第十三話【十二支の猫】
鈴が鳴り響く中、
1年4組の俺達は、教室に入り、ガタリと席に座った。
「なぁ、伊坂。話、したいんだけど…いいか?」
伊坂に、話しかける。
「別にかまわないけど…もしかして、それは昨日の事かしら」
「…まぁ、そうだな」
「分かったわ、じゃああそこに行きましょう」
すっと立ち上がり、伊坂の長い髪が靡いた。
綺麗だな、と思いながら俺も自分の席を立った。
何処へ行くのかと思ったら、伊坂の足は屋上へと向かっていた。
屋上は確かに、ほとんど誰も来ない。
伊坂は屋上に続く階段を上っていった。
ドアを開くと風が勢いよく入ってきた。
「…ここなら誰も来ないでしょうからね、いい眺めでしょ」
「そうかもな、屋上は人も少ないだろ」
「…で、話とは何かしら、朽田君」
くるりと振り返った伊坂の顔がいつもと違った。
…聞くなら、今だろう。
「お前の事と、お前に関わる「人達」の事を聞きたい」
「…朽田君は、本当に私の力になりたいって…事よね、その質問は」
「ああ、」
「…なら、話してもいいけど………、ないで」
風の音で最後の方の言葉が聞こえなかった。
だからもう一度伊坂に問いかける。
「…?ゴメン、伊坂。最後よく聞こえなかったんだけど…」
伊坂は下を向きながら、もう一度口を開いた。
「……話してもいいけど…、」
「私と、関わったこと、…後悔しないで」
後悔…?何故後悔なんてしなければいけないんだろう。
今こそそれを聞くべきじゃないか…?
「なんだよ、後悔なんて、するわけないだろ」
「…、でも、今から言うこと、決して話してはいけない、…これは絶対」
「…分かった。…約束する」
すると、伊坂は俺に向かって微笑んで笑ってくれた。
…多分伊坂は滅多に笑わないから、これは貴重な一面だったのかもしれない。
「じゃあ、何から聞きたいのかしら。」
「…じゃあ、なんで伊坂は、「猫」という「化け物」なんだ?」
「…私たちの一族は、「猫」と言う「十二支」に入れなかった「猫」に
一番近い存在なの。だから、私たちの一族は「猫」と言う化け物に
呪い取り憑かれた「存在」と言うこと」
「…十二支、の…?猫に?…じゃあ昨日会った泉もなのか?」
「ええ、その証が、この鈴」
チリン、と伊坂の手にはあの鈴。
泉にも付いていた。…鈴。
「でも猫にはどうやってなったんだ?」
「そんなの簡単よ、この鈴を外すだけ。」
すると鈴を手で外すと、ボン!と煙が広がり、伊坂の制服だけが残されていた。
何処だと見渡すと、制服の下敷きになっていた。
「うおっ!伊坂、そんな所にいたのか…ビックリした」
「朽田君が見た猫、私でしょ」
「猫」の伊坂は首をぶるぶるとふって、首輪を付けた。
そう、俺が見た、あの時の青い目をした、黒い猫だ。
【続く】