小説『猫語-ネコガタリ-』
作者:†綾†()

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第十二話【関係 後編】


そしてバスが動き出した。

俺は、昨日の帰りと同じ席で、
昨日のことを思い出していた。

伊坂に…今日聞いてみようかな。
「伊坂泉」という少年のこと、
…鈴のこと。でも伊坂は昨日、

「今貴方に理由を話すべきではないわ」

…なんて、言ってたっけな…どういう意味なのか、
つくづく謎に包まれた人たちだ。
伊坂泉…どうしてあんな所に一人で居たんだろう。

こんな事も言っていたし…


【昨日、午後6:23】 

「…私は、朽田君を信じてもいいの」
「ああ、もちろん」
「有り難う…、あとそれと朽田君、このこと…誰にも、言っては駄目。」
「…りょーかい」

伊坂は安心したのか、大きく息をはいた。

「そう、じゃあ、…また明日」
「また明日。」

…とまあこんな感じだろう。すると

「あ、痛」

頭をバスの窓にゴン、とぶつけた。

「キキッ、次、止まります…」

バスが信号で止まり、急ブレーキをかけた。朝あまり寝れていなくて
うとうとしていた俺は、ハッと目が覚めた。
すると、乱暴にバスは再び動き出した。
ゆっくり眠れやしない。…学校で寝るかな。

するとバスはまた次のバス停で止まり、外から同じ学校の
制服の女の子が乗ってきたと思った。
だけど、それは見たことのある顔の同じクラスメイトの

「おはよう朽田君、朝から眠たそうな顔してるわね」
「あ、れ…伊坂?…お前もバス通だっけ?」
「いやだわ、昨日バスに一緒に乗って帰ったじゃない。それと、隣、いいかしら」
「ん、ああ」

バスに乗ってきたのは昨日初めて口を交わしたばかりの
伊坂寧だった。そして俺はそうだ、と思い出し
誰にも聞こえないような声で伊坂に言った。

「なぁ伊坂、お前兄弟とかいるか?」
「…どうしてそう思うのかしら」
「昨日、お前と同じ名字の「伊坂泉」って言う子に会ったんだ」

すると伊坂は、何か思い出したように言った。

「泉に…?泉に昨日会ったの?」

伊坂は少しビックリしたような顔をして、俺に問いかけた。

「そう、伊坂泉って子。ちょうど小4ぐらい」
「…朽田君、泉「達」に会ったのよね、…帰ってきたのかしら」

…帰ってきた?

「伊坂、泉とはどういう関係なんだ?泉は親戚だって言ったけど」
「…ええ、親戚。泉も伊坂家の一人よ。だから、泉にも鈴が付いていたでしょう」
「ああ、伊坂と同じ鈴が付いてた。」

伊坂はやっぱり、と言うようにため息をついた。
…やはり、あの、鈴に意味があるのだろうか

「なあ、…泉も、お前と同じ「何か」…なのか」
「…そうだと言ったら?」
「別に」
「…そう言うと思った。朽田君は脅かしようがないから」
「…お前な…。」

すると、いつの間にかバスは学校に着いていた。
俺と伊坂はバスを降り、教室へと向かう。
そしてチリン、と鈴が歩くたびに鳴る。

最初、聞いたときと同じ音を鳴らして。

【続く】

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