。(しかも即答)
 とまあ、何を言っているのかと思われるだろうが、今かなりキツい状況だ。
 まあ、陳留で目覚めて、そしてそのまま、自己紹介及び真名の交換を行ったわけだが、俺の体勢に問題が幾つか発生している。

 一つ、縄で縛られていて、自由が効かない。

 二つ、自分は正座をしている。

 三つ、座っている所には凸凹のある木の板があり、そこに座らされている。

 四つ、自分の膝の上に石の塊が3つ置かれている。

 つまり、拷問器具の上に座っているわけで。非常にきつい。(江戸時代の拷問の石抱と呼ばれるヤツだ)
 これはやりすぎだろ。そう思いながら秋蘭をみるが、華琳と春蘭同様、当たり前だという顔をしている。
 他の面子はこの三人に押し切られた感じか……

 「さて、今度は蒼、貴方の土産について聞く前に、何処で桂花と知り合ったのかしら?」

 そう聞いてくる華琳の殺気が強まったことは気のせいじゃないだろう。
 だが、理由はわからない。取り敢えず、聞かれたことに答えつつ、理由を探ってみるのが得策か……

 「まぁ、賊に襲われかけてたのを助けて、暫くは一緒に旅をしていたっていう関係なんだが。これで満足か?」

 あの時はちょっと大変だった。
 賊に襲われかけてた桂花は男性不信になっていて、それじゃあ世の中、不便になるだろうと思い、森羅を中心として、心のケアを行った。
 結果は治ったようで、俺とは積極的に会話出来るまで回復した。(その時には森羅と敵対していたような気がする。)
 まあ、結局はさっき言ったことと同じなのだが。

 「はあ、……一応納得してあげるわ」

 「……嘘つけ」

 全然納得したような顔じゃねぇよな。
 そう思いつつ、愚痴ってみると、華琳に聞こえたようでとてもイイ笑顔になっていた。

 「私は、『一応』と言ったのが聞こえなかったのかしら、蒼?それとも今抱えてる石の数じゃ少なかったかしら?」

 「いえ!もう納得しておられるようで何よりです!」

 やっぱ無理!この覇王様に今逆らっては駄目だ。つーか愚痴もだめ、絶対に!
 主に、俺の足の感覚が無くなって来ているのが、理由で。

 「はあ、この話はここまでよ。
 蒼、貴方の『土産』について話なさい」

 ようやく、この話になった。……もういいや、拷問器具の件はもう黙ろう。これ以上何かを言って、状況が悪化するのは避けたい。

 「了解だ。
 まあ、最初に立てた目標は、物流を操作すること以外は概ね成功した。
 簡単にいうと、私兵百程ってのは紅蓮団のことだ。かなりの無茶にも対応するぐらいの力はあるからそのつもりでいてくれ。
 で、次に、物流の監視だが、各土地のでかい商人のところに連絡員を置かせて貰った。定期的にも戦の兆候なんかが出た時も情報が集まるようにしてある」

 いや、本当商人との交渉ってのはしんどかった。下手をしたら戦をするよりか神経を使った。

 「私としては、その二つも嬉しいけど、もう一つの『土産』が楽しみだったのだけれど……」

 そう不満そうに文句を言う華琳。
 ったく、分かってないな。普通、こういうのは最後のお楽しみみたいな感じで最後に発表するもんだろうが?
 そう思いつつ、口を開く。

 「まあ、そんなに焦んな。で、お待ちかねの王となるかもしれない者達についての情報だが、……これについては主観的な考えで喋らせてもらう」

 そこで、息を整え、回りを見る。
 此処で聞いて欲しいのは華琳、秋蘭、桂花、森羅、凪、真桜、沙和だ。前四人は情報として、そして後の三人には現在の俺達の状況を知って貰うためだ。まあ、残りの春蘭と季衣は……敢えて何も言わない。

 「まず、今、天下に近い奴といえば袁紹、袁術、董卓の三人だ。……まあ、無理だと思うが」
 
 「どうしてかしら?」

 「袁紹は……まあ知っての通りアレだ。辛辣な言い方だが、いくら勢力がでかいからといってそれを使いこなす器量はないし、部下の意見もあまり聞かない。
 袁術についても同じだ。客将として孫策とその部下がいるようだが……普通に隙を突かれて奪われるだろうな。
 後、両方とも民の評価が悪い。それが理由になる」

 「ええ、その二人については私も同評価よ。けれど董卓は?元々、凉州で善政を、そして今は洛陽で政治をしている。ぐらいにしか情報が入ってきていないのだけれど……」

 そりゃ、今まで殆どノーマークだった奴が出てきて都で政治をしているからな。手に入れてる情報はそれ位だろう。

 「董卓は軍師も武将も少ないが、優秀だ。それに董卓自身も自分の器量を見極めて皆の意見を聞ける優秀な主君だ。
 けど、アイツは天下を望んじゃいねえ。アイツが望むのは民や回りの人間の笑顔だ」

 「……随分と董卓のことについて詳しいわね。どうしてかしら?」

 と笑いながら聞いてくる華琳。
 というか少し怒ってませんかね華琳さん?こう賭け事する時とか戦の時に来る嫌な予感というのがビンビンするんですが?
 といっても正直に喋る以外に手はない訳で……

 「いや、そりゃ月の所に客将として約一年ぐらい働いてたんだよ。
 いや、さっきの本心を探る為に時間かけすぎたんだが、その分、信用を勝ち取って、色々朗報があるから……」

 って、なんで殺気が膨れ上がってますか、三人方?

 「……へぇ、月、月ねぇ。
 蒼、随分と董卓と仲が良くなったじゃない?」

 「いや、ちょい殺気抑えて、怖いから。ホント怖いから。ほら三人とも、笑顔、笑顔!
 ……ていうか、まだ話の続きがありますのでそれまでは手に持たれている、石を下ろして頂けませんか」

 不恰好ながらも土下座をして頼みこむ。プライドなんかもうとっくに捨ててる。今はこの状況の回避が最重要。理由は迂濶に真名を喋ったことが原因なんだろうが、今はどうでもいい。
 とにかく、恐らく石の追加は確実。
 だったらいい手土産を言って、見逃し、または刑の減刑を図るのが得策になる。
 少し間を置き、怒りが収まるのを待ち、話を再開する。

 「まぁ、朗報ってのはだな。なんと!時が来れば月以下、優秀な人材が我々の味方になる!
 どうですか、華琳さん?この土産で怒りを抑えて頂ければ幸いなのですが……」

 「ふーん。董卓とその配下が私達の味方ねぇ……。
 よくやったわね蒼。見逃してあげるわ。」

 よしっ、このまま土産の報告をして……

 「けど、董卓の他にあと何人ぐらい真名を預かってるのかしら?」

 と思っていた時期が私にもありました。
 あかん、阿修羅や阿修羅が三人もおる。
 ふー、落ち着け。関西弁がでてる。
 誤魔化す?……いや、ばれた時が怖い。
 やっぱりこれも正直に話すしかない。(森羅が喋ってばれる可能性もあるし)

 「えーと……全員董卓軍だから、月合わせて6人なんですが……」

 と、それを聞いた華琳は少し黙った後、親指を立てた。
 まさか、これはGJ、つまりよくやったという意味では?
 そういやこいつは愛でる者は男女問わないからな。
 と思っていると、笑みを浮かべたまま首を掻っ切る仕草をして、それを見た春蘭と秋蘭が頷きながら石を持ちながら此方に近づいて来ている。
 ……ああ、分かってましたよ、華琳がGJのサインなんて知らないことぐらい……けど、それにしたって現実逃避したくなるじゃない!!
 ってイタイイタイ!!ちょっ、お二方、重しになる石はもう少し丁寧に置くべきだろ、こう振りかぶって勢いよく投げおろす態勢に入らないd……







――「ちょっと話がズレたわね。話を続けてくれるかしら」

 「……了解」

 と言いつつ、俺の足に追加で置かれている石のせいで前が見えない状況になっているのは言わない約束だ。もう言っても却下される……というか怒りに火に油を注ぐ行動になるのがのは目に見えているし。

 「で、次は王の才を持ち、将来王になりそうな奴だが……」

 「まずは華琳、お前だ。才もあり、下にも非凡の者達が集まっているし、さらに増える。民の評判もよく、王としての覚悟も出来てる。それに……」

 「俺もいる……かしら?」

 「その通り!」

 「……で、他には誰かしら?」

 と俺のふざけに呆れながら無視した華琳はとっとと話を進めて欲しいご様子で。

 「後は、孫策の所だな。あそこは没落して、袁術の客将になってるが、一族朗党は大体従っている状況。隙があればすぐにでも力をつけるだろうよ。民の評判もこれまた良好って所だ」
 
 いや、ホントこれだけお膳立てが揃ってる所もそうないな。
 というかそれを殆ど放置してるって……いや袁術だからで納得か。

 「そうね、彼女達の才ならすぐにでも以前、いえそれ以上の勢力になるでしょうね」

 楽しそうに同意する華琳。
 ……つーか、さっきの台詞からして、自分で調べてんだろうが、文句を言えないというか言わない。
 実際、確認というかんじなんだろう。
 なんていうか自分と対等な敵の存在に期待している所がある。
 まあ、それが華琳の長所であり、短所なんだが……

 「最後に一人、今こいつはお供が二人だけの旅人だ。だけど、ソイツはお前異常に天に愛されてる。
 こんな言い方は好きじゃないが、お前が覇王の相だとすればソイツは仁徳の相を持ってる。
 化けたら、お前が期待する以上の存在になる」

 俺は笑みをうかべながら華琳に言う。
 華琳以外はなんか怯えてるように見えるが。

 「ふふふ、蒼、まるで獲物を見つけた獣みたいな笑みを浮かべているわよ」

 と注意している割には、華琳にも似たような笑みが浮かんでる。
 ま、皆も怯えてるし、その笑みを抑えて話を続ける。

 「っと、悪い。
 近い将来、いい感じに命を賭けれる賭場(戦場)に巡り合えるかと思うとな。
 ……で、話を続けるぜ?」

 「ええ、それで私の期待以上の存在になる人物の名前は?」

 「恐らく、もうそろそろ動き始めるだろう、人物の名前は……劉備 玄徳」

 ……そして、華琳の一番の障害にして、王としての大きな踏み台になる予定の人物だ。

-23-
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