〜リビング〜
「・・・」
うん。
「・・・おい」
これは完璧にいじめだね。
「・・・んで・・・」
マジないわ。
「なんでネギ入りカレーなんだよ!?俺反対したじゃねぇか!!」
そう。朝、俺は確かに反対した。
なのに、このザマだ。どうしてくれる。
「ごめんマスター、オレも反対したんだけど、ミクがきかなくて・・・」
レンが申し訳なさそうに謝る。
いい。レンは悪くない。
「責任ないレンが謝ってるのに、なんでミクは謝らないんだよ!?」
「え、だってネギ入れた方が美味しいよ、きっと」
「きっとで済ますな!」
ミクはきょとんとしている。「何でネギ入れちゃダメなの?」とでも言いたげな顔で。
ダメに決まっている。だから、アカン飯だって。マジないから。凡人の思考回路じゃ追いつかないよ。
見ろ、リンも嫌そうな顔してる。レンもだ。メイコは呆れ顔だし、カイトは顔がひきつったまま直立不動。姉ちゃんだって「えー・・・」みたいな顔してる。
どうすんだよ、この惨状・・・。
「さぁ、みんな食べて!このカレーにはね、ネギエキスとネギの輪切りとネギの千切りと・・・」
「ネギしかないわよミクちゃん」
部屋から出てきたルカが苦笑いを浮かべながらリビングに来た。
ルカとは、巡音ルカという大人っぽいボカロだ。
「とりあえず、食べましょう。文句はそれからよ」
「文句って何さー」
ミクが若干怒りながらルカに言った。
まぁ、その通りか。
「いただきまーす・・・」
俺の声と同時に、他のボカロと姉ちゃんがいただきますを言った。
ミクは目をキラキラさせながら「感想聞かせてね!」とか言っている。
もう、悪い予感しかしないんだが・・・。
そして、一口。
「ぐぅッ・・・・・・!?」
やべ。俺死ぬ。
何だこれは。なんなんだ。世紀の終わりが来たんじゃないのか。
嗚呼、お花畑・・・ばあちゃん、じいちゃん、今行くよ〜・・・
こんなカレー初めて食ったぞ。もうルーがネギの味しかしない。ご飯はネギの炊き込みご飯らしいし・・・。
ぐぇぇ。吐きたい。今すぐモザイクかけていいからリバースしたい。
のぁぁ、何だこの感覚。食感。味。
全てが最低級だ。超超超最低級だ。
胃が、腸が、というか舌が、喉が、本能が、生理的に受け付けない味だよこれ。
うぉえ、もうムリ・・・。
バタッ
「あ、マスター!」
俺が倒れた。レンが支えてくれる。
うん。完全アウトだよこの味。
「どうしたのマスター?倒れて。そんなに美味しかった?」
いいえ、そんなに不味かったですミク様。
Sだ。ミクはそんなつもりないのかもしれないが。他人から見ればドSだ。サディスティックすぎる。
俺を、殺す気か。
結局、その後も完食するまで俺は食わされた。
地獄って、こんな感じなのかもしれないというくらい不味かった。
この日のカレーの味を俺は一生忘れないだろう。
一つ、学んだこと。
ミクに、カレーだけとは言わず料理を作らせてはいけない。
もし、作らせたりしたら――
世紀の終わりだ。