コツコツ…
留奈は、瀾達がいるゲストルームを通りすぎ、聖慈の部屋へ向かっていた。
留奈が廊下の角を曲がったと同時にドアが開き、一礼をすると瀾が出てきた。
見事なタイミングで、瀾と留奈がはちあうことはなかった。
瀾は掃除道具を持ち、持ち場へ向かって歩いて行く。
コンコン…
留奈が聖慈の部屋のドアをノックすると、勢い良くドアが開き笑顔の聖慈が出迎えた。
「留奈ぁ♪」
「お勉強はお済になりましたか?」
「うん。今さっき終わったんだ♪」
「そうですか♪では参りましょう」
「うん♪」
聖慈は、留奈の手を取ると中庭へ急いだ。
「いい暇潰しになったな…」
乙が部屋を出て、留奈を探していると建物の外から聖慈のはしゃぐ声が聞こえる。
どうやら中庭の方かららしい。
声のする方へと足を運んだ。
──いた。
聖慈と留奈。
どうやらキャッチボールをしているようだった。
「留奈♪いくよぉ♪」
「はーい」
聖慈の投げたボールは天高く舞い留奈を越え、その先の乙めがけて落ちてくる。
ボフン…!!
見事にゴムボールをキャッチし、軽くその場でボールを上げるとまた手に返す。
「キャッチボールか?」
「あ!姉様♪」
「…あ…」
乙を見つけると、もちろん聖慈は駆け寄ってくる。
留奈は乙に向け一礼をした。
「姉様も遊びにきたの?」
「ああ、編入手続きが済むまで俺は年中、暇だからな」
「じゃあ、姉様もやろうよ♪
もちろん留奈も、3人で♪」
チラリと乙が視線を向けると、留奈は恐縮し、
「いえ、でも…節介、乙様がいらしたのにアタシは…」
そんな留奈をよそに聖慈が乙ににじり寄る。
「ねぇ、良いでしょ?」
「ああ、かまわないよ」
「やったぁ♪」
ピョンピョンと跳ねて聖慈は喜びを全身で表した。
そんな聖慈を見て、留奈と乙は視線を合わせ微笑み合う。
お互い三角形になると聖慈から乙へ、
乙から留奈、留奈から聖慈へ。
ゴムボールはスムーズに弾み、流れていく…。
聖慈にとっては、この上なく楽しい最高のひとときだった。