第八話【証された真実】
「…その正体は今日、貴方は会ってるはずだけど」
「…今日…?俺が?」
すると彼女はくすりと笑う。
…でもその笑顔はどこか寂しそうにもみえた。
そして伊坂は自分の手首についている鈴を、
俺に見せる。
「この、鈴。貴方が今日見た猫についてたでしょう」
「…あぁ、ついてた…、ってまさかお前…!」
彼女はまたくすりと笑い、
言葉を続けた。
「そう、あの時の猫は…私」
その言葉を聞いた瞬間、言葉を失ってしまった。
声をかけることさえ、出来なかった。
「っ…」
「…びっくり、した?私は人間でもあるし、猫でもある…なんて。」
「…でも伊坂、それには何か理由があるんだろ」
「…ないことはない…でも今貴方にソレを話すときではないの」
するとキキッとバスが赤信号で止まった。
ソレと同時に時間が止まったような気がした。
「…もう身体がこうなったときから、私は「化け物」だと言われてきた」
「伊坂が…化け…物?」
「…そう、そして何度も何度も引っ越しを繰り返してきたの。それでもやっぱり
私は所詮「化け物」扱いだった。」
伊坂は…化け物呼ばわりで、引っ越しも何度も繰り返して…
虐められてもきたんだろう。
なら俺もその伊坂を避けるのか?虐めるのか?
逃げるのか?…俺は、
すると伊坂は、小さなため息をついて
「…やっぱり、朽田君もこの話を聞いたら
明日から私を避けるのかしら。「化け物だ」って。」
…伊坂はもう諦めている。どうせ誰も信じて私と接してくれないと。
諦めきっている。だけど俺は
「俺は、伊坂の力になりたい。…全力で」
再び時計が動き始めた。
【続く】