小説『猫語-ネコガタリ-』
作者:†綾†()

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■第三十七話【神様】



暗い窓を俺は眺めながら考えていたことを伊坂に
言おうとして振り返る。

「―――――あの、さぁ。伊坂」
「…? 何かしら」

少しうとうとしていた伊坂を気付かずに起こして
しまった。少しタイミングが悪かったな、と思ったが
俺は聞いてみる。


「樹雨樂…って言う人は偉い人、なんだよな」
「…まぁ、猫の中でも一番神様に近い存在だからそうじゃないかしらね」

眠そうな顔をして一生懸命に目をこすって
伊坂は話に答えた。ちりんとなる音がバスに響いて
久々に綺麗だと思った。


「それでまた何でそんな事聞くのかしら」
「う、え?あ…いや、何か気になってさ…」
「…」


その後伊坂はなぜか黙り込んでしまった。
とりあえず話しかけるとなんとか答えてくれた。

そしてゆっくり顔をあげて綺麗な青い目の輝きが
僕をひきつけた。


「…一つ言っておくわ、朽田くん」

「ん?」


ゆっくり人差し指を、僕の目の前へと持ってきた。






「―――――けっして樹雨樂に会いたいなんて思っちゃ駄目よ」




…え?




真剣な伊坂の目が僕の目をひきつける。でも伊坂の
言ってる意味は分かるけど、そこまで会ってはいけないと言う
理由なんてあるのだろうか。



「な、なんでなんだ?」
「……樹雨樂は、人間をすごく嫌ってる。あの人は人を普通に殺してしまうのよ」
「な…んだ、それ」

ふぅ、と伊坂は人差し指をゆっくり下ろした。

「…あのまだ幼い泉でさえ殺されかけた事もあるのよ」
「…!!泉、が?」

樹雨樂は昔から体が弱くて小さいころから友達と
遊びたいって言う普通の子ども自身の心を持って
いたらしいが、「伊坂家」。ただそれだけで一部では

「化け物」、「気持ち悪い」。

そう実散ちゃんのように言われ続けてきた。





「―――――そこで、樹雨樂は「猫」という自分が嫌になって
 自殺…しようとしたこともあったのよ。…悠一や直人とか羽也風が
 何とかして止めたけどね」




そんな神様がこの世にはいた。



【続く】



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