■第三十六話【真っ暗な夜。】
バス停まで伊坂と横並びで歩いていると、
正門の所に雅希と実散ちゃんが立っていた。
「やほ、羽乃。今帰りなのか?ずいぶん遅いな。」
「ああ、…というか、何でいるんだ?」
「いや、たまたま通りかかったらいたから。」
どうしてうちの学校に雅希と退院した
ばかりの実散ちゃんがこんな所にいるのか
正直分からない。
ちらりと、実散ちゃんを見ると、実散ちゃんは
丁寧にお辞儀をして、俺を見た。
「羽乃お兄ちゃん、この間は…ありがとう。」
「ん、いや、お礼を言われることなんて俺は
してないよ。実散ちゃんの意志が変えたんだよ。」
実散ちゃんは、首を横に振った。
「ううん、その勇気をくれたのは羽乃お兄ちゃんが
くれたから実散は学校にも今いけるよ。本当に
雅希や羽乃お兄ちゃんや、寧ちゃんのおかげだよ」
本当に俺は何もしていないが、そう言ってくれると
素直に嬉しかった。すごく。
実散ちゃんも今は学校に行けているらしいから
心配はいらないだろう。
「…あ、そうそう寧。あさってのこと何か聞いてる?」
「いえ、日にちしか聞いていないわ。どうしてかしら」
「うん?いや別に深い意味はないけど。」
伊坂はそう、と言って会話を終える。
しばらくしてバスが来たので俺と
伊坂は、雅希と実散ちゃんと分かれる。
どうやら二人は自転車通学らしいので。
仲良く帰っていった。
「良かったな、二人とも元気そうで。」
「ええ、よかったわ。」
俺と伊坂はバスの中で真っ暗な
空を眺めていた。
暗い闇に包まれたかのように。
【続く】