小説『猫語-ネコガタリ-』
作者:†綾†()

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■第十五話【伊坂雅希-イサカマサキ-】


今日は何だか早く学校が終わったような気がした。
そして伊坂は、『用事がある』と言ってさっさと帰ってしまった。
兎織も相変わらずのバイトなので急いで帰った。

そんな俺はいつも通りバス停に向かって歩いていた。
そして、よそ見をしていたせいか、角っこの電柱に、
ゴン、と大きな音がして思いっきり頭をぶつけた。

「いっっっっってェェえ…!うっ…」

ぱたりとそのまま気絶した。
あまりの衝撃で、気を失ってしまった。
思いっきりいったなあ…今。



「…あれ、この人…ねぇ僕が会った人この人だよ!寧お姉ちゃんを知ってる人!
 ほら、前話してたでしょ雅希、…あれ、何か頭から血が…」
「ええっ!?ち、血!?何でこんなところで「人」が血ィ流して倒れてるんだ!?」
「あ、電柱にも血があるよ雅希、きっとぶつけたんだよ〜家まで運んであげようよ!」
「ばっ…おま、この、「羽乃」って奴、人間だろ?家って「俺ら」しか
 いねえんだぞ」
「いいでしょ別に〜…あ!悠一がいるじゃん!ほら早くお兄さんおぶって!」
「…ったく…泉…じゃあコレ持ってろ。おぶるから」


すると少し意識が戻った。その瞬間
身体がふわりと浮いた。と思ったら…誰かにおぶられている…?
誰だろうか。

その隣には……あれ、泉…?何でこんな所に…。


その後また俺は気を失ってしまった。







■伊坂家

目を開くと天井が映っていた。…ここは……何処だ…?
部屋は和室で、とても広かった。

身体を起こし、ぶつかった所を触ると、おでこにはバンソウコーが貼られていた。
血…出てたのか。電柱で。

すると、誰かがこっちに来るような足音がした。
するとふすまがスッと開いた。ふすまの先には、…年下だろうか、
男の子が立っていた。

「だいじょーぶか、お兄さん。」
「あ、…運んでくれたのか…?」
「道ばたに人が倒れててほっとくような奴はいねえよ。」
「はは…、そうだな。…とりあえず、有り難うな」

その男の子は真っ黒な髪の色をしていて、
目が赤かった。この子が運んでくれたのか…なんか俺、電柱でぶつかって
その上、年下かと思われる子に運ばれて…なんだコレ。
でも…身長は同じぐらいか…。

「お兄さんの名前って、「羽乃」っていうんだよな?」
「…ああ、何で知ってるんだ?」
「俺、さんざん泉にアンタの事聞かされたからな…泉が、
 面白いお兄さんに会ったんだーってな。」


男の子はにやりと笑った。…やっぱり泉だったのか。
…そう言えばこの子の名前は何だろうか。

「なあ、君の名前はなんて言うんだ?」
「俺?俺は「伊坂雅希」。雅希でいいよ」
「伊坂…?じゃあお前も……猫なのか?」






「…ああ、その通り。俺も…「猫」だ」







またにやりと笑って、手首の鈴を俺に見せつけた。





…また「猫」を見つけた。


【続く】

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