小説『猫語-ネコガタリ-』
作者:†綾†()

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第三話【猫】


「…私、自殺なんてする気はさらさらないけど」
「い…、いやいやいや。今君は、
 思いっきり上から落ちてきたじゃないか」
「…でもとにかく、私は上から落ちてきただけで、
 別に死のうと思って落ちたワケじゃないの」

そう言ってすとんと、地面に
足をつけた。
髪の長い彼女は、再び
俺にくるりと振り返る。

「まあ…あのくらいの高さなら、
 私だとなんとか着地できるから
 貴方の助けがなくとも、きっとこうして生きているわ」

あのくらいの高さ…?彼女の指さす方向の先には、
学校の校舎の屋上だった。

…普通に生きて帰れる高さではない。
はっきり断言できる。

「…でも、一応助けてくれたから
 お礼を言わせてね、有り難う」
「あ、いや…別に。無事だからいいんだけど…」

そう言うと彼女は笑って見せた。
…でも、どうしてあんな所からこの子は落ちてきたんだ…?

どっかから足を滑らせて落ちた…とか?



「…。ねぇ、貴方の名前だけ教えてもらってもいいかしら」

「え?あぁ、いいけど。俺の名前は、朽田羽乃。…お前は?」
「私は、伊坂寧。よろしく」

彼女は手を差し出す。
手首には鈴のブレスが巻かれていた。

「…コレ、何だ?」
「ああ、この…鈴の事?」

コレ…もしかしてさっき聞いた
鈴の音ってコレだったのか?


「…ねえ、朽田君。いきなりこんな事
 言う方もどうかと思うけど、…聞いてもいいかしら」

「…ああ」






「もし、私が『人間』じゃないと言ったら…朽田君ならどうする?」




【続く】

-4-
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