小説『猫語-ネコガタリ-』
作者:†綾†()

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■第三十一話【セリフ】


「…」
「…」


なんというだろうか。
気まずい。とりあえず声をかけてみないと
わからな…

ガバぁっ!!


「うおわぁっ!」
「うん?あ!朽田羽乃さんではないか!」
「…え?」

誰だかまったくわからない。
でも相手は俺のことを知っている。…ん?

おかしく…ないか。

「いやはや。こんな恥ずかしい姿を見られるとは。はははは」

彼女はゆっくりと這いつくばっていた体を
廊下から離した。
う〜ん…見たことないことはないのだが…

よくわからない。

もうやけだ。名前を聞こうじゃないか。

「な、なあお前、俺のこと知ってるらしいが、俺には認識がないんだ。
 名前を教えてくれないか?」
「む、そうなのか?おかしいなー、悠一さんにはそちらに行くと連絡したのだが…」

彼女は腕を組みなにやら考えていた。

…ん。いや待て、今「悠一さん」って言ったのか?
…ということは、


「…えと、違うなら言ってくれ。…お前は「猫」、なのか?」
「ああ、そうだ」

きっぱり。


即答してくれたこと感謝します。
これで「違う」なんていわれたらただの「変人」
などという噂が出来るに違いない。

「なら、お前も猫って事は、その…「3年に一度の集まり」ってやつに
 出るから、ここに来たのか?」
「そうだ、私は此処には住んでいないのだが、今はこの町に引っ越してきて
 この学校に通っているのだ。最近のことだから認識がないのは
 仕方がないだろう。」
「そうなのか…。というか俺の名前はどこで聞いたんだ?」


これがどうも不思議だ。
集まりがあってここに引っ越してきたはいいが、
どこぞで俺の名前を知る必要があったのだろうか。

まあ大体は予想はつくのだが。

「そりゃあ、寧さんだ」
「やっぱりな…。」

ははは、予想はついていたさ。

「あと、泉や雅希にも聞いたぞ、とても…」
「とても?」





「変わった趣味をお持ちだ。と。」



「変わった趣味?」
「ああ、この「伊坂家」に関わる人間などそういないからな」




まえに聞いたような台詞。


【続く】

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