小説『猫語-ネコガタリ-』
作者:†綾†()

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■第三十九話【殺人猫】



ゆっくりと樹雨樂の手が泉の首へとたどり着こうとしていた。
泉は身動きも出来ず、ただ一粒の涙を流していた。

「…両親のところへ行きたければ私がいつでも貴方の願いを
 叶えましょう。…静かに、優しく、貴方の息の根を止めて
 差し上げましょう。」

すると、その手を直人が引きとめた。



「…樹雨樂」
「…なんですか、直人」


引きとめられた手を強引には樹雨樂は振り払わなかった。
ただ、自分の手をつかまれている直人を見つめた。

金色の瞳が、綺麗に光る。

そしてその後ろから、悠一と羽也風も樹雨樂を止めていた。

「泉はまだ生きる権利がある。…それにまだ幼い。これは誰も
 悪くないんだ、樹雨樂」
「…その手、泉から離してあげな。…手を血で染めようとするな」

「…」


すると、黙って樹雨樂は泉から手を離した。泉は力が抜けたように
ペタンと、座り込んだ。それから樹雨樂は大きな広間を出て、自分の
部屋に静かに戻った。


「…ありがとう、助かったわ」
「まぁ…あれはしょうがない、か。さすがの樹雨樂も…」


寧と飛鳥は大きなため息をついて、悠一と羽也風と直人にお礼を
言った。私達だけではきっとどうしようも出来なかったから。…きっと。
すると泉はさっきから上手く言葉が出せないみたいで、黙っていた。



「…泉くん?もう大丈夫だから、ね?」
「あ……、ぅ…」

悠一が優しく声をかけてみたがやっぱり樹雨樂の恐怖はしばらくは
消えなかった。前の「集まり」は樹雨樂が部屋に帰ったきり出てこ
なかったので、これにて「集まり」は終わった。




それから3年、





また今年もその「集まり」に参加する。














猫、という名の人間達が
今宵はどんな行動をとる
のかはまたのお楽しみ…




【続く】

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