小説『恋姫無双 槍兵の力を持ちし者が行く 』
作者:ACEDO()

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26話

 「〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜♪」

 「って、なんや隊長呑気に鼻歌なんて歌って」

 「お、なんだよ真桜。お前に似合わず固くないか?」

 「当たり前なの、隊長と違って軍として行動するのは初めてなの。それに華琳様の護衛なんて、固くなるななんていうのが無理なの!!」

 皆さんこんにちは蒼です。現在、俺は黄巾党討伐の為の軍の中軍で華琳の補佐についている状況です……てか、うちの幹部候補の部下2名がテンパってます。

 「お前らな、ちょっとは凪を……って凪?」

 「…………」

 「アカン隊長、凪は固まってるで」

 ……訂正、3名だ。まあ、理由は分かってるし、一応こんなことになることも分かるが、それじゃあ支障が出る。
 
 「お前らな……近い将来、俺がいない時、時には一人で華琳の傍にいなきゃいけない時もあるんだぞ。これぐらいは何時も道理に振る舞え、というかお前ら、最初に華琳と会った時は此処までひどくなかっただろう」

 「いや隊長、むしろあの時(20話参照)の恐ろしさがまだ抜けんというか……」

 「あれを思い出すだけでまだ震えが止まらないのー」

 「…………」

 その言葉と共に思い出しているのか震えている2名。というかそろそろ元に戻ってほしいのだがな、凪。

 「お前ら、ホントにしっかりしてくれよ……まあいいや、お前らに秘策を与えてやる。
 華琳をお前らの主だと思うから緊張するんだ。そこにいるのはなかなか胸と背が伸びないことを悩みを持つ一人の少女だt、ぐあらば」
 
 「だ、れ、が、なかなか成長しないことを悩みつつ、あらゆる方法を試してみるが、一向に成果が上がらずに少しだけ春蘭と秋蘭に嫉妬している美少女よ」

 「いや……、お……れ……はそこまでは言ってないし、美少女だとも、ぐはっ」

 「ふざけるのもいい加減にしなさい。それとも何かしら、そこまで私を貶めたいのかしら?いいわ、相手になってあげるわ」

 「いや、俺は貶めたいわけじゃなくてな、こいつらの緊張をほぐす目的で……」

 「…………」

 「いや、わかった。お前は美少女だ。だから無言で鎌を構えるな。そうだよな、ただ成長途中なだけ……って鎌を振るうな!!」

 「隊長、そらあかんでそんな事、女の子にとっては厳禁や。おとなしく捕まって裁きを受け」

 「そうなの、そんなことを無神経に言っちゃう隊長は馬に蹴られて死ねばいいの」

 「おわっ!……少しは自分の上官を助けるとかぐらいはしろ!というか沙和、馬に蹴られて死ぬのは恋路を邪魔する奴だけで十分だ!くそっ、凪、聞いているなら助けてくれ」

 「……すいません、さすがに今回は華琳様の行動は妥当かと」

 「おお、凪が元に戻ってる……じゃない!俺に味方はいないのか!」

 ツッコミも中途半端で、頭の中に華琳に追いつかれ、鎌が迫ってくるビジョンが浮かぶ。ああ、刻が見える………







 「ふう、貴方たちは私が用事をしている間、中軍の指揮をとっておいてもらうわ。安心なさいすぐに終わる用事だから」

そういいながら俺を足で踏みつつ指示する華琳……いや、これを普通に見てる兵士たちはどうよ!?うん、違和感はないからいいけど……いや、よくない。俺は罵られて悦ぶような趣味はない。というか俺はそういう高飛車なやつのデレ……いや、今すぐ思考を止めよう。さっきより踏む力が強くなった。

 「で、こんな芝居までうったんだ。何か問題でもあるのか?」

 「?」

 「いや、なぜ芝居の所で首をかしげる。まさか本気でこれをやってるのか?」

 「当然じゃない。なんで私が必要のない芝居をしなくちゃいけないのかしら?」

 「だが、こういうことをしたいのと別に聞きたいこともあるのは否定しないのな」

 「……いいから立ちなさい。全く、どうしてこういうことには敏感なのかしら。もう少し他の事にもその感覚を研ぎ澄ましてほしいモノね」

 そう愚痴られながらも、立ち上がり、体についている土を落とす。
 ん?ちゃんと研ぎ澄ませてるじゃないか。ちゃんと誰にも見られていないと感じて、喋ったんだ。他に何を研ぎ澄ませというのやら。全く、ウチの覇王様は無茶を言う。

 「その顔は分かってない顔ね。まあいいわ。それよりもちゃんと『準備』はしてくれたのよね?」

 「ああ」

 「それにしては付いてきているアナタの部下(紅蓮団)の数が少ないようだけど」

 「分かりやすいように配置してあるのは中軍に5名だけだが、前軍にただの歩兵に混じって20名入れてある。一応、秋蘭には話は通してあるからそこら辺の心配は無用だ」

 「そうしているのなら先に報告してほしいのだけれど」

 「ま、そこは事後承諾ってことで勘弁してくれ。
 それにしても本当にあるのか?その『太平要術』っていう書は。自分の望むものが書かれているとかいう摩訶不思議なことは華琳は信じないと思っていたんだが」

 今回の討伐任務で俺ら紅蓮団にはもう一つの任務がある。それは黄巾党が持っていると思われている『太平要術』の捜索及び奪還がその内容だ。一応、本来の討伐任務が最優先だが、それでもその摩訶不思議書物が相手が持っているとなると確率が低いが、少々厄介なことになるかもしれないという見解でこの任務が出されたというわけだ。
 全く、どこぞのツバメの海賊の持っている羅針盤かよ。ちなみに俺はその『太平要術』よりも羅針盤の方が魅力的だ。 

 「確かにね実際に見なければ信じなかった類でしょうけど」

 「つーことは見たのか。で、何が書いてあったんだ?まあ、お前のことだから、孫子の正しい見解とかが載っていたんだろうな」

 もしかして、胸と背が成長する方法だったりしてな。って何殺気出していますか、華琳さん?

 「今、失礼なこと考えなかったかしら?」

 「いや、全然」

 「本当に?」

 「アア、モチロンダトモ」

 そういうと、どこか納得しない顔で殺気を鎮めてくれる華琳を見つつ話を戻す。

 「で、聞きたいことはそれだけか?」

 「ええ、それだけだけど」

 「なら、とっとと戻るぞ、さすがに長時間遠征中に初陣の部下に指揮を任せるのは気が引ける」

 そう言いながら、隊列に戻ろうとするときに「帰ったら、問いただしてやる」とかなんとか聞こえた気がするが、気のせいだろう。……気のせいのはずだ。……気のせいだったらいいなあ。……だって張本人(華琳)がこっちに向けて殺気を飛ばしてるし……

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