第八十五話 死滅
「はん!!てめえ何モンか知らねえが、吸い尽くしてやるぜ!!行けよ!!ファング!!」
はぐれ悪魔は下半身の百足の足から無数の触手を飛ばし、闇慈の力を吸い取ろうとした。しかし闇慈はそれを紙一重でかわしていく。
「逃がさねえよ!!閉じ込めな!!アブソリュート・コフィン!!」
闇慈の逃げ先を読んで、紫の棺に閉じ込めようとしたが闇慈はそれを超反応でかわす。
「やるじゃねえか。初見でこの連携を避けたのはてめえが初めてたぜ!!」
「その二つの能力はセイクリッド・ギアか?差し詰め人間が所持していたものをお前が奪っただけだろう?」
「ああ、そうだぜ!!俺は下級悪魔だったが主を裏切って、人間界でセイクリッド・ギアを持った人間を襲って手に入れたもんだぜ!!」
はぐれ悪魔はそれだけでは終わらずに嘲笑うように続ける。
「死んで行く奴らの表情は良かったぜぇぇぇ?死ぬと言う恐怖に煽られながら目の光が消えていく・・・ひゃーはははは!!!思い出しただけで笑いが止まらねえなぁぁぁ!!!」
その言葉とともに人肌だった体の色が紫色へと変わって行き、心と体も『悪』に染まって行った。
「何でだよ・・・何でアイツは人殺しを楽しそうに喋ることが出来るんだよ!?」
「道が外れてしまった悪魔と言うものはそう言うものよ、魔理沙」
「お姉様・・・フラン。何だか怖い・・・私も破壊する能力を持っているけど・・・あんなに笑う事なんてフランには出来ない」
外道的な言葉に魔理沙が声を張り上げるがレミリアが言い聞かせる。フランも全てを破壊するという能力を持っているが、あそこまで外道的には出来ないらしく、怯えていた。
「言いたいことはそれだけか?はぐれ悪魔」
「何だと?」
「今の言動ではっきりした・・・貴様は生きていくに値しない奴だと」
「ほざけぇぇぇ!!そんな鎌しか持ってねえ奴が俺様に勝とうなんざ、甘過ぎんだよぉぉぉ!!!」
はぐれ悪魔は再び闇慈を閉じ込めようとしたが、闇慈はそれを避けずに棺の中に閉じ込められた。
「なっ!?何やってるの!?あいつ」
霊夢にはその行動が理解できなかった。はぐれ悪魔は触手を伸ばし始めた。
「何だ?何だぁぁぁ?でかい口叩いた割にはあっけねえな!おい!!もう良いぜ・・・死ねよ」
「ああ・・・貴様がな」
闇慈が呟いた瞬間、憑依死神を発動させ、魔力を溜めたデスサイズ・ヘルで棺を叩き斬った。その棺は破壊させるとそのまま霧散してしまった。
「なん・・・だと!?俺様の・・・棺が一撃で壊された!?」
「お嬢様!!どういうことなのですか!?私でさえあの棺は簡単に壊す事が出来なかったのに!!」
咲夜を初め、レミリア以外は驚愕に満ちた表情を浮べていた。そしてレミリアはゆっくり説明を開始した。
「セイクリッド・ギアと言うのは、ごく一部人間の体に存在する規格外の力のことを言うのだけど、あのはくれ悪魔が出していた触手と棺もセイクリッド・ギアの力よ。でも・・・彼の持つ力はそれより遥か上に存在するわ」
「あの厄介な触手や棺より高ランクなのか!?」
「ええ・・・使い手によっては神をも殺す事が出来る力、ロンギヌスの一つ・・・ありとあらゆる『生』を斬り裂き、『死』を導く鎌【デスサイズ・ヘル】よ。その力は【ノスフェラトゥ】・・・つまり【不死】すらも斬り裂き、殺す事の出来る程よ」
それを聞いたレミリア以外の人は空いた口が塞がらない程、驚愕していた。
「てめえの鎌が・・・デスサイズ・ヘルだと!?認めねえ!!そんなこと認められっかよーーー!!!」
はぐれ悪魔が触手を闇慈に向かって一斉に伸ばしたが、闇慈はそれを一本一本正確に斬り裂いて行った。そして当然その触手は『生』を失った事により、霧散してしまう。
「俺のファングが・・・」
「余所見をしている暇があるのか?はあっ!!」
ズバシュッ!!!
はぐれ悪魔が呆然となっている間に闇慈は下半身を斬り裂いた。周りには鮮血が飛び散り、下半身は霧散してしまう。
「ぎゃあああああ!!!」
はぐれ悪魔が痛みでのたうち周っている間に闇慈はシャドゥ・ルーラーで影を操り、動きを縛る。そして【ダークネス・ハウリング】を放つ為に、両手と六枚の翼を一点に集中させ、魔力を集め始めた。
「放せ!!放せってんだよぉぉぉ!!畜生がぁぁぁ!!!」
「これで止めだ!!全てを深淵なる闇に引きずり込め!!ダークネス・ハウリング!!!」
闇慈は出来上がった球体に正拳を打ち込み、黒い極太のレーザーをはぐれ悪魔に放った。飲み込まれたはぐれ悪魔はそのまま消滅してしまった。そしてそのことを確認した闇慈はこう呟いた。
「輪廻の中で貴様がやってきたことを、省みることだ。・・・死神(おれ)からの宿題だ」
こうして小さな異変は闇慈の心の決断によって終局を向かえ、平穏な日々に戻った。
(後書き)
感想・指摘。よろしくお願いします!!