小説『ボカロ日常記録帳』
作者:螺旋()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>





「………はぁ………」

春の夜の生暖かい風が、俺の頬を撫でる。

…家出してしまった。

あれは完璧に家出だ。うん。間違いない。

でも、金さえも持たず身一つで飛び出してしまった。これからどう過ごせってんだよこん畜生。

あー、季節が春でよかった。冬なら凍え死んでたわ(((( ^∀^)

……さて、どうしようか。

とりあえず今は近くの公園に居るが、ここだとすぐ見つかってしまう。街灯に照らされ輝く俺なら一発よ((ry

かと言ってすぐ帰るのも癪だ。俺はとりあえず行く宛もなく歩き出した。

…今何時だろ。あ、携帯すら持ってきてねぇんだった。

ぶらぶら放浪する俺。すると、後ろから誰かに話しかけられた。

「海斗」

「うぉえい!?」

意味のわからない声を上げ振り返ってみれば、そこには――

「………」

うん(´∀`)

「ぎゃああああああああ!!!!!!」

ストレートの髪を前にだらりと垂らし、ふらふらしていて、白く長いワンピースを着て、なんとなく前傾姿勢の女。

「ごめんなさいぃぃぃぃぃ!!!」

俺は夜の公園で近所迷惑な叫び声を上げ、逃げ出した。

「貞子!?何実在したの貞子!?!?」

躓きかけた身体をどうにか保って、俺は尚逃げる。

すると、貞子←に話しかけられた。

「ちょっと待って海斗!貞子じゃないって!!」

「いや貞子だろ!!!!」

貞子と話してる俺を誰か褒めてくれ…!!

「いや、違うから!」

ふと、声に聞き覚えがあることに気がついた。

「……ぅぉぇ…?」

涙目になりながら振り返ると、そこには――

「り、凛花!!」

そう、クラスメイトの遠藤 凛花(エンドウ リカ)がいた。ついでに女。

「いやーごめんごめん。おどかすつもりがまさか本気でビビるとは」

そう笑顔で(∀`*ゞ)テヘッ☆とか言う凛花。腹立つなこいつ(^言^)←

「寿命縮んだわ………てかお前なんでいんの」

本当、なんでいんのこいつ。

「いや、家出☆」

キラッ☆(マクロスF)とかやりながらこれまた楽しそうに言う凛花さん。もう尊敬しますよ。本当。

「家出☆って、んなに軽いもんなのかよ」

「まぁ日常茶飯事だからね←」

「お前んちどんな日常送ってんの!?←」

当たり前のように「日常茶飯事」とかほざけるところがすげぇ。凛花の日常覗いてみたいわ。

……いや、変な意味じゃないのよ(´・ω・`)

「まぁまぁ海斗さん、あなたも何故ここにいるのか教えて下さいよw」

「同じ理由だよ」

「マジでwww俺とお前同レベかよwwwwww」

「黙りんしゃい」

因みに凛花は、一人称が「俺」。悪戯好きの悪趣味女。あ、ここまで言ったらさすがにひどいか。

「……んで?金あんの?」

「あるわけないじゃんヽ(*´∀`)ノ」

最早開き直ってそう言うと、凛花は呆れ顔で、

「身一つで家出とかどんなだよwwwwwwwwww」

と笑った。ひでぇよ、しょうがないじゃんよ(´・ω・`)

「あ、じゃ俺やることあっから」

凛花は(`・ω・´)キリッとドヤ顔で俺にそんなことを言った。

「何やんだよ」

「夜じゃないとできないことさ☆」

と、ポケットから花火を出す。

「………季節感大丈夫?」

「大丈夫、お前よりイカレてない」

「俺どんな印象受けてんの!?季節感くらいあるわ!!」

「えー初耳(棒)」

「何お前!?」

「まぁまぁ怒らないで、ほら」

ポケットから飴ちゃん( ´ ▽ ` )

「お前のポケットなんなの!?四次元ポケットなの!?」

「夢と希望が詰まってます(`・ω・´)」

「最早怖いわ!!」

俺のテンションがすっかり上がった、その時。

「マスター!!!」

遠くから、ミクの声がした。

「あら、君のミクちゃんが呼んでますわよw」

凛花は茶化すようにそう言うと、花火を指と指の間に挟めてかっこよく(?)去った。

なんであいつ俺がボカロ所持してるって知ってるわけ…怖いわ、あいつ。もう本当に。恐怖だわ。

「マスター、どこー!?」

リンの声。まさかあいつら全員で探しに来てるとかねぇよな……。

俺は草むらに隠れる。

「マスター?」

レンの声。かなり近いな。うん。見つかるかも(´ω`)

「ま…マスター……ううぅ」

ちょ、レンの声が泣きそう!?どうしましょうか奥さん!?((

「マスターの居場所…発見。レンの近くの草むら。大至急捕獲に向かいます」

ちょwwwGUMIこえぇwww

てか何wwwもう見つかっちゃってんのwww

「はー……すまん、いやマジ」

俺はそんな言葉を吐きながら草むらから出た。

その瞬間。

「マスターーーーーーー!!!!!!!」

ミクが光の早さで駆けつけ、俺に抱きついた。

「マスター!!」

リンも抱きつく。

「マスタァァァァァァァァァ!!!!」

レンも抱きつく。

「いや待て、痛い!!」

俺はなんとか逃れようと頑張ったが、無駄な足掻きだったようだ。

「マスターよかった!!よかった!!!!」

ミクが心底安心したような声で言う。

あー……心配掛けたみたいだな。

「いや…わりぃ」

ぎこちなく謝る。

「海斗ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

すんげぇスピードで、姉ちゃんが来た。

するとボカロ達は俺を離した。なんだそれ(´・ω・`)

「あ…姉ちゃん」

俺は直視できずに、下に俯いた。

「その…ごめん」

目を合わせずにそう言うと、姉ちゃんは俺の顔を無理矢理上げ、ジーーーーッと直視してきた。

俺は耐え切れず目を逸らした。

「海斗」

「…はい」

怒られる…。いいよもう、ビンタでもなんでもしなさいよ。((

「…笑いな」

「………は?」

あまりにも予想外の言葉に、俺は姉ちゃんの顔を見た。

「だから、笑いなって」

姉ちゃんはそう言って、姉ちゃんらしい穏やかな顔でニコッと笑った。

「家出した気持ちもわかるし、親が嫌いなのもわかる。私はそれを責めたりしないから、笑いなよ。暗く沈んだ顔してたら、来る幸せも来ないよ?」

そう言う姉ちゃん。後光が差している。お前は仏様か。

「明日、本当の気持ち伝えなよ。後ろめたい気持ちを抱え込んだって、変わんないよ。…さ、風邪ひくよ。帰るよ!」

「え、ちょ」

姉ちゃんは俺の手を引いて…というか俺を引きずって、家まで連行した。

うん…そうだな、明日伝えよう。

姉ちゃんがいてよかったよ、本当。ありがとう姉ちゃん。

そうして俺は、すっかり明るい気持ちになって、「明日」という未来へ足を踏み出した。

……中二病とか、言わない。((



-25-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




EXIT TUNES PRESENTS 煌千紫万紅大雅宴 feat.神威がくぽ from GACKPOID(VOCALOID)(ジャケットイラストレーター 鈴ノ助) 【数量限定オリジナルストラップ付き】
新品 \1477
中古 \379
(参考価格:\2000)