■第二十八話【猫のきもち】
「…実散?」
ふと雅希が実散を見ると人の姿に戻っていた。
そして、実散ちゃんは涙を流しながらこういった。
「わ、たし…もっとお母さんやお父さんに会いたい…
もっと私を見てもらいたい…できるのかな雅希…」
「…ああ、出来る。お前なら出来るっての…!」
短い黄色の髪。黄色い眼。
その姿はあまりにも綺麗な光景で
つい見とれてしまった。
そして、雅希は立ち上がり、実散ちゃんに
手を差し伸べた。「行こう」と。
そして実散ちゃんは迷いもなく、
涙をふいて、雅希の手をしっかり握った。
「さ、行ってこいよ。実散」
実散ちゃんはこくりと頷いて、歩き始めたが
2、3歩で足を止めた。
そしてくるりと振り返り、俺にこういったのであった。
「お兄ちゃん…有難う」
そういって走り出した。
まっすぐに。
すると雅希がじっとこちらを見ていた。
いや、にらんでいた。俺を。
「…羽乃、お前実散に何したんだ?あそこまで喋んのは久々に見たぞ」
「別に…。ああ、大丈夫とったりはしないからな」
ふっと笑って言ってやった。
雅希は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
【続く】