■第十六話【扉の先に】
猫…。ああ、猫。これで三人目か…伊坂、泉、…んで助けてくれた雅希、…と
来たか…本当にここは猫に憑かれた一族って事か…。
すると雅希は、
「なァ、アンタの事、「羽乃」って呼んでもいいか?」
「ああ、別にかまわないけど…、ん?」
また廊下の方からドタドタ足音が聞こえてきた。
そしてふすまがまた勢いよく開かれた。
その先には、
「お兄さーん!大丈夫?頭、もう痛くない?」
そこにいたのは泉だった。
「どうしたんだよ、そんなに走って」
「え?んとねー、寧お姉ちゃん連れてきたんだ。」
「伊坂…?」
見えなかったが、扉の向こうには伊坂が立っていた。
そしてゆっくり俺に近づいてきた。
「朽田君、…頭、大丈夫?泉に聞いたんだけど」
「あ、ああ雅希が運んでくれたおかげで、…なんとか。」
「そう、ああそれと泉、悠一は?」
…悠一…?誰だろう。また伊坂の仲間なのか。な。
「ずっと部屋で仕事してるよ、顔くらい見せてきなよ。」
「そうね、…雅希、アンタは?」
「俺はもう会ってきたから、寧、お前行って来いよ」
…悠一。ここの家の人だろうか。
ならばお礼を言いたい。いきなり連れ込んで、
寝かせてもらっていたのだから
「なあ伊坂、俺もお礼言いたいんだけど」
「…いいけど、もう立ち上がって大丈夫?」
「大丈夫、打っただけだからな」
伊坂はそう、と言って悠一という人の部屋に
案内してくれた。思った通りこの家はすごく…広すぎる。
きょろきょろしていると、またどこかでぶつかりそうだ。
…このへんにしておこう。
「ここよ、3年ぶりだからね。まぁ…変わってないと思うけど」
そう言って扉を開いた。
そこには机に這いつくばっている男の人が居た。
…寝てるのか?
すると、伊坂がその「悠一」という人に声をかける。
「悠一、起きて。お客よ。…女の子の」
ガバぁ!!
一瞬にして起きた。…やっぱり寝ていたのだろうな。
しかしどういう言葉で起きるんだこの人は
その男の人はゆっくりと身体を机から離す。
「ん…?あれ、寧ちゃん?久しぶりだねー、まだみんなは来てないの?」
「まだ。泉と雅希と私だけよ。「猫」はね」
「…寧ちゃん………君、まさか…猫以外といったら…彼「ドスっ」」
伊坂がドスッと一発くらわせていた。
いまは入った。
「痛てててて…じょ、冗談だよ…う゛っ。彼は道ばたに倒れていたんだろう?…朽田羽乃くん」
悠一と言う人と目が合った。その人はにっこり笑っていた。
痛むだろうに。
「あ、はいスミマセン、お部屋をお借りして…お礼を言いにきたんですけど」
「そんなのいいさ。雅希だって人を担ぎたい気分だったんだよ」
「誰がそんな気分になんざなるかよ!人助けっていえよ!」
雅希も後から泉とこの部屋に来ていた。
はっはっは、とその人は無邪気に笑う。
まるで、…本当の家族みたいだな…。
そんな微笑ましい事を思っていると、ふっと時計が目に見えた。
【8:36】
デジタル時計はその数字を俺の目に焼き付けた。
(もう…夜じゃねーか)
【続く】