■第三十三話【樹雨樂】
「伊坂…飛鳥か。うん、よろしくな」
「こちらこ…」
と、言いかけたが、飛鳥のポケットから
ピロロ〜ン♪という音がした。
携帯だった。
飛鳥は急いで携帯に出る。
「もしもし…」
しばらく飛鳥は携帯に対して黙っていた。
よほどいい話ではなかったような顔をしていた。
「それって…、…そうか。…うん、了解した」
何を話していたのかは分からない。
しばらくして飛鳥は携帯を切った。
「…いい話ではなさそうだったな。」
「ははは、おかげさまで。…あの『集まり』の事だ」
「あの『3年に一度の集まり』ってやつか?」
こくりと頷いて、飛鳥は「じゃあそういうことで」
といって、急いで廊下の向こうに消えていった。
と、タイミングよく飛鳥は帰ってきた伊坂とすれ違った。
飛鳥は気付かなかったようだったが。
「遅れてごめんなさい、もしかして今の飛鳥かしら…」
自販機で買ってきたジュースをもって俺にジュースを渡した。
「ああ、そうみたいだな。」
「そういえば私は朽田くんには飛鳥のことを話していなかったわね。」
「…もう遅いぞ伊坂…」
あらそう。といって説明する暇がはぶけたから、
俺と伊坂は再び図書室に戻ってきた。
そして、席についた。
「飛鳥はあんなに急いでどこいくのかしらね」
「俺に聞かないでくれ。」
「さっき仲良く話してたじゃない」
「見てたのかよッッッ!」
「失礼ね、偶然よ。偶然。」
なぜか伊坂にいわれても説得力がない。
うそだと言いたかったがまたきっと
からかわれるに違いない。伊坂なら。
「あー…何かでもあの『集まり』の事、って言ってたな」
「そう」
まるで興味がないように伊坂は
あっさり流した。…どうしてだ?
「その集まりってお前も行くんだよな」
「…ええ、行く。というより行かなきゃいけない。と言う方が正しいわね」
「?」
うかない顔をしている伊坂に俺は問いかけた。
「…どういうことだ?」
「…猫の親族にはね、一番えらい「十二支」でいう「神様」的存在の
猫の一族でも一番えらい存在…「樹雨樂 ジュウラク」という人がいるのよ」
「樹雨樂…?」
「その人に最低「3年に一度」は会いにくること。親族は必ず。…ね」
樹雨樂。
伊坂家でも一番上の神様的存在。
【続く】