〜昼〜
あの後、俺は寝た。
流石に徹夜で一日過ごせる程のスーパーマン的な体は持ち合わせていない。
ボカロたちは、起こさないでいてくれた。
そのまま俺は夜まで・・・
寝ていたかったのだけれど。
「海斗、ちょっと起きて!」
と姉ちゃんに起こされてしまった。
俺は、多分平々凡々な一日の中で起こされた瞬間が一番機嫌が悪い。
「なんだよ・・・寝させろよ」
そうぶつぶつ言っていると、姉ちゃんが、
「「海斗に会いたい」って、お客さんが来てるのよ」
と言った。
「別に俺誰とも遊ぶ約束とかしてないけど」
俺はそう言ったが、
「いいから早く着替えてリビングに来なさい」
と言われてしまった。
誰だよ、ったく・・・そう心の中で愚痴りながら、着替えを済ませ、リビングに向かった。
そこには、理解に苦しむ光景が。
お客さん――と呼ばれていた人は俺の友達の原田 諒(ハラダ リョウ)という人物だった。
まぁ、それはいい。諒は仲のいい友達だし。
問題なのはその先だ。
諒は、ミクとキスをする直前だった。
「・・・あのー、えっと、諒?」
叫ぶことも喚くことも、また制止の言葉をかけることも出来ないでいた俺の口から漏れた言葉は、そんな腑抜けた言葉だった。
「お、海斗」「マスター!」ミクと諒が、同時に喋り同時に立ち上がった。
キスはしなかった。
謎なところはまだまだあるが、状況を理解し終えて一旦冷静になった俺が吐き出した言葉は、こうだ。
「なにやってんのお前ら」
自分でもびっくりするくらい低くドスのきいた声だった。
「こえーよ海斗」
諒が笑いながらそう言った。
「絶対思ってないだろw」
俺も、そう言って笑ったが、ミクが硬直していた。
「・・・どうした?ミク」
俺がそう声をかけるなり、
「ごめんなさいマスター!!」
と言ってミクはトイレに閉じこもってしまった。
え、ちょっと待ってくれよ。俺今トイレしたいんだけど?
「・・・えーと、とりあえずさっきの出来事の経路を説明するな」
諒がそう言い、経路を説明し始めた。
諒の説明によれば、
俺の家に来る→ミクに会う→事情を聞けば他のボカロは買い物中らしい→ミクと仲良くなる→キスに発展→俺が来る
みたいな経路らしい。
「てか、何お前ら恋仲に発展してんだよw」
というのが第一感想だった。
「もっと怒るかと思ったw」
と諒は言ったが、恋くらいは個人の自由だ。俺が制限することでもない。
・・・というか、俺、トイレ。
トイレのドアをノックすると、ミクが超高速でトイレから抜け出してどっかに行ってしまった。
そんなこんなで、俺は十分に睡眠がとれないまま一日を過ごすことになってしまった。
眠い・・・。