小説『アールグレイの昼下がり』
作者:silence(Ameba)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

【赤梨 留奈 [アカナシ ルナ] 】


次の日、朝食を終えると廊下を歩きながら、ある事を考える。
勿論、あのメイドの事だった。

『ウム…。さて、どうやって落としてやろうか…』

赤梨 留奈[アカナシ ルナ]
聖慈の休憩中の世話役。
性格は少々活発気味。

『…活発…か…』

ふと乙の頭にとある人物が侵入した。
かつて海外留学中に乙は、手を出さずとも相手を敏感にする程の妖艶な眼光を持ち、その寡黙と手の速さから、
[沈黙のseduction]という異名を持っていた。

そして、もう一人…。
手の速さは乙並みで同じく妖艶な眼光を持ち、相手を快楽の虜にし、抜けられない人形の様にしてしまう人物がいた。
[踊る妖艶Doll]…

天真爛漫。
まさに乙とは正反対な人物だ。
何かにつけて乙に絡んでくる。

「クス…き・の・と♪」

ポワンとウインクして投げキッスを向ける、そいつの顔が浮かんだ。

「……」

頭の中から振り払うようにフルフル頭を振って、冷や汗を拭うと少し脱力感にうなだれた。

「はぁ…、何でこのタイミングでアイツの事なんか…」

ふと、前方を見ると瀾が窓をせっせと拭いている。

『これは良い所に…♪』

「よう、精が出るな」
「え?…あ!!乙様♪」
「今日は窓拭きか?」
「はい、いつも一通りはやっていますから」

窓側に寄り掛り仕事ぶりをジッと見つめる乙の眼差しに瀾は、少し照れ臭そうに顔を赤らめた。
あの時とは違う乙の瞳。

「…瀾」
「はい?」
「…しようか?この間の続き♪」
「え!!?」

サラリと言い放ったその言葉は爽やかな、この顔から…
いや、この口から出たことを一瞬疑ってしまう。

「あ、あの…///
で、でも私、仕事が…!!」
「手間は取らせない。…おいで!!」
「き、乙様!!」

瀾の手を取ると、素早く近場の部屋に引きずりこんだ。


パタン。カチャリ。


部屋の鍵を掛けると優しく抱き寄せる。
そこはゲストルームだった。

「…また、こうして瀾に触れたかった」
「き、乙様…///本当ですか?」

仕事があると拒んだわりには、万更でもなく嬉しそうに顔を赤らめた。

「もちろん。凄く逢いたかった」
「…////」

[逢いたかった]
確かに嘘ではないが、乙にとっては今さっき思い出してしまった人物を
[早く忘れたかった]が正しい。

「瀾…」
「乙様…///」

二人の唇が重なって熱いキスが交わされていく…。

-21-
Copyright ©silence All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える