小説『猫語-ネコガタリ-』
作者:†綾†()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第九話【居場所】


長い間止まっていた時計が…今動き出した。

「…朽田君が私の力に…?…面白い事言うのね」
「…でも伊坂が、別に前の奴ら似たいに裏切られると思うんなら、
 信じてもらわなくても構わない。でも俺は前の奴らと同じじゃない。ちゃんと見ろ、
 …朽田羽乃だ」


伊坂が、下を向いたままでよく表情がわからない。
嬉しいのか、それともただのおせっかいなのか。

すると、返事を待つうちに、バスはキキッと止まり自分のバス停まで、
もう来てしまった。


…返事を聞けなかったな

でも…言えることは言った。
よいしょと、俺はもう降りなければいけないので、
席を立つ。そして鞄を持って、歩き出そうとした

その時、

俺はパシッと手首を伊坂に捕まれていた。
そして、小さな声で俺に言った

「朽田君、私は貴方を…信じてもいいの」
「…ああ、もちろん」
「…そう、有り難う。じゃあ…また、明日」

そう言って、伊坂は俺の手首から、
するりと手を離した。

「また、明日な」

俺は降りてから、窓側にいる伊坂に手をふった。
伊坂はそれに答えて、小さく笑った。

その後俺は家に向かって
歩いていた。


「う、あ〜疲れた〜…、家帰ったら寝よっかな…」

のび〜と、猫のように背伸びをして
肩の力を抜いた。

歩いて帰るのには、5分ぐらいでつくので、
近くのコンビニでも寄ろうかな、などと思いながら、
歩いていた。

すると、道の端っこの方に、
ただ道路をじっと見ている小学校4年生くらいの男の子が
大きな傘を持っていた。

…雨なんて降っていないと言うのに。


【続く】


-10-
Copyright ©†綾† All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える