■第二十五話【逃走猫 其の弐】
■放課後
「さ、朽田君。行きましょう」
チャイムと同時に伊坂は席を立った。
伊坂もやはり実散ちゃんが心配なのだろう。
俺もスッと立ち上がり伊坂の後ろをついていった。
「なぁ、病院ってどこら辺にあるんだ?」
「…そうね、隣町の最近出来た大きい病院…、と言えば分かってもらえるかしら」
「おいおい、ずいぶんとアバウトだな…んー隣町って…」
「『相馬新生病院』って所。」
相馬新生病院…。ああ、あそこか!
言ったことはないが噂によるとすごく
大きくて綺麗な病院らしい。あそこか…。
「バスが来てるわ、急ぎましょう」
「お、やばいやばい」
小走りで俺と伊坂はバスに乗り込んだ。
やはりこの時間帯は空いてるな。
ふう、とため息をついて席に腰を下ろした。
すると、
「実散…大丈夫かしら…」
「…」
そんな事を伊坂はつぶやいていた。
■数分後
病院前にバス停があり、バスはそこで止まった。
隣町にはあまり行かないので何処なのかはさっぱりだが。
「ここかー、思ってたよりもでかい病院だなー…」
「そうね、朽田君はそのうち迷子になっちゃうからちゃんとついてきてね」
ふう、と伊坂に小さなため息をつかれた。
伊坂…お前俺をそんな風に見てたのか。
すると反対方面から雅希と同い年ぐらいの少年がなにかをパーカーでくるんで
走ってきた。そしてこちらと目があった。
「!」
「…羽也風?どうしたのそんなに走って」
「ああ…寧」
…羽也風?
「羽也風も実散の病院に来たの?」
「…ああ、それで病室にいないっていってたからコイツ探してた。」
「…!」
その羽也風と言う少年はパーカーでくるんでいたのを取り、
くるまれていたのは「猫」だった。
「猫…?」
「…朽田君、これは実散よ。目が黄色いから。…でもどうして猫に戻ったのかしら」
「多分弱ってるからだと思う」
本当に臆病な目をして俺を見上げているような気がした。
何かを恐れて逃げ出してきた…「猫」。
その名前は、「実散」。
「でも戻るまで時間が…」
「そうね…、待つしかないわね」
伊坂と羽也風という少年が話していると、
またもや後ろから、女の人が走ってきた。
「実散っ!!」
【続く】