小説『ソードアート・オンライン〜Another story〜』
作者:じーく()

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27話 キリトと5人のパーティ






























2023年4月8日




ここは第10層の迷宮区。

……主にゴブリン達が塒にしている迷宮だ。

「ふぅ……。まぁ こんなもの……か。」

リュウキは、剣をしまう。

リュウキは、別にこの場所にレベルあげに来たわけではない。

欲しい素材があったわけでもない。

彼は、定期的に 各ダンジョンを【視て】回っているのだ。

モンスターたちの情報、そして、アルゴリズム。

それにイレギュラー姓がないのか?

もしあったとして、……それはどのタイミングでなるのか?

致命的な行動は無いのか……?

それらを【視て】回っているのだ。

何かわかれば、それをアルゴに譲る。

そして発信してもらうのだ。

別に……誰かに頼まれているわけでもない。

適当に探索しているだけだし、狩場のつもりも毛頭ない。

レベルはその過程で上昇して行くが、場を荒らしたりもしていない。

……下層の狩場を強さにものを言わせ、上層のプレイヤーが荒らしたりすれば、上層のギルドに排除以来が飛び、散々つるし上げられた挙句、新聞の非マナープレイヤーとしてのってしまう。

それに、それが≪ビーター≫と呼ばれているプレイヤーならなおさらだ。

「まぁ……そこまで、目立つような事はしてないがな……。」

リュウキはそう呟く。

様々な場所を転々と歩き回っているリュウキ。

それは非常に効率の悪い狩であり、誰もそんな印象を残さないのだ。

「さて……」

リュウキはあたりを見渡す。

どうやら……粗方モンスターを狩ったからか、殆ど出現する気配がなかった。

早くに狩ればPOPするのに、時間が掛かるのだ。

「ふむ……。」

リュウキは場所を変えることにしていた。

その時……。





≪きゃああっ!!≫





……迷宮に声色から女性であろう悲鳴が響き渡った。

建物内であるせいなのか、壁・天井に音響が反射するように設定されているせいなのか わからないが、屋内の戦闘や叫びはかなり響き渡る。


「……いくか。」


誰かに危険が迫っているのは間違いない。

このデスゲームでもう、千数百人と言うプレイヤーが命を落としている。

限りなく死亡者を0にしようとしても……。

……交通事故死亡者を0にしようとするような試みのように……。

到底無理な事だった。

いかに様々な情報を集めても……。

変わらない。

だから、せめて……この目に写る者は……この耳に聞こえる助けを請う声位は救わないとな。

リュウキはそう考えていた


そして、向かった先には、





意外な光景だった。





6人のプレイヤーがそこにはいた。

ゴブリン集団に襲われている様に見えたが……。

「ちょっと前 支えてましょうか?」

それは……見覚えがある人物だった。


頭の先から足元まで真っ黒の服装。

そう……同じソロプレイヤーのキリトだった。

キリトは棍使いにそう言っていた。

どうやら、助太刀するようだ。











「キリトがいれば……まぁ 大丈夫か。」

リュウキは出て行こうとしていたが、直ぐに止めた。

……とりあえず、裏方に徹しよう。

リュウキは再び剣を取り出した。

「……あの集団。コアのMobを潰さないと、只管出てくるんだったな。」

キリト達が対峙しているゴブリンの集団。

あれとはこの層を主戦場にしていた時に相当やった相手だった。

そして、最近視て確認したところ、

リーダー格ではない、仲間を呼ぶゴブリンがいるのだ。

放置をしていれば、通常の倍以上の速度で再出現するのだ。


「視たところ……後ろで待機している【あれ】だな。」

あのパーティから不自然に離れたところで動かないゴブリン。

遠くから見れば一目瞭然なのだ。

それは……リュウキだけかもしれないが。

「行くか………。」

リュウキは構えなおして、歩を進めた。






















「あれっ?急に少なくなった?」

槍使いの女性が声を上げた。

「えっ……?」

キリトは少しオカシイ…と違和感を持っていたようだ。

この集団は簡単に少なくなるような事は無い。

少なくとも今の倍は狩るか、逃げるしかないのだ。

「よかった!たたみかけよう!」

棍使いのリーダーがそう叫ぶと、皆が頷く。

勿論……キリトも最後まで気を抜かず、サポートに徹していた。

剣技スキルも、上位のものを使用しないで、下位のもので。

そして無事に、ゴブリンの集団を撃破することが出来。

結構離れていたリュウキにまで、届くほどに盛大に歓声を上げていた。

そして、ハイタッチの繰り返し……。





















それを遠目で見ていたリュウキは……。

戸惑いながらも、共にハイタッチをするキリトをみて微笑んだ。

「まぁ……アイツもあんな顔できるって事……だな。ソロは良い所もあるが悪い所もアルハイリスクハイリターン。 仲間が出来ればそれに越した事は無い……。」

あのメンバーとキリトを見て、顔が緩むのが止められない。

いや……それだけでない。

これは……この感情って……。

「羨ましく……思っているのか?オレは。あの雰囲気が……?」

頭を過ぎる……。

だが、それも直ぐに一笑する。

「……そんなバカな。」

そして、リュウキはその場を離れて行こうとしたその時。














「やっぱり、お前だったか……。」


声が……聞こえてきた。

「……キリト。」

いつも後ろからだ。

キリトは。

「今のは仕方ないだろ?お前が離れようとしたんだから。」

先手を打つようにキリトがそういった。

まぁ、間違いではない。

「……それで?あのメンバーと共に行かなくて良いのか?」

リュウキはそう聞く。

「ああ、少し待ってもらっている。この場に知り合いが来ていたからちょっと話してくるって言ってな。」

キリトはそう答えた

「そうか?それで何か様か?」

「いや……その、一緒にこないか?」

キリトが誰かを誘う……。

あまり無い事だな。

だけど……。

「………まだ する事があるんだ。」

リュウキは、顔を暗める。

確かに……羨ましくもある。

だが……それでも……。

最後の一線を越えられない。

「悪いな……キリト。」



――……何かを背負っている。


いつか……レイナに聞いた言葉だ、

今ならよくわかる。

集団に馴染めないのは自分も同じだ。



………だが、リュウキは何か違う。

自分のそれとは比べ物にならない何か。



リュウキとは、BOSS攻略の時は共に参加する。

その際、彼は迷ったりはしていない。

そして、拒否も……したりしない。

あの時と今の差は……?





「……キリト。行け。また……襲われているかもしれないぞ?」

リュウキはそう言うと、後ろを向いた。

「……ああ、わかった。じゃあ……。」

キリトは手を上げ……。

「BOSS攻略でな……。たまにはコンビを組むっていうのも悪くないだろ?」

笑って言った。

リュウキはその言葉を聞いて……。

「………ああ。またな。」

振り向かず……。

手を上げた。



そして、迷宮区の奥へと消えていった。




























「アイツは……何を……何が……。」

キリトは、柄にも無く心配しているようだった。

何を心配する?

あの戦闘能力、洞察力、観察力。

全てのスキルが一線を越えている。

ゲームバランスを崩しかねないほどに。

そんな男の何を心配する事がある?






「あの………。」

槍使いの少女が……キリトの傍まで来ていた。

不安……だったようだ。

「ああ、ゴメン。今から行くよ。」

キリトはそう返すと、皆の所へ向かっていった。


「あ……あの、さっきの人……いいん……ですか?」


まだ、恐怖心が去っていないのだろう……。

その言葉は震えていた。

「ああ、まだすることがあるってさ。それに心配しなくて良い。オレがしっかりカバーするから。」

キリトは少女が落ち着くよう……

微笑みかけた。

「あ……っ、う……うんっ。」

少し……軽くなったようだ。

ぎこちないが……笑顔で返して言った。

そして、キリト達は……この迷宮区から離れていった。














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