小説『猫語-ネコガタリ-』
作者:†綾†()

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■第二十話【目】


「微妙に目の色、違うよな」
「うん、みんな黒い猫さんだから、見分けるために
 目の色が違うんだよ」

まじまじ泉の目の色を見ていると、やっぱり綺麗だなと思った。
普通の緑と言うよりも、色と色が混ざって出来た
エメラルド色に近い緑だった。

「伊坂も確か綺麗な青色だったな。何か引きつけられる感じ」
「そうだね〜僕は緑で、寧お姉ちゃんは青色で、
 雅希は多分、赤色だったよ。燃えてるみたいに真っ赤なんだ!」

泉は雅希の目の色が大変気に入っていた。
何だかカッコイイ色だから、と。

なんやかんや、と話しているうちに泉は
やっと人間の姿へと戻った。
伊坂も、時間がたつと元に戻った。先生にばれちゃまずいからな。

「あ、忘れてた!僕部屋で宿題しなきゃ!」

そういってばたばたと階段を駆け上がった。
泉、俺、雅希、伊坂は2階に部屋がある。

1階にリビングと悠一さんの部屋があるのだ。


俺も部屋に戻ろうとしたが、確か雅希が、
『後で勉強おしえてくれよ』なんて言っていたのを思い出し、
雅希の部屋に向かった。


「コンコン」


と扉をたたいた。雅希はすぐドアを開いた。

「お、羽乃、勉強教えてくれんの?有り難いねぇ。」
「ってお前が言ったんだろうがー。」
「まあまあ、入れば?明日までなんだよ課題がさ。」

部屋にはいると、意外とシンプルな部屋だった。
思ってた以上に。

そして雅希が折り畳みの机を引っ張り出し、その上に
ノートと教科書を広げた。

「うっしゃー!やるぞーっ」
「よいしょ。ここ、座るぞ」
「ああ、じゃさっそく………。」

カリカリとノートに鉛筆を走らせた。
…だけど走らせていたのは前半だけで、後半はぐったり鉛筆は止まっていた。




「…雅希、お前まだ5分もたってないぞ」
「…俺、頭悪ィからコレくらいしか解けねぇんだわ。」
「さいですか。」

まさかこんなに早く倒れるとは思いもしなかった。
…5分て。

仕方ないから、解き方を教える。
カリカリとむしろ俺が勉強してるみたいだが。

すると雅希も分かったのか、そっかそっかー、と言って
再び鉛筆を走らせた。

数分後、分かってきたのか自分で解き始めた。
その時、雅希は小さな声でつぶやいた。


「…実散にも学校、行かせてやりてぇなぁ」


「…」

そのつぶやいた声は俺の耳から離れなかった。
きっと雅希は学校という、楽しさをもっと知って欲しいんだと思った。

「…実散ちゃん、早く元気になるといいな」
「…そうだな、あいつ昔から体弱かったから、
 仕方ねぇんだよねー。」

ははっ、っと雅希は再びノートとにらめっこをしていた。
それから、雅希は下を向いたまま、俺と目を合わせようとしない。

…何故だろうか。


【続く】

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