「………はぁ………」
春の夜の生暖かい風が、俺の頬を撫でる。
…家出してしまった。
あれは完璧に家出だ。うん。間違いない。
でも、金さえも持たず身一つで飛び出してしまった。これからどう過ごせってんだよこん畜生。
あー、季節が春でよかった。冬なら凍え死んでたわ(((( ^∀^)
……さて、どうしようか。
とりあえず今は近くの公園に居るが、ここだとすぐ見つかってしまう。街灯に照らされ輝く俺なら一発よ((ry
かと言ってすぐ帰るのも癪だ。俺はとりあえず行く宛もなく歩き出した。
…今何時だろ。あ、携帯すら持ってきてねぇんだった。
ぶらぶら放浪する俺。すると、後ろから誰かに話しかけられた。
「海斗」
「うぉえい!?」
意味のわからない声を上げ振り返ってみれば、そこには――
「………」
うん(´∀`)
「ぎゃああああああああ!!!!!!」
ストレートの髪を前にだらりと垂らし、ふらふらしていて、白く長いワンピースを着て、なんとなく前傾姿勢の女。
「ごめんなさいぃぃぃぃぃ!!!」
俺は夜の公園で近所迷惑な叫び声を上げ、逃げ出した。
「貞子!?何実在したの貞子!?!?」
躓きかけた身体をどうにか保って、俺は尚逃げる。
すると、貞子←に話しかけられた。
「ちょっと待って海斗!貞子じゃないって!!」
「いや貞子だろ!!!!」
貞子と話してる俺を誰か褒めてくれ…!!
「いや、違うから!」
ふと、声に聞き覚えがあることに気がついた。
「……ぅぉぇ…?」
涙目になりながら振り返ると、そこには――
「り、凛花!!」
そう、クラスメイトの遠藤 凛花(エンドウ リカ)がいた。ついでに女。
「いやーごめんごめん。おどかすつもりがまさか本気でビビるとは」
そう笑顔で(∀`*ゞ)テヘッ☆とか言う凛花。腹立つなこいつ(^言^)←
「寿命縮んだわ………てかお前なんでいんの」
本当、なんでいんのこいつ。
「いや、家出☆」
キラッ☆(マクロスF)とかやりながらこれまた楽しそうに言う凛花さん。もう尊敬しますよ。本当。
「家出☆って、んなに軽いもんなのかよ」
「まぁ日常茶飯事だからね←」
「お前んちどんな日常送ってんの!?←」
当たり前のように「日常茶飯事」とかほざけるところがすげぇ。凛花の日常覗いてみたいわ。
……いや、変な意味じゃないのよ(´・ω・`)
「まぁまぁ海斗さん、あなたも何故ここにいるのか教えて下さいよw」
「同じ理由だよ」
「マジでwww俺とお前同レベかよwwwwww」
「黙りんしゃい」
因みに凛花は、一人称が「俺」。悪戯好きの悪趣味女。あ、ここまで言ったらさすがにひどいか。
「……んで?金あんの?」
「あるわけないじゃんヽ(*´∀`)ノ」
最早開き直ってそう言うと、凛花は呆れ顔で、
「身一つで家出とかどんなだよwwwwwwwwww」
と笑った。ひでぇよ、しょうがないじゃんよ(´・ω・`)
「あ、じゃ俺やることあっから」
凛花は(`・ω・´)キリッとドヤ顔で俺にそんなことを言った。
「何やんだよ」
「夜じゃないとできないことさ☆」
と、ポケットから花火を出す。
「………季節感大丈夫?」
「大丈夫、お前よりイカレてない」
「俺どんな印象受けてんの!?季節感くらいあるわ!!」
「えー初耳(棒)」
「何お前!?」
「まぁまぁ怒らないで、ほら」
ポケットから飴ちゃん( ´ ▽ ` )
「お前のポケットなんなの!?四次元ポケットなの!?」
「夢と希望が詰まってます(`・ω・´)」
「最早怖いわ!!」
俺のテンションがすっかり上がった、その時。
「マスター!!!」
遠くから、ミクの声がした。
「あら、君のミクちゃんが呼んでますわよw」
凛花は茶化すようにそう言うと、花火を指と指の間に挟めてかっこよく(?)去った。
なんであいつ俺がボカロ所持してるって知ってるわけ…怖いわ、あいつ。もう本当に。恐怖だわ。
「マスター、どこー!?」
リンの声。まさかあいつら全員で探しに来てるとかねぇよな……。
俺は草むらに隠れる。
「マスター?」
レンの声。かなり近いな。うん。見つかるかも(´ω`)
「ま…マスター……ううぅ」
ちょ、レンの声が泣きそう!?どうしましょうか奥さん!?((
「マスターの居場所…発見。レンの近くの草むら。大至急捕獲に向かいます」
ちょwwwGUMIこえぇwww
てか何wwwもう見つかっちゃってんのwww
「はー……すまん、いやマジ」
俺はそんな言葉を吐きながら草むらから出た。
その瞬間。
「マスターーーーーーー!!!!!!!」
ミクが光の早さで駆けつけ、俺に抱きついた。
「マスター!!」
リンも抱きつく。
「マスタァァァァァァァァァ!!!!」
レンも抱きつく。
「いや待て、痛い!!」
俺はなんとか逃れようと頑張ったが、無駄な足掻きだったようだ。
「マスターよかった!!よかった!!!!」
ミクが心底安心したような声で言う。
あー……心配掛けたみたいだな。
「いや…わりぃ」
ぎこちなく謝る。
「海斗ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
すんげぇスピードで、姉ちゃんが来た。
するとボカロ達は俺を離した。なんだそれ(´・ω・`)
「あ…姉ちゃん」
俺は直視できずに、下に俯いた。
「その…ごめん」
目を合わせずにそう言うと、姉ちゃんは俺の顔を無理矢理上げ、ジーーーーッと直視してきた。
俺は耐え切れず目を逸らした。
「海斗」
「…はい」
怒られる…。いいよもう、ビンタでもなんでもしなさいよ。((
「…笑いな」
「………は?」
あまりにも予想外の言葉に、俺は姉ちゃんの顔を見た。
「だから、笑いなって」
姉ちゃんはそう言って、姉ちゃんらしい穏やかな顔でニコッと笑った。
「家出した気持ちもわかるし、親が嫌いなのもわかる。私はそれを責めたりしないから、笑いなよ。暗く沈んだ顔してたら、来る幸せも来ないよ?」
そう言う姉ちゃん。後光が差している。お前は仏様か。
「明日、本当の気持ち伝えなよ。後ろめたい気持ちを抱え込んだって、変わんないよ。…さ、風邪ひくよ。帰るよ!」
「え、ちょ」
姉ちゃんは俺の手を引いて…というか俺を引きずって、家まで連行した。
うん…そうだな、明日伝えよう。
姉ちゃんがいてよかったよ、本当。ありがとう姉ちゃん。
そうして俺は、すっかり明るい気持ちになって、「明日」という未来へ足を踏み出した。
……中二病とか、言わない。((