小説『華麗なる戦火』
作者:裏音(雨月夜ノ歌声)

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世は戦争の時代。誰と誰が戦おうと、国同士が戦おうと、関係ない人間には関係がない。
そして戦争する人間には、どれだけ戦火が広がろうとも、人間がどれだけ死んでも関係がない。
「さぁお前たち、今日もいくよ!」
「おぉー!」
戦争のゲームのように楽しむ一派、楽戦派(らくせんは)。
この一派は戦争を一種の娯楽のように楽しみ、人間を殺していく。だが、この一派には鉄の掟があり、
何があっても関係のない人間を殺さないのだ。
そしてこの楽戦派の敵となる一派が、止戦派(しせんは)。
止戦派は、戦争を止める為に戦争をする一派。
犠牲なしには平和はない。という考えで、犠牲を出すことになんの躊躇もない。
だから関係のない人間が死に絶えようとも、止戦派は一切動じない。
「今日こそは止戦派をぶっ潰すよー!」
「おぉー!」
楽戦派のリーダー、レンナ。彼女は人を殺すことを楽しむというよりも、戦争によりあがる火や、煙、そして戦いを楽しんでいるのだ。
あくまでも、人殺しを好んでいるわけではな。
「今日は、止戦派を潰す。犠牲はいくらあってもかまわない。平和のためだ」
「承知!」
止戦派のリーダーは、ロック。彼は感情がないかのような冷たい瞳を持ち、人の死になんの同情もない。
ましてや、平和のための犠牲。それだけで、名誉なことだと彼は言う。

戦場。それは、大抵が使われた焼け野原。その方が、犠牲も少ないため、楽戦派はいつもここで戦う。
「引き付けてから打てよ。矢を無駄にするな。弾を無駄にするな。犠牲を出すな」
レンナがいつも戦う直前に言うせりふ。最後の犠牲を出すなを必ず強調して言う。
「必ず敵全員を殺せ。平和の為だ」
ロックも、平和の為だを強く言う。
「さぁ、きたよ。打て!」
「迎え撃つんだ」
楽戦派と、止戦派が激突する。その間に、レンナはロックの元へと走る。
大砲の音や、矢の飛び交う音。そして上がる火。美しさと、残酷さのある戦争。それが、戦い。
「ロック、今日こそは決着をつけようじゃないか」
「勿論」
二人の持つ刀が交わる。この二人だけが、皆のように矢を使わず、銃を使わない。
「ロック、腕を上げたね?」
レンナの刀が弾かれる。降参したとでもいうように、レンナは手を上げた。
「レンナ、もう終わりにしよう」
「ああ。さあ、取れ。この首を」
ロックがレンナの首に切りかかった瞬間、
「まだまだ甘いよ、ロック」
レンナは素早く身をかがめ、腰に刺さっている短刀を抜いた。
「さぁ、ショーの始まりだよ」
そういうとレンナは、美しくも戦場で舞った。
戦火の炎を背景に、レンナは美しく、それでいて華麗に舞い、ロックの心臓めがけて短刀を投げた。
「うぐっ…」
ロックが崩れるように倒れた。レンナはロックに近づき、その刀を取った。
「刀は無くなった。ロック、あんたにもう武器はない。急所ははずしてるから命は助かるよ。さぁ、戦争は終わりだ」
こうして楽戦派と止戦派の戦いは終わった。
だが、この世界の戦争は終わらない。たとえレンナとロックが引いたとしても、ほかが引かない限り、戦争は終わらない。
まだ犠牲はとまらない。戦争は、犠牲があっても終わらない。

FIN

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