第六話 〜今回は脳内日記にてお送りいたします・前編〜
あれから何日経ったのだろうか、仰向けになりながら空を見上げ、ふと考える。
どこかで人生の選択肢を間違え無人島生活が始まってからの日々、人生の全体で考えればそれは余りにも短い時間。
だがこの日々は後にも先にもこれ以上ないほど必死に生きていた時間だと思う。
俺こと神崎将の頭の中には走馬灯の如く記憶が駆け巡る。
〜無人島生活一日目〜
目が覚めたら周りは木々で覆われていて、眩しい太陽の光を浴びながら現状の把握に勤しむ。
右のポケットから通信機が鳴り出し、父の友人の不良執事から今の現状、これからどうなるかを聞かされた。
最初は何の冗談だと思いながらも頭で必死に考えながら交渉をするも、結果墓穴を掘ってしまった。
通信が切れ、無人島生活をどう過ごし、どう迎え撃つかを考えようと草木の中を歩きながらまずは水の確保をしようと決めた。
だが、俺の考えが甘かったのだろうか…、通信が切れ、ものの10分もしないうちに不良執事と書いてと読む生物と遭遇した。
その執事はこちらを見つめ、まさに獰猛な獣を連想させるような口を三日月型にして笑っていた。
その構図はまさに狩る側のライオンが、狩られる側のうさぎを見つけ喜んでいるようだった。
状況が理解できないながらも脚が動いたのはまさに奇跡か…、あるいは生存本能の賜物か…。
しかしここまでの接近を許し、狩られる側のうさぎが逃げ切れるだろうか?
答えは否、気づけば目の前に狩る側のライオンがいた。
頭が状況を理解したとき咄嗟に顔の前、顔面を覆うように腕をクロスさせ攻撃に備えた。
だが腕に攻撃は来ず、無防備な右側の腹の部分から衝撃が来た。
蹴られた、と思ったときにはもう吹っ飛ばされており、木々に当たることなく開けた場所に出た。
しかしそこで終わりではなく、そこは滝であった。
水が落ちたあとの下流ではなく、水が落ちる前の上流。
まるでスロー再生しているようにゆっくり、ゆっくりと滝に近づいていった。
だが滝に落ちる前に浮力がなくなり、転がるように滝に近ずいていった。
あと少し、もう左の片腕がダラン…と下に向けて降りている。
下流までの距離、水面までは目測だが100メートルはあるかもしれない。
げほっ、ごほっ…、っと息が出来ていないことに今更ながら気づき、蹴られた右の腹の部分を抑えながら混乱している頭の中を整えながら少し待ち、息ができるようになってくるまで待った。
気づけばまたも執事が近く、こちらを見下ろすような形で見ていた。
「生き――な?―れでこ――、だが――きのは―ただけない」
何やらしゃべっているが、こちらは頭がまだ混乱しているせいか、うまく聞き取れなかった。
「顔面―守―――はなく、ぎ―ぎりま―、―手の動きを見ろ。」
顔面?、守る?、ぎりぎりまで、手の動きを見る?
どうやらさっきの事を言っているらしい。
つまりは鬼ごっこしながら稽古しているということか?
もしそうならなんて鬼教官だ、ヘタをすれば死んでいたぞ。
俺はこの理不尽に怒りを感じ、いつもとは違い、素の自分の思いを言った。
「く、た…、ばれ…、糞爺…」
そう言ったら不良執事はさきほどの獰猛な笑いとは違う、今度は嬉しそうに口元を歪めていた。
なんだ?と思った途端にまた浮く感じ、いや、今度は落ちる感じがした。
そこで一日目の記憶は終わった。
〜二日目?〜
目を覚ます、生きていることに感動を感じながらまるで黒い悪魔の様にしぶといな、っと普段なら絶対言わない事を言い、自分のことを称した。
現状を把握するために周りを見る。
そこは当たり前のように木々であったが、昨日と違うのは後ろには俺が流されてきたのであろう川、前にある木々には木の実の様なものが成っていた。
とりあえず今日の食料と水は確保できたな、っと不幸中の幸いであった。
だがすぐには動く気にはなれず、しばらく仰向けになり目をつぶっていた。
〜三日目〜
昨日は俺の事を見つけられなかったのかあの不良執事は来なかった。
だが今日も来ないとは限らない。
朝飯の木の実と水をたらふく飲み腹を満たし、森の中を散策に出た。
しばらく歩いていたら、うさぎと遭遇した。
まさかここに生物がいるとは考えてなかった、確か漫画とかで遭難したり漂流したりしたらよく出てくる野生のうさぎ…。
木の実や水で腹を満たしてはいるが、体が肉、タンパク質を求めているのかうさぎに襲いかかろうとして、寸前でやめた。
捕まえてどうする、食うには火が必要だ。
しかし今火なんて持っていない。
それに俺は自分で言うのもなんだが可愛いものが好きだ。
もう少し年を取ったらネカフェにでも行こうかと思うぐらいだ。
そんな俺にこんなつぶらな瞳をしているうさぎを殺すことなんて…。
まぁ、やろうと思えばできるのが人間だが。
とりあえず別なところに行くか、そう歩き出した時に無意識に体が後ろに大きく跳んだ。
自分の行動に混乱する暇もなくさっきいた場所には不良執事がいた事に大きく動揺した。
「ほう、今のを避けるか」
っ!?
さっきの行動と今の言葉で頭が理解した。
今あの執事が攻撃してきて俺は今それを避けた?
「ふむ、回避能力は目に見張るものがあるな」
俺はこの執事から目を離さずに警戒しながらどうして避けられたのか考えた。
だが、思い当たるのは一つしかなかった。
「……ステータス」ボソッ
ステータス
名前:神崎 将
年齢:7
性別:男
種族:人間(転生経験者)
筋力:…………ランクC 次のランクまでのポイント=25000
↓
反射神経: ……ランクA 次のランクまでのポイント=?????
↓
耐久力:………ランクD 次のランクまでのポイント=5000
気力:…………ランクC 次のランクまでのポイント=12000
幸運:…………ランクC 次のランクまでのポイント=10000
知力:…………ランクB 次のランクまでのポイント=12000
↓
思考速度:……ランクD 次のランクまでのポイント=8000
所持能力
・反射神経
残りポイント:30000
わぉ…、所持能力が出てきたのもビックリだがまず目に入ったのは残りポイントだった。
え?30000?30じゃなくて?
なんでいきなり100倍に増えてるの?
これはあれか?
死に掛ける度に戦闘力が増す、某戦闘民族的なあれか?
なんというご都合主義!
だが助かる。
そして所持能力、これはあれか?めだかの箱に出てくる能力のやつか?
能力は確か…、物理攻撃からの回避行動を自動的に行う、だったかな?
なるほど、ステータスで反射神経を上げたらこの能力が出るのは必然だったと。
これに思考速度をプラスしたら最強じゃないか?
ふむふむ、モチベーションが上がってきたぞ。
ふふふふ…、反撃開始じゃボケィ!
不良執事に目にもの見せてくれるっ!!
その時はそんな事を思っていた。
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後書きです。
お読みいただきありがとうございます。
ぷるたぶっちです。
熱くなれ様
シンフォニア様
ロキサス様
再びの感想ありがとうございます。
そして更新を楽しみにしていただきこちらも書く気力アップです(笑)
今回の話は少しばかりシリアスを…、、、なんて思ってたんですがシリアスは書いてるうちにリアルでもシリアスになってしまいますね(笑)
ご都合主義よろしく能力が開放した主人公。
だが不良執事はそんなに甘くはない…。
次回は物理回避が鍵ですかね。
それと柔のスタイルですか…、柔と言えば合気道、柔道、サンデーの白浜兼一の流水制空圏とかが思い浮かびます。
できたら主人公には速度を重視してもらいたいのですが書いてるうちに作者も何が何だかわからなくなるんですよねー(笑)
感想、ご指摘、ヒロイン要望などがあれば受け付けておりますヽ(*´∀`)ノ。
次回は七話 〜今回は脳内日記にてお送りいたします・後編〜 をお送りいたします。
※補足
「反射神経(オートパイロット)」。過剰なまでの反射神経で物理攻撃からの回避行動のみならず反撃・奪取までを自動に行う能力。