■第三十五話【忙しいんです。】
静まり返った図書室に、俺と伊坂は
話をしていた。もちろん放課後なので、
生徒はあまり校舎には残っていないだろう。
「…直人はね、悠一の幼馴染だから、仲がいいのよ。」
「悠一さんと?そうなのか。」
「きっと直人も病院忙しいけど集まりには来るから…、
今度朽田くんの事も話しておいてあげましょうか。」
「いいえ結構です伊坂さん。」
「そう、残念ね。」
ふう、と伊坂はため息をつき、椅子の
背もたれにもたれかけた。
そして俺は引き続き、赤点は逃れたいので、
ノートにテスト勉強らしき文字を書いてゆく。
そして、しばらくして…
『現在6時30分を過ぎました。校舎に残っている生徒は
遅くならないうちに帰りなさい…』
放送が終わったと同時に、最後のチャイムが、
下校を知らせていた。
「…さて、私達も帰りましょうか。朽田くんも
あと覚えるのは、歴史と数学だけなのだし。きっと大丈夫よ。」
「…そうだなぁ。…まぁなんとかなるだろ。」
鞄に教科書などをしまいこみながら、話した。
そして図書室を出て、窓を見るともう外は、
真っ暗な闇に包まれていた。
これはまた遅くなってしまった…。
なんて思いながら、階段を下りた。
「〜♪〜♪」
「…伊坂、携帯なってるぞ?」
「ええ、知っているわ。」
知っているのに…、出なくてもいいのか。
そう言おうと思ったが、声に出さなかった。
けどあまりにもしつこいので、伊坂は
仕方なく携帯を開いて、電話に出た。
「…用は何かしら、悠一」
『いやーなかなかでないからしつこくかけちゃった☆』
「あの、切っていいかしら。」
『いやいや!待って待って待ってー!大事な話なんだ』
しばらく伊坂は話し込み、しばらく時間がかかった。
大事な話ならしいのでずいぶんと時間がかかったようだ。
「…ええ、あさっての日曜日ね、…ええ。じゃあ。」
ぷつりと携帯ときって、パタンと閉じる。
「…ずいぶん話し込んでたみたいだな。」
「ええ、伊坂家は人数が多いし、みんな忙しいから
日にちがあわないのよ。だから、やっと決まったのが
あさっての日曜なのよ。」
「大変だな、そのころ俺は勉強三昧だな。」
そしていつものバス停へ向かう。
鈴をならす彼女の後ろを見て。
【続き】