小説『猫語-ネコガタリ-』
作者:†綾†()

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■第四十話【猫かくれんぼ】



「…とまあ、こんなところかしら」

ふう、とまるで集まりに参加を拒否したいようなため息を
伊坂は深くついた。集まりの日にちが決まってからよく、
伊坂はため息をつくようになったような気がする。

「樹雨樂…、ねぇ…」

話を聞き終わってから、俺は背もたれにもたれかかる。



「人間に恨みをもつ…、猫、か」


そうつぶやいた。すると伊坂は再び口をゆっくり開いた。
暗く、包み込まれそうな闇に瞳を向けて、

「さて…泉が心配で気がもたいないわ」
「泉は、自分が悪いと思ってるのか?」
「そうみたいね、殺されかけた理由が今でもはっきり覚えてるらしくて。」

あんな小さかったのに記憶がちゃんとあるって、相当
記憶に残るような恐怖があったのか…。




「謝りたい…って言ってるのよ」





「でも心配なんだーってことね。」
「そうなるのかしらね」
「そうでしょうね、きっと」


そういっているうちに、バスは伊坂が降りるバス停についた。
すると、伊坂は降りる準備をして、席を立った。


「じゃあ、また、月曜日ね。結果は…また後ほど」
「ああ、泉にしっかりって言っといてくれな。」

分かったわ、といって伊坂は静かに下りて、暗闇に消えていった。
何か俺も心配になってきたぞ…。ま、他人の心配よりテスト、か。
赤点は逃れたいのでね。



そしてバスは再び動き出した。







月が綺麗な夜、一人の猫が目を光らせて、
悠一、泉、雅希、実散の住んでいる家に
一人の少女が現れた。







「ピンポーン」




「もーう、こんな夜にだれだろうねー??泉くん、ちょっと
 おねがーいできるかなー」
「うん、僕でるねー!はいはーいどーなーたでーすーかー」


がらりとあけると、髪を二つに結んで大きなリュックを背負った
ツインテールの少女がそこに立っていた。



「…家に入れてください、寒いです」
「え、あ!迷流ちゃん!久しぶりー!!」
「3年ぶりです、迷流、帰ってきました」





猫がもう一匹隠れていた。



【続く】





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